国民年金は免除・猶予が可能!?条件の所得額やデメリットなども解説

公的年金制度の「国民年金」は、日本国内に住所を置く20歳以上60歳未満のすべての方が加入し、毎月定められた保険料を支払う必要があります。しかし給与が少なかったり、失業したりした際には手続きを経て免除・猶予申請が可能です。本記事では、免除・猶予の種類や条件、将来の基礎年金額にどのような影響があるかについて解説します。

国民年金は免除・猶予が可能!?条件の所得額やデメリットなども解説

国民年金が免除される条件と免除割合

国民年金が免除される条件と免除割合

国民年金の保険料は月額16,610円(令和3年度)です。会社員など厚生年金とともに給与から天引きされている場合を除き、毎月納付書や口座振替で支払う必要があります。ただ経済的に困窮している場合など一定の条件を満たせば、支払いが免除、または減額されます。ここでは免除される条件について説明します。

【参照】日本年金機構:「国民年金保険料」 詳しくはこちら

年収によって4分の1から全額免除まで免除額が異なる

収入がない、または給与が一定の基準以下である場合は、その額に応じて保険料が4分の1から半額、4分の3、全額と減額されます。また、20歳から50歳未満で本人と配偶者の所得が一定の額を満たしていない場合は、納付が猶予されることもあります。

表1:保険料免除・納付猶予の所得基準

免除・猶予種別 免除の条件となる前年の所得
(以下の計算式で算出される金額の範囲内であること)
全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
4分の3免除 88万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は78万円
半額免除 128万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は118万円
4分の1免除 168万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は158万円
納付猶予 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円

※地方税法に定める障害者および寡婦またはひとり親の場合は基準額が異なる場合があります。
【参考】「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構公式サイト)」 詳しくは
こちら

その他の免除制度

年収以外にも、状況に応じて保険料を免除できる制度があります。ご自身に該当するものがないか確認してみてください。

学生の場合

学生であっても20歳となれば、国民年金の被保険者です。本来保険料の支払いが発生しますが、「学生納付特例制度」によって納付を猶予できます。学生納付特例制度が適用される年収基準は「128万円(令和2年度以前は118万円)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」と定められています。
なお、このルールで国民年金の免除となる条件の対象はあくまで学生本人の年収であり、両親や家族の年収は関係ありません。

【参照】日本年金機構:「国民年金保険料の学生納付特例制度」 詳しくはこちら

失業している場合

申請者か世帯主・配偶者が職を失った場合も、申請することで保険料の納付が免除されます。免除期間は、失業した月の前月から翌々年の6月までです。仕組みとしては、退職した前年所得を0としてみるため、全額免除が適用されることとなるのです。

【参照】日本年金機構:「4.失業等による特例免除」 詳しくはこちら

配偶者からDVを受け別に住まいを置く場合

配偶者からDVを受けたことが原因で、別に住まいを置く場合は保険料が全額あるいは一部免除となります。具体的な年収の基準は、表1「保険料免除・納付猶予の所得基準」で示した内容と同じです。被害者本人の年収のみが判断対象で、配偶者の年収は加味されません。

【参照】日本年金機構:「配偶者からの暴力を受けた方の国民年金保険料の特例免除について」 詳しくはこちら

産前産後の場合

2019年4月から、第1号被保険者(自営業や学生など)を対象に出産予定日、あるいは出産日が属する月の前月から4ヵ月間における保険料の支払いを免除する制度が始まりました。多胎妊娠の場合では、出産予定日もしくは出産日が含まれる月の3ヵ月前から6ヵ月間が免除期間となります。この制度では、支払いが免除されても、将来の年金額は全額納付したのと同様に反映されます。

【参照】日本年金機構:「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」 詳しくはこちら

国民年金が猶予される条件

免除制度のほか、納付猶予制度も設けられています。前述の「学生納付特例制度」なども猶予制度の1つです。猶予に該当する条件は、20歳から50歳未満であることと、本人もしくは配偶者の前年所得(1月から6月に申し込む際は前々年の所得)が一定以下であることです。具体的な基準は表1「保険料免除・納付猶予の所得基準」で示しています。

【参照】日本年金機構:「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 詳しくはこちら

免除・猶予のメリット・デメリット

免除・猶予のメリット・デメリット

免除や猶予制度は保険料の支払いが厳しい時に役立ちますが、それぞれメリット・デメリットがあります。将来の老齢基礎年金の年金額にも関わる点であるため、正しく理解しておいた方がよいでしょう。

メリット

通常65歳から支給される老齢基礎年金は、国民年金の受給資格期間が10年以上である場合に受け取れます。手続きせずに未納だった間は受給資格期間に含まれません。メリットとして、免除・猶予制度を利用すれば、その時期は受給資格期間に追加されることが挙げられます。

また、免除・猶予されている期間であっても怪我や病気による障害や死亡した場合、通常支払っているのと同じように障害年金・遺族年金が給付されます。未納期間があるとこれらの年金受給条件を満たさない可能性があるのです。このようなもしもへの備えができる利点があります。

デメリット

免除・猶予制度を利用している期間であっても、受給資格期間にカウントされます。しかし将来的には、保険料を満額支払った場合と比較して、年金受給額が減額されることがデメリットです。

免除・猶予の手続き方法

免除・猶予の手続き方法

住民登録している市区町村の役場にある国民年金担当窓口に、必要書類を提出し申請します。申請用紙は窓口で受け取れますが、年金手帳と、失業の場合は雇用保険受給資格者証または雇用保険被保険者離職票等の写しが必要です。基本的には1年ごとに申請が必要であるため、申請忘れによる未納期間が発生しないように注意してください。

【参照】日本年金機構:「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 詳しくはこちら

免除・猶予を受けた場合の年金額

老齢基礎年金は、満額で年間780,900円(令和3年)受け取れます。一方で免除を受けたり、猶予を受けたが追納しなかったりした場合、その間は年金額が減額となります。減額となる割合は下記のとおりです。

表2:免除・猶予期間の年金額

免除・猶予種別 該当期間に反映される年金額の割合
全額免除 全額納付の1/2
4分の3免除 全額納付の5/8
半額免除 全額納付の6/8
4分の1免除 全額納付の7/8
納付猶予 追納しない場合、年金額への反映はなし

※すべて平成21年4月以降

【参照】「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構公式サイト)」 詳しくは
こちら
【参照】日本年金機構:「令和3年4月分からの年金額等について」 詳しくはこちら

全額受け取るには追納も検討

免除・猶予制度を利用した場合、それらが承認された月から10年以内は追納が可能です。国民年金保険料を追納すると、将来受け取る老齢基礎年金額を増やせます。また所得税・住民税の控除にもなるため、現在にも将来にも役立つのです。

【参照】日本年金機構:「国民年金保険料の追納制度」 詳しくはこちら

まとめ

まとめ

国民年金では、失業や出産など、ライフイベントに応じて免除・猶予を受けられる制度が整っています。減額分は将来の老齢基礎年金額に反映されますが、後に追納し受給額を増やすことも可能です。免除・猶予制度の仕組みを理解した上で、ご自身の状況に合わせて制度を利用してください。

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