ドル建て保険とは?円建てと比較したメリット・デメリット・注意点を解説

いざという時に備えて加入しておきたい保険ですが、現在貯蓄性の高い運用方法としてドル建て保険が注目を集めています。そこで本記事では「ドル建て保険とはなにか?」「メリットやデメリットは?」等、ドル建て保険についての疑問にお答えします。

ドル建て保険とは?円建てと比較したメリット・デメリット・注意点を解説

ドル建て保険とは?

ドル建て保険とは?

ドル建て保険とは外貨建て保険の一種で、保険料の支払いや保険金等の受け取りを主に「米ドル」でやりとりする保険商品です。日本が超低金利政策を取り続けている現在、ドル建て保険は貯蓄性が高い保険として資産運用に活用する人が増えています。しかし、円建て保険との違いやデメリットもあるので、外貨建て保険の契約内容を理解する必要があります。

ドル建て保険の仕組み

ドル建て保険も通常の保険(円建て保険)のように、保険料を払って死亡保障や年金の準備を行うという点に変わりありません。ただ、保険料の支払いや保険金や解約返戻金の受け取りはドルで行われるため、支払う時には円をドルに、受け取る時にはドルを円に交換する必要があります。そのため、為替相場の影響も受けるという特徴があります。

ドルの相場で支払い・受け取り金額が変わる

例えば、月々100ドルの保険料のドル建て保険に加入した場合、為替相場で「1ドル100円」の時には、円換算で月々1万円支払っていくことになるでしょう。しかし、「1ドル90円」になった場合は9,000円、「1ドル110円」になった場合は1万1,000円というように、為替相場の変動に応じて月々の支払額も変わってくるのです。

これは保険金を受け取る時にも同様のことがいえます。例えば、10万ドルの満期保険金を受け取る保険プランに加入していた場合、円相場の変動に応じて、日本円換算した時に受け取り額が900万円になったり、1,100万円になったりと揺れ幅が生じるのです。

この性質上、ドル建て保険には「元本保証がない」という大きな特徴があります。当初想定していたよりも、受け取る保険金が少なくなることもあれば、多くなることもあり得ます。そのため、資産運用として考えた場合は、リスクが生じます。

ドル建て保険の種類

ドル建て保険の種類には、主に「終身保険」「個人年金保険」「養老保険」があります。

「終身保険」とは、一生涯死亡保障が続く生命保険のことです。終身保険を解約した場合、保険料払込期間に応じて解約返戻金を受け取れます。終身保険は保険料が高い分、貯蓄性があるという点が特徴です。

「個人年金保険」とは、契約時に決めた期間保険料を支払い、満期時に一定額の年金を一定期間受け取る貯蓄型の保険です。
保険期間中に被保険者が死亡した場合、払込保険料相当額が死亡給付金として支払われ、満期まで被保険者が生存していた場合、年金形式で満期保険金を受け取ることができます。

「養老保険」とは、万が一の死亡時に死亡保険金が、満期時には満期保険金が受け取れる保険です。養老保険は死亡リスクだけではなく、満期時に満期金を受け取れるため死亡保障と生存保障を兼ね備えた貯蓄性のある保険です。

その他、高度障害状態や介護保障に備えた特約のあるものもあります。

ドル建て保険の場合、どの種類の保険でも保険金を受け取る際は、外貨もしくは円で受け取ることになります。受け取る際に円かドルか受け取る通貨を選べますが、円で受け取る場合、その時点での為替相場の変動により金額が増減します。

ドル建て保険のメリット

ドル建て保険のメリット

ドル建て保険はリスクのある商品である一方、メリットもあります。以下では、ドル建て保険の主なメリットについて解説していきます。

ドル建て保険は予定利率が高く保険料が安く済む

ドル建て保険をはじめとする外貨建て保険が現在注目を集めている背景には、長年続く日本の超低金利政策があります。保険の予定利率を決める指標として使われる長期国債が、日本の利回りよりもアメリカや海外の利回りが高いという点は、ドル建て保険のメリットでしょう。

予定利率とは、保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する時に約束する利率のことで、保険会社が保険契約時に決めています。どのくらいの利回りで運用できるのかを予測して保険料を設定するため、大きな運用収益を見込める場合は予定利率が高く設定され、保険料は安くなります。

超低金利な日本では、円建てで銀行や保険会社にお金を預けても、利回りで貯蓄をふやすのは難しいのが現状です。それに比べて市場金利の高いアメリカをターゲットにしてドル建て保険を活用すれば、運用利回り(予定利率)が高いため、円建ての保険や銀行に預けるよりふやせる可能性や少ない保険料でより大きな保険金額が見込めるのです。

為替市場の状況次第で利益が見込める

ドル建て保険は、為替市場の影響を大きく受けます。それゆえ、円高の時に円からドルに替えて保険料を支払い、円安の時にドルから円に移し替えて保険金や解約返戻金を受け取れば、その分だけ利益を得ることが期待できます。円建て保険より利回りが高いうえに、為替差益の恩恵を受けられます。

資産のリスクを分散することができる

ドル建て保険を契約すると円以外の外貨をもつことになります。保有資産を分散させることができるので、日本円の価値が下がった時でも資産全体の目減りを抑えることができます。
老後資金のために、リスク分散しながら資産形成の手段とすることもできます。

ドル建て保険のデメリット

ドル建て保険のデメリット

ドル建て保険には、以下のようなデメリットもあります。

為替市場の状況次第で不利益を受ける可能性がある

ドル建て保険の大きなデメリットは、為替市場の状況次第で、支払うべき保険料が日本円換算で高くなる場合があることです。また、支払われる保険金や解約返戻金も、同様に低くなることもありえます。基本的には、円安の時に保険料を支払い、円高の時に保険金額を受け取ると損をします。「為替相場次第」というこの性質は、メリット・デメリット表裏一体のものといえます。

円とドルを両替する時に為替手数料が必要

ドル建て保険の運用の際には、ドルと円の両替時に為替手数料がかかります。一般的にこの為替手数料は、保険料の支払時にも、保険金や解約返戻金の受け取りの時にも契約者が負担するものです。為替手数料は1ドルごとに一定額がかかるので、両替額が高くなればなるほど手数料も高くなってしまいます。

解約時に相場の金利情勢で調整される

正式には市場価格調整といって、保険を途中で解約する時に戻ってくる解約返戻金が市場金利によって増減するというものです。契約時よりも解約時の市場金利が高くなった場合には、解約返戻金は減少し、市場金利が低くなった場合は解約返戻金が増加します。
ですので、契約時には途中で解約をした時の金額は決まっていない点に注意が必要です。

ドル建て保険に向いている人・向いていない人

ドル建て保険に向いている人・向いていない人

ここまでご説明したことを受けて、ドル建て保険の運用に向いている人・向いていない人とはどのような条件が挙げられるか解説します。

ドル建て保険に向いている人とは

ドル建て保険に向いている人の条件としては、以下のような項目が考えられます。

・多少のリスクを覚悟のうえで保障を準備したい人
・リスクを許容できるだけの資産がある人
・ドル資産のまま保有・活用できる人
・米ドルで使う予定のある人
・インフレリスクに備えたい人

外貨建て保険は、保険料や保険金、解約返戻金が為替相場によって変動するので、保険料を支払っている時には保険料の増減を受け入れる必要があります。
また、死亡保険を受け取った場合に円高となっていてしまっても、ドルのままで保有し円安になったタイミングで円に換えることが出来る等、手持ちの資産に余裕がある人等は向いているでしょう。子供の留学費用、海外旅行等、米国ドルを使う予定がある方にもおすすめです。
日本円は超低金利となっているため、物価上昇の影響でお金の価値が下がりつつあります。少しでも日本円より金利の高い外貨建て保険に資産を移すことで、資産価値が目減りせずインフレリスクに備えることができます。

ドル建て保険に向いていない人とは

ドル建て保険に向いていない人の特徴としては、次のようなものが考えられます。

・契約どおりの保険金額を受け取りたい人
・保険料の支払いが変動するのが困る人
・資産運用のみの目的でドル建て保険を考えている人

ドル建て保険は、円建て保険に比べると安定性に不安があります。それゆえ、できるだけ安全かつ安定的に資産管理をしたい人、損失を呑み込めるだけの経済的なゆとりがない人は、ドル建て保険の運用には慎重になった方がいいでしょう。

ドル建て保険に加入する時の注意点

ドル建て保険に加入する時の注意点

保険加入の前に、自分がどのような目的で保険に加入するのか、どのように運用したいのか目的を明確にすることが大切です。
保険の種類によって運用の仕組みや特性等が異なるうえに、ドル建て保険は預貯金とは異なり為替変動リスクが伴います。円で換算した際に元本割れする可能性も十分にあります。

ほかにも、支払う保険料に対して受け取れる金額が見合っているか、最低保証の積立利率はどのくらいか、為替手数料等は他社より高くなっていないか等、実際に金融機関に確認しましょう。FP(ファイナンシャル・プランナー)のような資産運用のプロに相談してアドバイスをもらうと安心でしょう。利用する前に、諸費用や毎月の支払いや将来の家計も踏まえて試算をしておきましょう。

資産運用の1つとされるドル建て保険ですが、保険としての役割を持っています。運用面にのみ偏ってしまわないよう、適切な保障内容も考えて検討しましょう。

まとめ

ドル建て保険とは、保険料の支払いや保険金等の受け取りを主に「米ドル」でやりとりする保険商品です。ドル建て保険の基本概要とそのメリット・デメリット等についてご紹介しました。円建て保険より予定利率がよいことで、運用を考えられる人もいますが、トラブルも起こっているので、外貨建て保険の内容を把握したうえで加入を考えましょう。

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