【FP解説】意外と知らない定年後・老後にも必要な保険とは?

老後の保険について、どのように備えておけばよいのでしょうか。過去に加入している保険はそのままでよいのか、新たに加入し直したほうがよい保険はあるのかなど、疑問や不安を持つ人は多いと思います。老後のための保険を見直すポイントを見ていきましょう。

【FP解説】意外と知らない定年後・老後にも必要な保険とは?

老後の「保険」は見直すべし!

老後の「保険」は見直すべし!

現在加入中の生命保険や医療保険は、定年前後のタイミングで、そのままでよいかどうかを必ず見直しましょう。保険は、ライフステージに合った保障額や保障内容にする必要があるからです。

例えば、生命保険は家計を担う人に万一のことがあったとき、残された家族への生活保障を用意するためのものです。子どもが社会人になり、独立していれば家計の支出は減るので、保障額(保険金額)も減額できるはずです。

医療保険は、随分前に加入したものだと、平均寿命の伸びや最近の医療事情にマッチしなくなっている可能性があります。いまの実情に合った保障に見直すことも大切です。また、老後だからこそ必要な保障もあります。

では、「生命保険」「医療保険」「介護保険」に分けて、老後の保障をどのように見直したらよいのか、ポイントを見ていきましょう。

どの保険を見直すべき? 保険別に徹底解説

生命保険の見直しポイント

生命保険には、一定期間のみ保障が続く「定期保険」や、一生涯保障が続く「終身保険」などがあります。一例として、かつて主流だった「定期保険特約付終身保険」に加入している人の見直しポイントをご紹介します。

■定期保険特約付終身保険の見直しイメージ

定期保険特約付終身保険の見直しイメージ

◎家計の支出が減っていれば生命保険の保障額は減額する
まず見直すのは、定期保険の保障額です。定期保険は、一定期間に手厚い保障を用意するために入るもの。前述の通り、子どもが独立していれば一般的には多額の死亡保障は不要になる場合が多いので、保障額の減額を検討してもよいでしょう。残す保障額は下図のように、残された家族の「生活費や住居費」などの支出から、「遺族年金や労働収入、貯蓄」などの収入を引いて算出します。

■必要保障額の算出方法

必要保障額の算出方法

◎終身保険は葬儀費用などの整理資金として残す
終身保険については、そのまま続ければ保険金を葬儀費用などの整理資金として利用できます。また、保険料は掛け捨てにならないので、解約して、解約返戻金を老後の生活資金として活用することもできます。

◎相続対策としての保険活用も選択肢に
終身保険は、相続が起きたときの「遺産分割」「納税資金」対策としても有効です。保険金は相続人固有の財産になるため、お金を残したい人を保険金受取人として契約すれば、現金で渡すよりもトラブルの防止になります。相続財産が多く、相続税の納税が必要な場合でも、保険金を納税資金として活用できます。

医療保険の見直しポイント

医療保険については、次のような観点から保障内容をチェックし、不足があれば見直しを検討しましょう。

◎保障は一生涯続くのか
平均寿命は2018年時点で、男性が約81歳、女性は約87歳となっています。老後の健康リスクに備えるなら、保障が一生涯続く終身タイプが安心です。定期保険特約付終身保険に、オプション(特約)で医療保障をつけている人は、ほとんどの場合80歳で保障が終わりますので、なるべく終身保障のものに見直しを検討しましょう。

【参考】厚生労働省「平成30年簡易生命表」詳しくはこちら

◎短期入院にも対応しているか
かつての医療保険は、入院4日目までは保障されず、入院5日目から保障が始まるものがありました。最近では、ほとんどの医療保険は入院1日目から保障されます。また、入院日数に関係なく、入院すると一時金(10〜20万円など)を受け取れるものもあります。一時金は入院時に給付金が確定し、使い途が自由なので、治療費以外の費用にも活用できます。

◎がん治療への備えもあれば安心
日本人の死因トップは「がん」です()。がんの治療も多様化して、中には健康保険対象外の治療法もあります。「経済的な理由で治療をあきらめたくない」という人は、がん保険や医療保険の特約で保障の追加を考えてみましょう。がんの診断確定時や治療の種類に応じて、10〜300万円程度の一時金が出るものが多く、治療費に当てることはもちろん、治療費以外の生活費などの備えにもなります。

※ 厚生労働省「平成30年 人口動態統計」 詳しくはこちら

なお、医療保険などは持病や入院治療歴などがあると、加入できないこともあります。最近では、持病のある人でも加入しやすい医療保険もありますが、ほとんどの場合、一定期間は保障が減額されて保険料も割高です。

通常の医療保険に加入するのが難しければ、公的医療保険をベースに、老後生活費用とは別に医療費分を貯蓄で準備することも検討しましょう。

介護保険の見直しポイント

老後に介護状態になった場合、まず利用できるのが公的介護保険です。介護認定を受けると、65歳以上の人は所得によって1〜3割負担で介護サービスを利用できます。

ただし、介護サービスの上限額を超えた分や、介護施設での食費や居住費などは全額自己負担になります。また、64歳までは末期がんなど16種類の病気が原因で要介護状態になった場合のみにサービスが利用できる、という点には注意が必要です。

こうした公的介護保険の自己負担費用などをカバーするのが、民間の介護保険です。

所定の要介護状態(※)になった場合にまとまった給付のある「介護一時金」タイプ、介護状態が続く限り給付が受けられる「介護年金」タイプなどがあります。また、最近では、医療保険に介護保障を特約でつけられる場合もあります。

民間の介護保険の保障があれば、介護サービスの自己負担分はもちろん、64歳までの介護リスクに備えることができますし、家族が介護で仕事を休んだときの収入補填などとしても活用できるでしょう。

「老後の年金や資産が少ない」「介護する家族がいないので施設に入りたい」などというケースでは、民間の介護保険を検討してもよいでしょう。一方で、「介護費用は貯蓄でカバーできる」「身近に介護の世話をしてくれる人がいる」などのケースでは、必ずしも必要とはいえません。

※ 保険会社により、公的介護保険に連動するもの、独自の基準を設けているものがあります。

まとめ

まとめ

老後の保険は、家族への保障は最小限に、自分への保障を手厚くして長生きに備えましょう。ただし、すべてを保険で備える必要はありません。公的保障でカバーできる部分もありますし、貯蓄が十分に準備できていれば保険に頼らないという考え方もあります。老後は、公的年金が生活のベースになります。無駄な保障があれば見直して家計を安定させ、本当に必要な保障で老後のリスクに備えることが大切です。

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