すべき?しないべき?お金から見る熟年離婚のメリット・デメリット

近年、増加傾向にある熟年離婚。一方で、熟年離婚を考えているものの、経済的な不安からなかなか踏み切れない人もいるかもしれません。今回は熟年離婚をした場合、お金の面ではどんなメリット・デメリットがあるのか、そして経済的な不安なく熟年離婚をするためのヒントをご紹介します。

すべき?しないべき?お金から見る熟年離婚のメリット・デメリット

増加する熟年離婚

増加する熟年離婚

厚生労働省が毎年行っている「人口動態調査」によると、離婚の件数自体は2002年以降、減少傾向にありますが、同居期間が25年以上の夫婦の離婚のみは増加傾向にあり、2018年には「同居期間が25年以上30年未満」の夫婦の離婚が1万249組(前年比120組増)、「30年以上35年未満」が4,958組(前年比72組増)、「35年以上」では6,134組(前年比190組増)に。熟年世代に入ってから長い結婚生活にピリオドを打ち、別々の道を歩み始める夫婦が増えていることが見て取れます。

熟年離婚が増えている背景としては、経済的に自立した仕事を持つ女性が増えていること、年金制度が変わり、婚姻期間中の夫の年金の一部を妻が受け取れるようになったことなどが指摘されています。

【参考】厚生労働省「人口動態統計月報年計(2018年)の概況」(P17)詳しくはこちら

熟年離婚のきっかけは?

熟年離婚のきっかけは?

では、熟年夫婦が離婚に踏み出すきっかけは何なのでしょうか?もちろん、夫婦によって事情が異なるので一概には言えませんが、熟年離婚のきっかけとしてよく挙げられるのが、以下の3つのタイミングです。いずれの場合も、どちらか一方が密かに離婚を考えて準備を進めており、タイミングを見計らって突然離婚を切り出す……、ということも珍しくないようです。

1.子供の自立

夫婦仲が悪くても、「子供のために」と離婚を踏みとどまっていた夫婦が、子供の就職や結婚を機に熟年離婚するケースは少なくありません。

2.配偶者の定年退職

配偶者の定年退職も熟年離婚のきっかけになりやすいといわれています。現役時代は仕事で家を留守にすることの多かった配偶者が1日中自宅にいることによるストレスに耐え切れず、離婚を切り出すというケースがあります。

3.経済的自立

経済的に配偶者に依存しているために離婚できず我慢していた人が、就職したり遺産を相続したりするなどして経済的に自立でき、離婚後の生活の見通しが立ったタイミングで離婚に踏み切ることも多いようです。

とはいえ、熟年離婚は決して簡単なことではなく、特に経済的にはさまざまなメリットとデメリットがあります。「なんとかなるだろう」と軽く考えて熟年離婚をしてしまうと、離婚後、経済的に行き詰まってしまう可能性は大いに考えられます。熟年離婚の経済的なメリットとデメリットの両方を十分に理解した上で冷静な判断をすることが大切です。

熟年離婚の経済的メリット

熟年離婚の経済的メリット

まずは熟年離婚の経済的なメリットについて見ていきましょう。熟年離婚をすると、以下のような経済的なメリットを享受できる可能性があります。

1.相続した遺産や独身時代の財産を分与しなくて済む

離婚の際には、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を分割する「財産分与」が行われます。民法第768条でも「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められており、原則として相手から財産の分与を求められた際には、財産分与に応じなくてはなりません。

しかし、この場合の「財産」はあくまでも婚姻期間中に夫婦で築いたと認められる財産であり、民法第762条第1項で定める「婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産」、つまり独身時代に得た財産や自分の名義で得た財産は分与の対象となりません。これを「特有財産」といい、具体的には以下のようなものが該当します。

・独身時代に取得した現金や預貯金
・独身時代に取得した不動産や株式などの財産
・婚姻後に自己名義で相続した財産
・配偶者からの贈り物


婚姻関係を保ったまま死亡すると、これらの特有財産も原則として配偶者に相続されることになりますが、離婚することによってそれを防ぐことができます。熟年離婚と呼ばれるような年齢であれば、それぞれの両親などから不動産などの財産を相続するケースも珍しくありません。そういった大切な財産を配偶者に相続させたくないという理由で離婚を選ぶ人もいるようです。

2.相手の借金の返済義務を免れる

夫婦のどちらか一方に借金がある場合、離婚をすれば、原則として元配偶者が債権者に対して返済責任を負うことはありません。借金返済に追われる生活を老後も続けることへの不安から、熟年離婚に踏み切る人も少なくないようです。
ただし、住宅や車のローン、子供の学費など夫婦の共同生活のための負債は、夫婦で連帯してその責任を負わねばならないという規定があるため(民法第761条)、離婚する場合は財産から負債を差し引き、残りを2人で分割することになります。もし負債が財産を上回る場合は、財産の分割請求はできず、負債分は契約者が返済していくことになります。

3.年金の受取額が増える可能性がある

離婚後に「年金分割制度」を利用すると、婚姻期間中の配偶者の厚生年金保険料の支払い実績の一部を、自分の年金の支払い実績に移すことができ、結果として年金の受取額を増やすことができます。ただし、年金分割制度を利用するにはさまざまな要件を満たす必要があり、必ずしも年金の分割を受けられるわけではないことに注意が必要です。

※年金分割制度について詳しくはこちらの記事をご覧ください

熟年離婚の経済的デメリット

熟年離婚の経済的デメリット

続いて、熟年離婚のデメリットについて見ていきましょう。熟年離婚は、一般的に経済的なデメリットが多いといわれています。現実から目をそらさず、自分が熟年離婚によってこれらのデメリットを被るリスクないかどうか、冷静に見極めるようにしてください。

1.再就職が難しい場合がある

熟年世代になると、特に資格や実績がない限り、若年世代に比べて条件の良い仕事に就ける可能性は低いのが現実です。特に長年専業主婦(夫)をしていて実務経験に乏しい熟年世代は、正規雇用での就職が難しく、思うような収入が得られない可能性は低くないでしょう。

2.年金の受取額が減る可能性がある

上述したとおり、離婚後に「年金分割制度」を利用すると、婚姻期間中の厚生年金保険料の支払い実績の一部が、夫婦のうち実績の多い側から少ない側に移されます。つまり、支払い実績が少ない方は年金分割制度を利用することによって年金の受給額を増やすことができますが、多い方は受給額が減ってしまうおそれがあるということです。

3.原則として元配偶者の遺産を相続できない

熟年離婚をして籍を抜いてしまうと、元配偶者が死亡しても原則として遺産を相続できなくなります。元配偶者との間に子供がいる場合は子供が元配偶者の遺産を相続することになりますが、元配偶者が再婚をした場合は、再婚相手も相続権を得ることになり、子供が受け取る分が減ってしまいます。

経済的な不安なく熟年離婚をするには?

経済的な不安なく熟年離婚をするには?

ここまで見てきたとおり、経済的な観点から見ると熟年離婚にはメリットだけでなくデメリットもあり、特に経済的に自立できない状態で離婚をしてしまうと、離婚前と同じ生活レベルを保つのはおろか、生計を維持すること自体、難しくなってしまいます。熟年離婚を考えるなら、まずは以下のポイントを確認し、離婚後の経済基盤の準備を始めることが大切です。

1.財産分与でどのくらいの財産が受け取れるか

財産分与は2分の1ずつという考え方が普及していますが、実は分与の割合は法律で定められているわけではありません。協議すればより多くの財産分与を受けることができる可能性もあります。

2.慰謝料の有無

どちらか一方の浮気や暴力などが原因で離婚する場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。どのぐらいの額を請求するのが妥当か弁護士などに相談してみましょう。

3.収入はどのくらい望めるか

離婚後、仕事や年金でどのくらいの収入が望めるのか、それで生活費がまかなえるのかどうかを確認しましょう。

4.家族や友人のサポートは受けられるか

離婚後に子供や兄弟、友人と一緒に生活したり、万が一のときにサポートを受けたりできるかどうかを確認しておきましょう。

5.借金の有無

住宅や車のローン、教育費などの負債がどのくらいあるのか計算しましょう。負債が財産を上回る場合、財産分与の請求はできません。

まとめ

離婚率全体は減少傾向にあるのに反し、婚姻期間が25年以上の熟年夫婦の離婚率は上昇傾向にあります。長年の違和感や不安から解放され、自由な生活を手に入れられる反面、熟年離婚には経済的に見るとさまざまなデメリットもあります。

特に収入の目処が立たないままに不用意に熟年離婚に踏み切ってしまうと、離婚後に経済的に自立できず生活が行き詰まってしまうおそれも十分考えられます。財産分与や慰謝料、そして年金分割はどのくらいもらえるのか、誰からどのようなサポートが受けられるのかを確認した上で、慎重に離婚を判断するようにしてください。

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