【年金受給者のふるさと納税ガイド】納税控除上限額や確定申告の方法

年金受給者でもふるさと納税をすることができ、控除上限額も決まっています。この記事は、年金受給者がふるさと納税をする方法や控除上限額の計算、確定申告について解説します。ワンストップ特例制度や注意点なども理解しながら、地域の活性化を応援しつつ、税金におけるメリットを受けましょう。

【年金受給者のふるさと納税ガイド】納税控除上限額や確定申告の方法

年金受給者でもふるさと納税ができる!

年金受給者でもふるさと納税ができる!

給与所得者にとってメリットが多いと思われがちなふるさと納税ですが、年金受給者でも利用することができます。

そもそも、ふるさと納税とは、生まれ故郷や応援したい自治体に寄付をすることで税金の一部が控除され、お礼として寄付先の特産品などをもらうことができる、地域応援の仕組みです。
寄付した金額のうち2,000円を超える分は、所定の手続きを行うことで所得税の還付・住民税の控除を受けることができます。控除される上限金額は収入や家族構成によって異なり、上限金額を超えた場合はすべて自己負担となります。
そのため、利用の際は収入の状況やほかの所得控除がないかといったことを確認しておく必要があります。

年金受給者の場合、ふるさと納税を利用する際にはいくつかの条件や注意点があります。

ふるさと納税ができる年金受給者の条件

ふるさと納税ができる年金受給者の条件

ふるさと納税自体は、誰もが利用できる制度なので年金受給者でも利用できますが、年金受給者が税金控除のメリットを受けるには、一定の条件があります。
それは「所得税や住民税を納めるために一定の収入があること」です。

なぜならば、ふるさと納税は「寄付金控除」の対象となり、所得税と住民税から納税額に応じて税金が控除がされます。
所得税と住民税は、年齢や公的年金などの収入状況によって課税額が異なり、収入額によっては課税されないケースもあります。

課税されないケースに該当してしまうと、そもそも所得税や住民税を納めていないため、控除を受けることができなくなってしまうのです。 
具体的な金額を示すと、所得税がかからなくなる公的年金などの受取金額は65歳未満は108万円以下、65歳以上は158万円以下です。
控除を受けることができなければ、ふるさと納税を利用したとしても、2,000円を超える寄付額すべてが自己負担となってしまい、ふるさと納税のメリットを受けることができません。

年金受給者がふるさと納税を行う場合、公的年金などの収入がどのくらいあるのか、公的年金以外にも副業や不動産などの収入があるか、その他にも年齢や家族構成などによって、控除される上限金額が決まります。

【参考】国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」詳しくはこちら

【参考】国税庁「No.1199 基礎控除」詳しくはこちら

年金受給者のふるさと納税控除上限額

年金受給者のふるさと納税控除上限額

ふるさと納税では、原則として寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が控除の対象となります。
ただし、控除には上限額があり、上限額を超えた分は全額自己負担となるため、注意が必要です。
年金受給者の場合は、前述の通り公的年金などの収入額や家族構成によって上限額が決まります。

あくまで目安の概算金額となりますが、以下に年金受給者のふるさと納税控除上限額を表にまとめましたので、ご参考ください。

■年金受給者のふるさと納税控除上限金額の目安

公的年金収入 65歳未満
独身
65歳未満
夫婦
(配偶者控除あり)
65歳以上
独身
65歳以上
夫婦
(配偶者控除あり)
100万円 0円 0円 0円 0円
150万円 11,000円 3,000円 0円 0円
200万円 20,000円 11,000円 12,000円 4,000円
250万円 28,000円 20,000円 24,000円 15,000円
300万円 37,000円 29,000円 36,000円 27,000円
350万円 46,000円 38,000円 46,000円 38,000円
400万円 58,000円 47,000円 58,000円 47,000円
450万円 69,000円 61,000円 69,000円 61,000円
500万円 79,000円 71,000円 79,000円 71,000円

※配偶者は、所得税の控除が38万円となる場合を想定しています。
※国民健康保険控除、介護保険料などの社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除など所得控除は考慮されていません。

金額は参考となりますので、正確な控除上限額を知りたい場合は、お住まいの自治体もしくは税理士にお問い合わせください。

ふるさと納税控除上限額の計算方法

ふるさと納税控除上限額の計算方法

年金受給者の寄付が可能な控除上限額は以下の計算式で求めることが可能です。

寄付可能上限額 = ① 住民税所得割額 × ② 課税所得に応じた変数 +2,000円(自己負担分)

確認する際は、お手元に「前年の所得税の確定申告の控え」と「今年の住民税課税決定通知書」をご用意ください。

まず、①「住民税所得割額」を求めます。
住民税決定通知書に記載されている「都道府県税の税額控除前所得割額」と「市民税の税額控除前所得割額」を参照し、合計します。合計した金額が「住民税所得割額」となります。

次に、②「課税所得」を参照します。
前年の所得税の確定申告の控えに記載されている、課税される所得金額を参照してください。
計算式にある「課税所得に応じた変数」は、課税所得金額に応じて段階的に変わります。
以下の表から、課税所得金額から課税所得に応じた変数を参照し「上限額の計算式」にあてはめると、控除上限額を算出することができます。

ふるさと納税控除上限額 算出表

課税所得額 寄付が可能な上限額
~194万9,000円 住民税所得割額×23.559%
+2,000円
195万円~329万9,000円 住民税所得割額×25.066%
+2,000円
330万円~694万9,000円 住民税所得割額×28.744%
+2,000円
695万円~899万9,000円 住民税所得割額×30.068%
+2,000円
900万円~1,799万9,000円 住民税所得割額×35.520%
+2,000円
1800万円~3999万9,000円 住民税所得割額×40.683%
+2,000円
4000万円~ 住民税所得割額×45.398%
+2,000円

※課税される所得金額は1,000円未満の端数金額を切り捨てたあとの金額です。
※住民税所得割額は課税所得金額×10%でも計算ができます。

年金以外にも給与や家賃収入がある場合

年金受給者の方で、公的年金以外にも給与や家賃収入、民間の個人年金などがある場合には、以下の手順で控除上限額を計算してみましょう。

➀所得金額を計算
以下の表を参考に、該当する所得の合計を算出します。

所得金額 = A 公的年金 + B 民間の個人年金 + C 不動産所得 + D 給与所得

A:公的年金=公的年金収入ー公的年金控除
※公的年金とは、国民年金、厚生年金、確定拠出年金などのことを指します。

B:民間の個人年金=年金収入ー必要経費

C:不動産所得=不動産収入ー必要経費

D:給与所得=給与収入ー給与所得控除

②課税所得金額を計算
➀で計算した所得金額から、社会保険控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除、その他の所得控除の合計を引きます。

課税所得金額 = 所得金額 ー所得控除

③住民税所得割額を計算
②で計算した課税所得金額をもとに、住民税所得割額を計算します。

住民税所得割額=課税所得金額×10%

④ふるさと納税の控除上限額を確認
先ほどの表をもとに、控除上限額を算出します。

ワンストップ特例制度を利用すると確定申告が不要

ワンストップ特例制度を利用すると確定申告が不要

ふるさと納税の寄付金控除を受けるためには、申請を行う必要があります。
申請方法には、①確定申告と②ワンストップ特例制度があり、ワンストップ特例制度を利用する場合は確定申告が不要になります。

ワンストップ特例制度とは?

ワンストップ特例制度とは?

「ワンストップ特例制度」とは、寄付した自治体に「寄付附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出することで、確定申告なしでふるさと納税による控除が受けられる制度です。
確定申告に慣れていない給与所得者むけにつくられ、手続きが簡単なため多くのふるさと納税者が利用しています。

ワンストップ特例制度を利用する条件

ワンストップ特例制度を利用するには条件があります。

①確定申告や住民税申告をする必要がない、給与所得者等であること
➁医療費控除など、ふるさと納税以外に確定申告もしくは住民税の申告を行う必要がない
③寄付先の自治体が5団体以内であること

上記の条件を満たしていない場合、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告が必要になります。
また、ワンストップ特例制度を利用する場合、控除対象となるのは住民税のみとなり、毎月支払う住民税からの控除という形で還元されます。

確定申告が必要な人はワンストップ特例制度が利用できない

前述の条件にもあるように、個人事業主の方など、もともと確定申告が必要な方はワンストップ特例制度を利用することができません。また、寄付先の自治体が6団体以上ある場合や、医療費控除など、ふるさと納税以外の控除を受ける場合も、確定申告をする必要があるため、ワンストップ特例制度は利用できません。

ふるさと納税の控除申告方法

ふるさと納税の控除申告方法

ここからは、ふるさと納税を行ったあとの、具体的な申告方法の手順を解説します。
ワンストップ特例制度ならびに確定申告のどちらを利用する場合でも、申告を忘れると控除が受けられなくなってしまうので、忘れずに申請するようにしましょう。

ワンストップ特例制度を利用する場合

ワンストップ特例制度を利用するには、ふるさと納税をした寄付先の自治体へ、必要事項を記入したワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)を送付する必要があります。

①申請に必要なものを揃える
ワンストップ特例制度の申請用紙と本人確認書類を用意しましょう。

申請用紙は、申込時に申請用紙を希望すると寄付先から郵送されます。ほかにも、自治体のホームページから入手できることもあります。また、ふるさと納税ポータルサイトを利用した場合はマイページ上からダウンロードが可能です。

本人確認書類は、マイナンバーと本人確認ができる書類の写しを同封して提出する必要があります。

②申請書類を記入する
申請書類に必要事項を記入しましょう。

③各自治体に書類を郵送する
①・②で用意した申請書類と本人確認書類を、寄付先の自治体に郵送しましょう。申請期限は、ふるさと納税を行った翌年の1月10日です。
この期限を過ぎてしまうと、ワンストップ特例制度の利用条件を満たしていたとしても、確定申告を行わないといけなくなるため、期限を厳守しましょう。

なお、ふるさと納税ポータルサイトを利用する場合に、寄付先の自治体がオンライン申請に対応していれば、すべてオンライン上で申請が可能な場合もあります。

確定申告をしてふるさと納税の控除申告を行う場合

確定申告によって寄付金控除を申請する際は「寄付金受領証明書」の添付・提示が必要となります。

①申請に必要なものを揃える
寄付金受領証明書、対象期間の源泉徴収票、還付金受取用口座番号、本人確認書類を準備しましょう。
寄付金受領証明書は、ふるさと納税した自治体から納税後、しばらくして送られてきます。確定申告まで紛失しないよう、慎重に保管しておきましょう。

本人確認書類は、マイナンバーと本人確認ができる書類の写しを同封して提出する必要があります。

②確定申告書の作成
国税庁の確定申告特集のページへアクセスし「確定申告書等作成コーナーへ」を選ぶと、オンライン上で確定申告書を作成することができます。画面に表示される手順に沿って必要事項を記入しましょう。

なお、ふるさと納税ポータルサイトからふるさと納税を行い、なおかつ「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」で確定申告を行う場合、ポータルサイトのマイページでダウンロードできる「寄附金控除に関する証明書」を利用すると、e-Tax上でデータ連携ができ、入力や記入の手間を省くことができます。

③確定申告書の提出
②で作成した確定申告書を提出します。従来は、入力後に印刷した申告書を税務署へ郵送もしくは直接持参していましたが、最近ではオンラインで完結できるe-Taxでの提出が増えてきています。
確定申告の提出期限は、例年2月16日~3月15日です。

年金受給者がふるさと納税をするうえでの注意点

年金受給者がふるさと納税をするうえでの注意点

年金受給者がふるさと納税を行う際に、いくつか注意すべき点があります。ふるさと納税でメリットを得るために、理解を深めておきましょう。

ふるさと納税控除上限額を超えた分は自己負担になる

年金受給者に限った話ではありませんが、控除上限金額を超えてふるさと納税をした場合、超えた額については全額自己負担となりますので注意が必要です。

特に、年金受給者の方で公的年金以外に収入がある方は、控除上限金額が年によって変動することも考えられます。必ずご自身の収入状況を確認してから利用するようにしましょう。
年金受給者の控除上限額の計算は複雑なため、不安な場合はお住まいの自治体や税理士に相談しましょう。

所得税・住民税が非課税の人はふるさと納税のメリットがない

冒頭でも少し触れましたが、ふるさと納税は「寄付金控除」となり、所得税・住民税から控除されます。
そのため、ふるさと納税の税金控除を受けるには、所得税や住民税が課税されるだけの一定の収入が必要です。所得税や住民税がそもそも非課税の場合、控除を受けることはできませんので、注意しましょう。

例えば、65歳未満で公的年金等の収入金額の合計が108万円以下の場合や65歳以上で合計が158万円以下の場合は所得がゼロとみなされるため、原則として所得税は課されません。また、住民税についても、前年の所得が自治体の定める額を満たさない場合は、非課税となります。

ふるさと納税の控除申請は期限がある

ワンストップ特例制度、確定申告それぞれに申請期限があるので、厳守するようにしましょう。
ワンストップ特例制度の申請は、ふるさと納税をした翌年の1月10日までです。翌年の1月10日までに、寄付先の自治体へ申請書類一式が届いている必要があります。
確定申告は、例年2月16日~3月15日が期限です。どちらも期限内に申請を行うようにしましょう。

まとめ

年金を受給中の人(年金しか収入がない人も含む)も条件さえ満たせば、ふるさと納税制度を利用することができます。応援したい自治体に寄付をし、税金控除や返礼品の受け取りといったメリットを享受することができます。

その一方で、収入や家族構成によって定められている控除上限額を超えた金額は、自己負担になってしまいます。所得税や住民税が非課税の人は、ふるさと納税を行っても税負担の軽減効果を期待できないことに注意が必要です。
興味はある方は、本記事で紹介したことに気を付けながら、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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