年金受給者もできる!年金でふるさと納税を行うポイントと注意点
生まれ故郷や応援したい全国の自治体に寄附をすると、税金が一部控除される「ふるさと納税制度」。寄附先の自治体によっては特産品などの豪華な返礼品を受け取れる場合も多く、お得な制度として人気があります。今回は、年金受給者がふるさと納税をする方法と注意点を詳しくみていきましょう。

そもそもふるさと納税とは?

ふるさと納税とは、もともと「今は別の都市に住んでいるが、自分を育んでくれたふるさとに、自分の意思で納税できる仕組みがあっても良いのではないか」という問題提起をもとに、国会での議論等を経て2008年に創設された制度です。制度名に「ふるさと」や「納税」という言葉が含まれているため、出身地の自治体に税金を納める制度だと誤解されることが多いのですが、実際には、自分の選んだ自治体(出身地以外でも可)に納税ではなく寄附ができる制度です。
ふるさと納税には、主に以下の3つの特典があるため、年々利用者が増え、ふるさと納税の受入件数は2,322万件、受入額(寄附金額)は5,127億円を超えています(2018年度実績)。
特典① 税控除が受けられる
一般的に、個人が自治体に寄附をした場合は、確定申告をすることによって寄附額の一部が所得税と住民税から控除されますが、ふるさと納税の場合は寄附した金額のうち2,000円を超える部分について全額が控除の対象となります。同年度中に複数の自治体にふるさと納税を行った場合でも、自己負担額は2,000円のみです。ただし、控除額には上限が設けられており、これを超えて寄附した場合、超過分はすべて自己負担になるので注意しましょう。
控除上限額は収入や家族構成によって異なり、その目安は、総務省のホームページで確認することができます。
【参考】総務省ホームページ 詳しくはこちら
特典② 返礼品を受け取れる

多くの自治体では、地元の特産品等を「返礼品」として寄附をしてくれた人に届けています。返礼品のラインアップは地元産の新鮮な農水産物や伝統工芸品など各自治体によってさまざまで、返礼品の内容によって寄附先を選ぶ人も少なくありません。一方の自治体にとっては、返礼品という形で地元の産業や特産品を全国にPRできるというメリットもあります。
特典③ 寄附の使い道を指定できる
ふるさと納税では、自分が寄附したお金の用途を選択することができます。ホームページやふるさと納税制度を紹介するウェブサイトに、「伝統文化の継承のための事業」「自然環境保全のための事業」、「町民のためのマイクロバス購入費用」など、具体的な寄附の用途を明記している自治体も多いので、寄附の用途を比較検討して寄附先の自治体を選ぶこともできます。
年金受給者でもふるさと納税をするには?

このように多くのメリットがあるふるさと納税制度ですが、特に利用できる人に条件が設けられているわけではなく、年金受給中の人(年金しか所得がない人を含む)にも、利用することができます。
手続きの内容も原則的には通常のふるさと納税の手続きと同じで問題ありません。条件を満たせば所得税・住民税の控除を受けられます。ただし、ふるさと納税の手続きにあたって、給与所得者で確定申告が必要でない人は「ワンストップ特例制度」を使うことができますが、年金受給者は原則として確定申告をしなくてはならないので、「ワンストップ特例制度」は利用できません。
ここからは、一般的なふるさと納税制度を活用した寄附をしてから税控除を受けるまでの流れとともに、年金受給中の人が特に注意すべき点を解説します。
STEP1 寄附先の自治体を決める
寄附をしたい自治体を決めます。特に応援したい自治体が決まっていない場合は、返礼品や寄附の用途、寄附金額に応じて自治体を検索できる「ふるさと納税サイト」を利用するとよいでしょう。例えば返礼品に「桃」を希望する場合、こういったサイトで「桃」というキーワードを入力して検索すれば、返礼品に桃を用意している全国の自治体が一覧表示されるので、比較検討をするのに便利です。
STEP2 ふるさと納税をする
ふるさと納税をしたい自治体が決まったら、その自治体が定める手順にしたがって、ふるさと納税(寄附)を行います。手続きは各自治体によって異なるので、自治体のホームページなどで確認するか、直接自治体の担当窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
なお、ふるさと納税サイトに会員登録し、そのサイト上で手続きを行うこともできます。同年度内に複数の自治体に寄附をしたい場合は、手続きがかなり簡略化できるのでサイトの利用をおすすめします。
STEP3 確定申告をする
ふるさと納税をした翌年の3月15日までに、確定申告を行います。確定申告の際には、寄附を証明する書類(寄附先の自治体が発行する寄附の証明書・受領書や、専用振込用紙の払込控など)が必要となります。
STEP4 所得税からの控除
確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税から控除されます。控除額は一般的に以下の計算式で求めることになります。ただし、控除の対象となる納税額はその年の総所得金額等の40%が上限とされています。
所得税からの控除 = (ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
所得税の税率は全員一律ではなく、課税所得の額に応じて5%から45%の7段階に区分されています。所得税からの控除額を計算する際には、以下の表から自身に適用される税率を確認してください。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円超 330万円以下 | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% |
695万円超 900万円以下 | 23% |
900万円超 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
例えば、課税所得が500万円の人が3万円のふるさと納税をした場合は、
(3万円−2,000円)✕0.2=5,600円が所得税から控除されることになります。
STEP5 住民税からの控除
一方、住民税については、ふるさと納税をした年ではなく、その翌年度の住民税から控除されることになっています。住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、それぞれ以下のように決まります。なお、住民税控除の対象となるふるさと納税額の上限は、総所得金額等の30%です。
① 住民税の基本分
住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額−2,000円)×10%
② 住民税の特例分
住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税額−2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)
③ 住民税の特例分(住民税の所得割額の2割を超える場合)
住民税からの控除(特例分) = (住民税所得割額)×20%
②の計算式で算出した住民税の特例分が、住民税所得割額の2割を超える場合は、こちらの計算式で算出した額を住民税の特例分とします。ただし、その場合は所得税からの控除、住民税の基本分、住民税の基本分を足しても(ふるさと納税−2,000円)の額が控除されず、実質負担分が2,000円を超えてしまうことに注意が必要です。
なお、給与所得者がふるさと納税を行った場合の所得税・住民税の控除額の目安は先に紹介した総務省のホームページで紹介されていますが、その数字は年金受給者の控除額の目安とは異なります。年金受給者の控除額の計算は複雑かつ、わかりづらいので市町村の担当窓口に相談して確認するとよいでしょう。
年金受給者がふるさと納税をする際の注意点

以上のとおり、年金受給者の場合も通常の場合と同じ流れでふるさと納税を行い、所得税・住民税控除を受けることができますが、いくつか注意すべき点があります。
① 控除額の上限を超えて寄附をすると超えた分は控除対象にはならず、自己負担になってしまう
控除の上限は収入や家族構成等によって異なります。年金受給者の場合は控除上限額の計算が複雑なので、市町村の担当窓口に確認してください。
② 所得税・住民税が0円の人は節税効果を期待できない
所得税・住民税が非課税の人は、そもそも所得税と住民税が0円なので、ふるさと納税による所得税と住民税の節税効果は期待できません。特に公的年金受給者の場合は、公的年金控除によって課税対象の所得が少なくなり、非課税となるケースが多いので、注意が必要です。
例えば、65歳未満で公的年金等の収入金額の合計が70万以下の場合や65歳以上で公的年金等の収入額の合計が120万円以下の場合は所得がゼロとみなされるため、原則として所得税は課されません。また、住民税についても、前年の所得が市町村の定める額を満たさない場合は、非課税となります。前の年に確定申告をして所得税・住民税が非課税だった人で、今年も引き続き収入に変化がない場合は、今年の所得についても所得税・住民税が課されないので、ふるさと納税による節税効果は期待できないでしょう。
まとめ
年金を受給中の人(年金しか収入がない人も含む)も、条件さえ満たせば、ふるさと納税制度を利用して応援したい自治体に寄附をし、税控除や返礼品の受け取りといったメリットを享受することができます。
しかし、収入や家族構成によって定められている控除上限額を超えた分は税控除を受けられず自己負担となってしまうこと、所得が低く所得税や住民税が非課税の人は節税効果を期待できないことに注意が必要です。ただし、年金受給者の控除上限額や、所得税・住民税の課税額は計算が複雑なので、自分で算出するのではなく、市町村の担当窓口に相談することをおすすめします。
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