50歳からの転職は難しい?成功するためのコツや転職しやすい人の特徴を解説

50歳からの転職は難しいといわれています。しかし「即戦力となる業界の知見やスキルがある」「マネジメント経験が豊富」などであれば、50代でも転職は不可能ではありません。本記事では、50歳からの転職で注意すべき点や、転職を成功させるポイントについて紹介します。

50歳からの転職は難しい?成功するためのコツや転職しやすい人の特徴を解説

50代で転職は不可能ではないが難しいのが現状

50代で転職は不可能ではないが難しいのが現状

「50代は応募不可」のように、求人票の募集要件で年齢を制限されることは原則としてありません。2007年(平成19年)10月に雇用対策法が改正され、企業などの事業主は採用条件に年齢制限を設けることを禁止されているためです。

一方、50代で転職をした人の割合は、20代や30代と比較して低い傾向にあります。総務省統計局の調査によると、働いている人のうち過去1年以内に離職を経験した人の割合は、次の通りです。

・25~34歳:6.8%
・35~44歳:4.3%
・45~54歳:3.3%
・55~64歳:3.7%

【参考】総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」 詳しくはこちら

調査結果をみると、45〜54歳と55〜64歳の転職割合は、44歳以下と比較して低いことが分かります。

採用条件に年齢制限を設けることは法律で禁止されているものの、実際には求人票に「若手歓迎」や「第二新卒歓迎」などと記載されるケースが少なくありません。

50代を採用のターゲットとしている求人は、20代や30代と比較して少ないのが実情です。

50代の転職が難しい4つの理由

50代の転職が難しい4つの理由

では、50代での転職はなぜ難しいといわれるのでしょうか。主な理由は、以下の4つです。

1.年収が高いと人件費や採用コストがかかるから
2.社風や仕事のやり方にすぐに順応できない可能性があるから
3.求めるスキル要件が高くマッチングしにくいから
4.定年までの期間が短い点が懸念されるから

1つずつ解説します。

1.年収が高いと人件費がかかるから

50代のビジネスパーソンは、一般的に長いキャリアを積んでいるため、給与水準が高い傾向にあります。そのため企業側が50代のビジネスパーソンを雇うとなると、20代や30代の若手よりも、高額な人件費が必要となります。

特に、そこまでハイレベルなスキルや実務経験を求めていないポジションだと、高いコストをかけてでも50代の人材を雇う価値があるのかを、企業側は慎重に判断することになります。
ハイクラスの50代の転職では、採用のハードルが高くなりやすいのです。

50代からの転職では、キャリア採用(即戦力となる人材の採用)や、ヘッドハンティングなどされない限り、年収アップはあまり期待できません。年収アップを前提に転職活動をすると、もともと少ない選択肢がさらに減ってしまうでしょう。

2.社風や仕事のやり方にすぐに順応できない可能性があるから

50代の転職希望者のなかには、長年にわたって同じ勤務先で働いている人もいます。同一企業での勤続年数が長いと、採用担当者から「現職の企業の文化に慣れ親しみすぎて、当社の風土になじめないのではないか」という疑念を抱かれてしまうかもしれません。

また、長年の職務経験から、仕事の仕方にこだわりをもつ人も多いため「上司や会社の指示に従わず、自己流で仕事を進めてしまうのではないか」と懸念されて、採用を見送られることもあります。

3.求めるスキル要件が高くマッチングしにくいから

50代での転職では、年齢相応の高いスキルを求められることがほとんどです。
業界の専門知識や専門職種でのスキルをはじめ、マネジメント力や課題解決力、交渉力、対応力など、企業側が求めるスキルを高いレベルで習得していなければ、選考に通過するのは困難でしょう。

採用担当者にアピールできるような、経験や実績などがないと、転職活動に苦労するかもしれません。また、実績を積んでいる人やスキルをもっている方でも、その他の経験や強みが多いと、企業が求めるスキルがかすんでみえ、採用を見送られてしまうこともあるでしょう。

4.定年までの期間が短い点が懸念されるから

多くの企業は、長きにわたって活躍する人材を求めています。また、将来的に事業を支える人材を育成したいと考えて、若く伸びしろのある人を募集する企業も少なくありません。

転職者が50代の場合、10〜15年程度で定年退職を迎えてしまいます。せっかく採用をしても、転職者が定年退職を迎えたあとは新たな人材を探さなければなりません。

特に、職種や業界が未経験である場合、育成をしてもすぐに定年退職を迎えるのであれば、企業側にとっては採用するメリットがあまりないといえます。

以上の点から、50代の転職者は20代や30代などと比較して、定年退職までの期間が短い分、採用される可能性も低い傾向にあります。

50歳で転職する前に考えるべきこと

50歳で転職する前に考えるべきこと

50歳からの転職はハードルが高い傾向にあるため、入念に対策を練ったうえで活動を始めることが重要です。まず、転職活動を始める際は、事前に以下の点を慎重に検討しておきましょう。

・転職理由が妥当なものか
・年収が下がっても生活に支障がないか
・自分の市場やキャリアが下がる可能性がないか
・もらえる退職金が下がる可能性がないか

それぞれの検討すべき理由やポイントを解説します。

転職理由が妥当なものか

転職理由が漠然としていると、転職先の選択に失敗してしまうかもしれません。

例えば、転職理由が「何となく働く環境を変えてみたいと思った」である場合、転職活動の方針が定まらず、自分自身に合った職種や業界を選ぶのが難航する恐れがあります。また面接で転職理由を聞かれた時、採用担当者が納得できる説明をすることも難しいでしょう。

転職に失敗したとしても、かつての勤務先に同じポジションで戻るのは非常に困難です。後悔をしないためにも、求人探しを始める前に「転職理由は本当に妥当なのか」「現在の不満を転職以外で解決する方法はないのか」をよく考えることをおすすめします。

年収が下がっても生活に支障がないか

50代で転職をする場合、よりよいポジションに付くことができれば、年収のアップが望めるでしょう。しかし、給料の決まり方は企業によってさまざまであるため、転職をしたことで年収が下がるケースも想定されます。
正規雇用ではなく、契約社員や派遣社員などの雇用形態でのスタートになる可能性があるのも現実です。

年収が下がることを避けて給与の高い求人ばかりに応募すると、転職活動が難航することが予想されます。
また、年収の低下を想定せずに転職をすると、転職後に生活が苦しくなったり、将来のライフプランに支障が出たりする恐れもあります。

転職活動を始める際は、年収が減少しても生活費・教育費の支払いや住宅ローンの返済、セカンドライフなどに支障が出ないかをよく考えることが大切です。

自分の市場価値やキャリアが下がる可能性

50代で転職する人のなかには、これまでと同等の役職やポジションを希望する方も少なくありません。

しかし、企業によって人事制度や役職ごとの裁量権などは大きく異なります。現在の役職やポジションにこだわって転職活動を始めると、希望に合致する求人がなかなか見つからず、転職活動の期間が長引いてしまう恐れがあります。

50歳からの転職活動では、肩書きにこだわらず、積み上げてきた経験やスキルを活かせる企業を選んだ方が、納得のいく企業に転職できることもあります。たとえ一時的に肩書きが下がっても、業績や働きぶりが評価されれば昇進できるかもしれません。

もらえる退職金が減ってしまう可能性

退職金は、勤続年数が長ければ長いほど支給額が増える傾向にあります。転職を理由に途中退職をすると、退職金の支給額は基本的に少なくなります。

また、企業によって退職金規定は大きく異なるため、転職先によっては定年退職を迎えても退職金が支給されないかもしれません。

退職金は、老後生活を送るうえでの貴重な資金源です。50歳で転職をするのであれば、退職金の受取総額が減ることを想定してライフプランを立てることをおすすめします。

退職金が減ると老後の生活資金が不足する可能性があるのなら、転職せずに定年退職を迎えるまで勤め上げるのも1つの方法です。

50歳からの転職を成功させる7つのコツ

50歳からの転職を成功させる7つのコツ

50歳であっても、コツを押さえて転職活動をすると、転職できる可能性はあります。ここからは、転職を成功させるために知っておきたい7つのコツをご紹介します。

①即戦力になれる業界・職種に転職する

50代を採用する企業のほとんどは、即戦力となる人材を求めています。
求人票では、同じ業界や同じ職種での経験がある人を採用要件にしていることが多いです。

特に資格が必要な仕事や専門性の高い職業は、年齢が高くても採用してもらえるケースが多いため、積極的に自己PRしましょう。

②企業の規模にこだわらない

内定が出にくいといわれる50代の転職には、大手企業よりも求人倍率が低い中小企業がおすすめです。また大手企業に比べ中小企業では、一人ひとりに与えられる裁量が大きく、仕事の成果を実感しやすいというメリットもあります。

大企業の課長ポジションと中小企業の部長ポジションでは、後者の方が年収が高く、裁量権が大きい可能性もあるでしょう。
企業規模にこだわらず、シニアでも十分に力を発揮できる環境であることや、60代になっても満足度の高い仕事ができるかという考え方で、企業を選びましょう。

③複数の転職支援サービスに登録する

本業をこなしながら、求人探しや履歴書の作成といった転職活動を進めるのは、なかなか骨が折れるものです。そこで、活用したいのが「転職支援サービス」です。
転職支援サービスには、転職サイトや転職エージェント、ハローワークなどがあります。

転職サービスのなかでも、転職エージェントであれば、専任のキャリアアドバイザーがこれまでの業務経験や習得しているスキルなどを面談でヒアリングし、それらに合致した求人を提案してくれます。インターネットには掲載されていない非公開求人を紹介してもらうことも可能です。

50代の採用に力を入れている企業や、年収・待遇などの希望条件に合致した求人を紹介してもらえることもあるため、より効率的に求人探しができるでしょう。

また、職務経歴書・履歴書で記載すべき点や面接で想定される質問とその答え方などもアドバイスしてくれるため、仕事をしながらでも転職活動をスムーズに進められます。

一方で、キャリアアドバイザーのサポートや取り扱っている求人などは、サービスによって異なります。転職活動を始める際は、複数の転職エージェントに登録をするのがおすすめです。

④自己分析を行い、職務経歴書を作り込む

50代になると、複数の部署や職務を経験しているために、自分自身の強みを把握しにくいと感じられるかもしれません。とはいえ、自分自身の強みを明確にできていなければ、書類選考や面接に通過するのは困難です。

そこで、転職活動をする際は、これまでの職務経験と培ってきたスキルを洗い出し、入念に自己分析をすることが大切です。

積み重ねてきた経験や習得してきたスキルを書き出して整理をすると、応募書類や面接で積極的にアピールすべき強みや得意分野が明確になります。また、転職先を選ぶ時に重視すべきポイントも把握しやすくなるでしょう。

⑤企業分析と面接対策を行う

転職活動をする際は、応募先の企業を分析することが大切です。企業理念や競合他社と比較した強みなどを踏まえて、志望動機や転職理由を考えておくと、面接時に採用担当者に熱意や真剣さが伝わりやすくなるためです。

また、入念に企業分析をして業務内容や働き方などを把握していれば、入社後のミスマッチも防ぎやすくなります。

企業分析と合わせて行いたいのが面接対策です。転職理由や職務経歴、志望動機などの質問にスムーズに回答できるよう練習をすると、採用担当者に好印象を与えられる可能性があります。

加えて、どのような質問がきても回答できるように準備しておくと安心です。インターネットでの検索や転職エージェントへの相談で、面接時に聞かれることの多い質問を調べ、それらに対する回答も準備しておくとよいでしょう。

⑥転職先が決まってから転職する

50歳からの転職を成功させる7つのコツ

仕事をしながらの転職活動は、難易度が高いと考える人も多いと思いますが、転職先が決まる前に会社を辞めるのは避けましょう。

転職先が決まる前に退職をすると、要件を満たせば雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を受給できます。
しかし、50歳からの転職活動は、長期化することも多く、基本手当の支給が終わるまでに次の就職先が見つかるとは限りません。

転職先が決まっていないのに退職していることで計画性がないと判断されることもあります。転職活動が難航してブランク(離職期間)が長くなると、体調に問題があるのかと企業から懸念されることもあります。
転職が上手くいかなかった時に、収入が途絶えるリスクや転職活動が難航するデメリットのためにも、今の会社にとどまるという選択肢も残しておきましょう。

⑦資格を取得する

即戦力となるスキルや強みがないという人は、資格を取得するのも1つの手です。ファイナンシャル・プランナーや管理業務主任者などの国家資格、経理や営業などで使える日商簿記検定など、転職に有利となる資格を取得しましょう。
資格については、下記記事を参考にしてください。

50代の転職者に企業が求めるもの

50代の転職者に企業が求めるもの

50代の転職者に企業が求めるものとしては、以下が挙げられます。

・即戦力となる業界知見・職種スキル
・マネジメントスキル・教育スキル
・経営視点でのビジネスセンス
・チャレンジ精神や柔軟性

それぞれについて解説していきます。

即戦力となる業界知見・職種スキル

多くの企業は、即戦力となれる業界の知見や専門的なスキル、経験をもった人材に入社してもらうことを望んでいます。転職を希望する人の年齢が高ければ高いほど、その傾向は強くなっていくでしょう。

そのため50代の転職では、応募する企業の業界や職務遂行に必要なスキル、業務経験が豊富であると採用される可能性が高まります。

採用担当者によい印象を与えられるよう、履歴書や職務経歴書、面接でこれまでの経験から得られた知見や培ってきたスキルなどをアピールするのが有効です。

マネジメント経験が豊富

一般的に50代の多くは、管理職としてのマネジメント経験があります。そのため50代の転職では、目標の設定や進捗の管理、部下・メンバーの育成などのマネジメントスキルを求められるケースが少なくありません。

マネジメントの経験が豊富な人は、市場価値が高く、採用担当者からも好印象を得やすいといえます。

管理職での転職を考えている方は、マネジメントスキルを採用担当者にアピールできるよう、率いていた人数や管理方法などをまとめておくとよいでしょう。

経営者視点でのビジネスセンス

管理職や幹部候補の求人では、業界の知見や専門スキルに加えて「経営者視点」が求められます。経営者視点がある人材は、自社の財務状況や市場の状況、人員の配置、競合他社・顧客の動向など、経営判断に必要なあらゆる情報を多角的にみることができるためです。

例えば、新しい企画を経営陣に提案するとしましょう。経営者視点がある人材は「企業が得られる投資効果」や「現在の資金余力と人員で実現するための方法・手順」など、経営判断に必要な情報を織り込んだ提案ができます。

経営判断に必要な情報が企画内容に盛り込まれていれば、経営陣はより迅速かつ正確な意思決定を行いやすくなるため、経営者視点がある人材は重宝されやすいのです。

チャレンジ精神や柔軟性

転職希望者が50代である場合、新しいことに挑戦したり、変化に対応したりするのを嫌うのではないかと懸念されて、採用を見送られることが多々あります。

しかし逆をいえば、チャレンジ精神や変化に柔軟に対応できる能力があると評価されれば、内定を得られる可能性を高められるでしょう。

企業によって、文化や仕事の進め方、業務に用いるツール・機器などは大きく異なります。どれほど能力が高い人材でも、これまでの業務で培われた経験や知見のすべてが、転職先で通用するわけではありません。

また昨今は、テクノロジーの発達により、マーケットや顧客のニーズなどの変化が激しくなっているため、それらに柔軟に対応できる能力は必須といえます。

50代で転職する時は、新しいことにチャレンジする意欲や時代の流れなどに柔軟に対応できることをアピールするとよいでしょう。

50歳・未経験でも転職しやすい業種

50歳・未経験でも転職しやすい業種

最後に、50歳からでも転職しやすい業種を紹介します。

①介護職

介護業界は、少子高齢化の影響で慢性的に人手不足の状態が続いています。
そのため、50代でも採用されやすく、求人数も多いのが魅力です。老人ホームなどで働く場合、無資格でもOKとする施設がほとんどですが、入社後に介護系の資格を取得するケースが多いようです。介護系の資格には、介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)・介護職員実務者研修(旧:ヘルパー1級)・介護福祉士・認定介護福祉士があります。

②運転・運送系

貨物の運搬(トラック・トレーラー)、宅配ドライバー、バス運転手、タクシー運転手などの運転・運送系は、50代でも転職しやすい業種の1つです。
運転・運送系の資格には、フォークリフト免許・中型・大型運転免許・二種免許・特殊免許・けん引免許などがあります。なかでもフォークリフト免許所持が条件の求人は、時給が高い傾向にあるため、運転・運送系の業界で働きたい人は、取得しておくとよいでしょう。

③管理・監視系

警備員(交通誘導・施設・巡回)、管理人(マンション・オフィスビル・寮)などの管理・監視系は、未経験者でもOKの場合が多いため、50歳から異業種で活躍したいと思っている人におすすめです。
管理・監視系の資格には、マンション管理士などがあります。

まとめ

50歳から転職をするのであれば、自己分析によって自分自身の知識やスキルなどを洗い出し、それらを活かせる業界・職種を選ぶのがよいでしょう。

特に、マネジメント経験が豊富な人や経営者視点をもっている人、新しいことに意欲的に挑戦できる人などは、50歳からでも比較的転職しやすいと考えられます。

限られた時間で効率的に転職活動を進めたいのであれば「転職エージェント」へ登録するのがおすすめです。履歴書・職務経歴書の作成支援や、面接対策、非公開求人の紹介など、さまざまなサービスを受けられるため、よりスムーズに転職活動を進められるでしょう。

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