香典返しの相場は?贈る品物や挨拶状のマナー、宗派の違いについても解説
お通夜や葬儀で香典をいただいたら、一人ひとりに香典返しを用意しなければなりません。初めて香典返しを準備する場合、どのような品物を選ぶべきか、金額をどうするかなど迷うことでしょう。今回は、香典返しを贈るタイミングをはじめ、ふさわしい品物や相場など、香典返しのマナー全般について解説します。

香典返しとは?

香典返しとは、忌明け法要(四十九日)が終わった後、法要が無事に終わったという報告を兼ねたお礼のことをいいます。基本的には現金や金券を避け、食品など消えものを送るのが一般的です。
また、香典返しは手渡しで渡しますが、遠方の相手には郵送などでも構いません。贈る時期は、仏式ならば「忌明け」の法要が終わって1ヶ月以内が望ましいとされています。元は仏式の習慣ですが、近年では宗教に関係なく贈られるようになりました。適切な贈る時期については後述します。
香典返しをはじめ、弔事の贈り物にはのしのない「掛け紙」を使用します。最近では、水引が印刷された掛け紙を使うようになりました。水引は「黒白の結び切り」が一般的ですが、関西では「黄白の結び切り」を用いる地域もあるなど、水引の色とお返しする金額は地方により異なります。故人がお住まいの地域の慣習に従いましょう。また、末長いおつき合いという意味を込めて「あわじ結び」を使うこともあります。ちなみに、キリスト教では水引を使いません。
表書きは仏式であれば「志」とし、その下に喪家の姓(〇〇家)を書きます。関西をはじめ、西日本ではこれを「満中陰志(まんちゅういんし)※」と書くことがあります。また、神式やキリスト教では「偲草(しのびぐさ)」が使われることもあります。表書きは濃墨の毛筆で書くのが一般的です。
※中陰とは四十九日のことを表し、中陰が満ちる(喪が明ける)ことを意味します。
香典返しの相場

香典返しを贈る際は、いくらぐらいの品物を選べばよいのでしょうか。ここからは、気になる香典返しの相場について詳しく解説します。
金額は「半返し」が一般的
香典返しは「半返し」が基本です。つまり、もらった香典の半額を返すということです。例えば、5,000円の香典を包んでくれた人には2,500円程度のお返しを贈ります。
故人の会社関係の方など連名で香典をもらった時は、全員に香典返しを渡しましょう。もちろん、こちらも半返しで贈ります。仮に一人につき3,000円ずつ包んでもらったのであれば、1,500円の品物を人数分用意します。
高額な香典などには半返し以外でもよい
身内や親族からは数万円の香典をもらうこともあります。このような場合は、半返しにこだわる必要はありません。香典返しは金額よりも、相手への真心のほうが大切です。お返しは1/3〜1/4程度としても失礼にあたりません。ただし、事情がわからない時は、お寺や葬儀社などに確認するとよいでしょう。
「当日返し」と「忌明け返し」で金額を分けることも
当日返しと忌明け返しで金額を分ける方法もあります。当日返し(即日返し)とは、葬儀当日に渡す香典返しのことで、だいたい3,000円前後が相場です。用意する品物はすべて同じで構いません。例えば、当日返しとして2,500円の品物を用意した場合、5,000円の香典を包んでくれた人には当日返しのみで半返しが成立します。したがって、忌明けの香典返しは不要となります。一方で、1万円の香典を包んでくれた人には半返しが成立しません。不足している2,500円分は、忌明けの香典返しで補いましょう。
香典返しで贈る品物

香典返しではどのような品物を贈ればよいのでしょうか。ここでは、品物の選び方について解説します。
お菓子・お茶などの消耗品が定番
香典返しには「使用してなくなるもの・消えもの」がふさわしいといわれています。これには「不幸をあとに残さない」という意味合いがあります。昔から好まれる品物には以下のようなものが一般的です。
・お菓子、乾物、お茶などの食べ物
食べ物には「悲しみを食い消す」といった意味が込められます。焼き菓子やおかき、日本茶、海苔などが定番です。また、お菓子類は、小分けになっており数もたくさん入っています。贈られた方が分け合うこともできるので、複数人からの連名で香典をいただいた場合などの香典返しには特におすすめです。
・タオルや洗剤などの日用消耗品
タオルや洗剤には「悲しみを拭い去る」「悲しみを洗い流す」といった意味が込められます。石鹸や入浴剤などもふさわしいでしょう。
・陶磁器や漆器
その昔、人は亡くなると土葬されていました。亡くなった後は土に還るという意味で、土で作られている陶磁器を贈るようになったようです。また、木などに漆を塗って作られている磁器には不幸を塗りつぶすという意味を込め、香典返しの品物として選ばれるようになったといわれています。消えものではない陶磁器や漆器も、このような理由から香典返しの品物としてよく利用されています。
近年ではカタログギフトを贈る方法も
近年人気を集めているのが、香典返しに特化したカタログギフトを贈る方法です。食べ物や日用品など決まった品物でももちろん構いませんが、物によっては相手の好みに合わない可能性があります。カタログギフトであれば、流行を取り入れたさまざまな品物が掲載されているので、好きなものを選んでもらうことができます。金額に応じたカタログが用意されているため、品物選びに時間を取られることもありません。現代のライフスタイルに合った方法と言えます。
避けたほうがよい品物

香典返しには、避けたほうがよい品物もあります。昔からの決まりとして「四足生臭もの」はタブーとされています。肉や魚といった生ものをはじめ、酒類もあまりふさわしくありません。また、慶事に使われやすい昆布や鰹節も避けたほうがよいとされています。
ただし、近年では「故人が生前に好きだったもの」を贈ることも増えているようです。例えば、故人が好んでいた銘柄の酒を贈ることで、故人を偲んでもらうといった方法です。タブーにこだわり過ぎず、故人に思いを馳せてもらえるような品物を選ぶのも心遣いでしょう。それでも香典返しは不祝儀なので、華やかで美しいものやおめでたいものは避けるのが基本です。
香典返しの挨拶状のマナー

香典返しを郵送する時は挨拶状(礼状)を添えましょう。もらった香典へのお礼や郵送で送ることへのお詫びをはじめ、四十九日法要や納骨が済んだこと、戒名の報告などを言葉にします。香典返しを直接手渡しするのであれば、基本的に挨拶状は不要です。渡す際にお礼の言葉を述べましょう。
宗教・宗派による香典返しの時期の違い
香典返しを贈る時期は、宗教や宗派によって異なります。注意しておきましょう。
<仏式>
「四十九日」の法要後に贈ります。初七日から四十九日の間に準備を済ませておきます。故人の命日によっては、忌明けが年を越してしまうことがあります。この場合は「三十五日」を忌明けとし、この時期に香典返しを行いましょう。ただし宗派によって異なることもあるため、安易な行動は避け、わかる方に確認することをおすすめします。
<神式>
神式の忌明けに相当するのは五十日祭です。仏式の四十九日(七七日)忌にあたり、この時期が忌明けになりますので、「五十日祭」の祭典後に贈ります。十日祭から五十日祭の間に準備を済ませておきましょう。
<キリスト教(カトリック)>
「1ヶ月目の追悼ミサ」後に贈ります。7日目の追悼ミサから30日目の追悼ミサまでの間に準備を済ませておきましょう。
<キリスト教(プロテスタント)>
「召天記念日」の記念式後に贈ります。葬儀式から召天記念日の記念式の間に準備を済ませておきましょう。
まとめ
香典返しのマナーは地域や宗教・宗派によっても異なるため、わからない時はお寺や葬儀社に聞いても構いません。大切なのは、香典を包んでくれた相手への感謝の気持ちと、故人を偲ぶ気持ちです。相手に失礼とならないよう最低限のマナーに気をつけ、将来の円滑なおつき合いにつなげましょう。
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