香典返しの相場は?贈る品物やお礼状のマナー、宗教による違いも解説

お通夜や葬儀で香典をいただいたら、一人ひとりに香典返しを用意しなければなりません。初めて香典返しを準備する場合、どのような品物を選ぶべきか、金額をどうするかなど迷うことでしょう。今回は、香典返しを贈るタイミングをはじめ、ふさわしい品物や相場など、香典返しのマナー全般について解説します。

香典返しの相場は?贈る品物やお礼状のマナー、宗教による違いも解説

香典返しとは?

香典返しとは?

香典返しとは、お通夜や告別式で香典やお悔やみを頂いた方に、感謝の気持ちを伝えるためのお礼の品です。香典返しは通例として行われているもので、宗教によって時期が異なったり、地域の習わしによって香典返しの目安となる金額にも差があります。

香典返しの相場

香典返しの相場

ここからは、気になる香典返しの相場や考え方について詳しく解説します。弔問客との関係性や予算にもよりますが、しきたりに合わせて不祝儀にならないよう配慮しましょう。

金額は「半返し」が一般的

香典返しは「半返し」といって、頂いた香典の半分の金額の品物を送るのが一般的です。
以前は、関西では1/3、関東では半額が通例だったようですが、現在は全国的に半返しが主流になっています。これは、人の交流の範囲が全国に広がり、関西と関東を区別して贈るのが難しくなってきたからといわれています。

ただ、地域によってはその地域の慣習が大事にされている場合があります。半返しが基本であることを意識しつつ、故人が生前に住んでいた地域の親族等に確認するようにしましょう。

高額な香典などには半返し以外でもよい

身内や親族から高額の香典を頂くことがあります。これは、葬儀費用の負担や遺族の生活を心配して、何かの役に立ちたいとの思いが込められてると考えられています。
このような場合は、半返しにこだわる必要はなく、お返しは1/3〜1/4程度としてもよいとされています。

なお、いくらから高額と判断するかは難しいところですが、5万円以上が高額の目安とされるケースが多いようです。ただし、香典の金額も地域によって違いがありますので、心配であれば地域の方に相談する方が無難です。

「当日返し」は全員同じ金額のもので

香典返しは、49日法要後の忌明けにお送りする「忌明け返し」のが一般的ですが、地域や宗教・宗派によっては葬儀当日にお渡しする「当日返し」を行うところもあります。
近年では、葬儀後の負担軽減も兼ねて「当日返し」を選択する場合があります。

当日返しの場合は、香典額が分からない状態で香典返しを選ぶため、全員に同じものを準備します。この場合は、香典で頂く金額が5,000円前後が多いことから、香典返しは2,000円から3,000円とされることが多いようです。
なお、実際に頂いた香典との差が大きい場合は、忌明けに改めて差額分のお礼をお送りするようにします。このお礼は頂いた香典の半額と、当日返しの価格の差額分が目安です。

会社の方から連名でもらった場合

働いている人であれば、勤務先の会社の方から香典を頂く場合もあるでしょう。
この場合も基本的には「半返し」を基準に考えます。誰からいくら頂いたのか明確な場合は、頂いた香典の半額で香典返しを贈ります。もし、一人ひとりの金額が分からない場合は、香典の一人あたりの平均額を計算し、その半額を香典返しとします。
ただし、一人あたり1,000円以下になるようでしたら、みなさまで分けられるお菓子などを贈る方法もあります。

なお、法人名で香典を頂いた場合は、慶弔規定による会社の福利厚生制度の可能性もあります。もし、福利厚生制度であれば、香典返しは必要ありません。まずは、会社の制度によるものなのか、同僚や上司から頂いた香典なのか確認するようにしましょう。

香典返しに選ばれる贈り物

香典返しに選ばれる贈り物

ここでは、香典返しにおすすめの品物や選び方について解説します。

お菓子・お茶・タオルなどの消耗品が定番

香典返しには「使用してなくなるもの・消えもの」がふさわしいといわれています。これには「不幸をあとに残さない」という意味合いがあります。昔から選ばれる定番の品物には以下のようなものがあります。

お菓子、乾物、お茶などの食べ物

食べ物や飲み物には「悲しみを食い消す」といった意味が込められており、香典返しの定番です。
受け取った方がすぐに食べられるとは限りませんので、日持ちするものを選ぶようにしましょう。
焼き菓子やおかき、日本茶、海苔などが、香典返しとしてよく贈られます。
お菓子類は、小分けになっているものもあります。贈られた方が分け合うこともできるので、複数人からの連名で香典をいただいた場合の香典返しにも重宝します。

タオルや洗剤などの日用消耗品

タオルには「悲しみを拭い去る」や「悲しみを包み込む」、洗剤には「悲しみを洗い流す」という意味が込められているといわれています。
これらは日々使用する消耗品ですので、実用的な贈り物でもあります。石鹸や入浴剤なども、香典返しの品物としてふさわしいでしょう。

陶磁器や漆器

その昔、人は亡くなると土葬されていました。亡くなった後は土に還るという意味で、土で作られている陶磁器を香典返しに贈るようになったようです。
また、木などに漆を塗って作られている磁器には不幸を塗りつぶすという意味を込め、香典返しの品物として選ばれるようになったといわれています。消えものではない陶磁器や漆器も、このような理由から香典返しの品物としてよく利用されています。

近年ではカタログギフトを贈る方法も

近年人気を集めているのが、香典返しに特化したカタログギフトを贈る方法です。ライフスタイルの多様化により、日用品や食べ物にもこだわりをもつ方が増えてきました。
カタログギフトであれば、受け取る方の好みに合わせて好きなものを選んでもらえます。また、金額に応じたカタログが用意されているため、贈る側も品物選びに時間を取られることもありません。

香典返しに避けたほうがよい品物

香典返しに避けたほうがよい品物

香典返しには、避けたほうがよい品物もあります。昔からの決まりとして「四足生臭もの」や嗜好品、慶事を連想させるものはタブーとされています。肉や魚といった生ものをはじめ、酒類も嗜好品であることから敬遠されています。また、慶事に使われやすい昆布や鰹節も避けたほうがよいとされています。

ただし、近年では「故人が生前に好きだったもの」を香典返しとして贈る方もいらっしゃいます。
例えば、故人が好んでいた銘柄の酒を贈り、故人を偲んでもらうといった方法です。もし、慣例としてのタブーは気になるけれども、故人の好きだったものを贈りたいという気持ちがあれば、送り側の気持ちを書いた手紙を添えてみてはいかがでしょうか。
また「相手が選んだものであれば、嗜好品や生ものでもよい」という考え方もあり、カタログギフトにはお酒や肉・魚が入っているものもあります。

香典返しのお礼状のマナー

香典返しのお礼状のマナー

香典返しを郵送する時は、お礼状を添えます。お礼状では、香典や葬儀に参列頂いたことのお礼を丁寧に述べ、忌明け(四十九日法要が一般的)が滞りなく済んだことをご報告します。
また、ご挨拶に伺えないことをお詫びし、香典返しを郵送することをお伝えします。

なお、香典返しは元々ご挨拶に伺い、直接手渡しする物でした。もし、香典返しを手渡しできるのであれば、お礼状は不要です。渡す際にお礼の言葉を述べましょう。

香典返しのお礼状には特有のマナーがあります。地域性もありますが、一般的に気を付けるべき点は次の4つです。

●「、」や「。」の句読点を使わない
●「ますます」などの重ね言葉を使わない
●季節のあいさつを入れない
●便箋は1枚

宗教・宗派による香典返しの時期の違い

宗教・宗派による香典返しの時期の違い

香典返しは、忌明け後1ヶ月以内に贈るのが一般的です。忌明けは、宗教や宗派によって時期が異なりますので、注意しておきましょう。

仏式

仏式では「四十九日」の法要後に香典返しを贈るのが一般的です。滞りなく香典返しを贈るために、初七日から四十九日の間に準備を済ませておきましょう。
なお、故人が亡くなった時期によっては忌明けを「三十五日」とする場合もあります。これは、忌明けまでの期間が3ヶ月にまたがると縁起が悪いとされているためで、忌明けを繰り上げて行います。

仏教の宗派によって忌明け時期が異なるため、分かる方に確認して準備を行いましょう。

神式

神式の忌明けに相当するのは、五十日祭です。神式では、仏式の法要にあたるものを「霊祭」といい、命日を含めて10日ごとに霊祭が行われます。
亡くなった日を含めた50日目が「五十日祭」で、この日を忌明けとします。香典返しは、五十日祭から1ヶ月以内に贈るのが一般的です。

キリスト教

キリスト教では、香典や香典返しという習慣はありませんでした。
しかし、葬儀で「御花料」や「御霊前」を頂くことが通例となってきました。キリスト教式では、カトリックは30日後の「1ヶ月目の追悼ミサ」プロテスタントは1ヶ月後の「召天記念日」が忌明けにあたります。頂いた御花料やご霊前のお礼を贈る場合は、これらの後1ヶ月以内に贈るようにしましょう。

地域による香典返しの違い

地域による香典返しの違い

香典返しには地域によって差があります。ここでは特徴的な地域をご紹介します。

北海道や東北地方

北海道全域や東北地方の一部の香典返しは、当日返し・即日返しが基本です。香典のお礼というよりは、参列頂いたお礼という意図で「会葬御礼をお渡しして、香典返しはなし」という風習の地域もあるようです。

北関東の一部

北関東の一部では、香典の金額を決めて香典返しを受取らない地域もあります。これは、戦後復興期に起きた新生活運動の名残と言われています。新生活運動は、市民が貧しい生活をしていた時代、社会生活の合理化や衛生環境向上を目指した市民運動です。その中で冠婚葬祭の費用負担を抑えるために、香典は均一、香典返しを辞退するという方法になりました。

沖縄

沖縄の香典返しは当日返しが基本です。香典の相場が1,000円から5,000円が相場ということもあり、香典返しは一律の金額で500円から1,500円程度が一般的です。これは、不幸が重なるのを避けるため、高額な香典は包まないという習慣が元になっているといわれています。また、葬儀の参列者が数百人になることもあり、香典返しの負担軽減の意味もあるといわれています。

香典返しを断られた場合はどうする

地域の慣習や香典を包んだ方のお気持ちで、香典返しを辞退される場合があります。どちらの場合も、相手の意思に反して香典返しを贈ってしまうと、相手が困惑してしまう可能性があります。
香典返しを辞退された場合は、品物を贈ることは避け、お礼状をお送りするようにしましょう。

まとめ

香典返しの相場は、いただいた香典の半分の金額である「半返し」が基本です。
しかし、香典返しのマナーは地域や宗教・宗派によっても異なるため、分からない時はお寺や地域の方に聞いて準備を行いましょう。
大切なのは、香典を包んでくれた相手への感謝の気持ちと、故人を偲ぶ気持ちです。相手に失礼とならないようマナーに気をつけ、将来の円滑なお付き合いにつなげましょう。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ