NISA口座は変更できる!メリット・デメリットや手続き方法を解説

NISAの専用口座は、1人につき1口座しか開設できません。現在とは別の金融機関へNISA口座を変更することは可能ですが、所定の期間内に変更の手続きが必要です。ただし、NISA口座の変更にはデメリットがあります。この記事では、NISA口座の変更にともなうデメリットやメリット、金融機関を選ぶ際のポイントを解説します。

NISA口座は変更できる!メリット・デメリットや手続き方法を解説

現行制度は、2024年1月以降に制度内容が大きく改正される予定です。
本ページは2022年12月16日(金)「令和5年度の税制改正大綱」で公表された情報をもとに作成しております。今後変更となる可能性もございますので、予めご了承ください。

NISAは口座変更することができる!

NISAは口座変更することができる!

NISA口座を開設する金融機関は、1年に1回に限り変更が可能です。また、一般NISAとつみたてNISAの変更も1年に1回までとなります。
金融機関やNISA口座の種類を変更する場合は、変更したい年の前年10月1日から翌年の9月30日までに手続きを完了しなければなりません。

例えば、2024年分のNISA口座を変更する場合、2023年10月1日〜2024年9月30日の間に変更手続きをする必要があります。2024年を迎えたあとでも変更手続きはできますが、2024年1月1日以降にNISA口座で商品を取引していないことが条件となります。

変更前のNISA口座で保有していた投資信託や株式などは、新しいNISA口座には移管されません。変更後も、引き続き同じ金融機関の口座で保有することになり、非課税期間が終了するまで売却益(譲渡益)や配当金、分配金が非課税となります。

2024年1月から新NISAがスタート!口座の変更手続きは必要?

2024年1月に新NISAが開始される予定です。新NISAでは、非課税保有期間が無期限化されるだけでなく、制度が恒久化されるためいつでも口座が開設できるようになります。

非課税枠は、一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」と、つみたてNISAの役割を引き継ぐ「つみたて投資枠」の2種類となります。また、成長投資枠とつみたて投資枠は併用が可能です。

年間の非課税投資枠や非課税保有限度額は、現行の一般NISAやつみたてNISAよりも拡充されます。

一般NISAまたはつみたてNISAを利用している人は、同一の金融機関で自動的に新NISAの口座が設定される予定です。そのため、すでに現行NISAの口座を持っており、金融機関を変更しないのであれば、特別な手続きは必要ありません。

NISA口座を変更するデメリット

NISA口座を変更するデメリット

NISAの口座変更には、以下3つのデメリットがあると考えられます。

・変更前の保有商品を移管できない
・1月1日以降に取引をすると当年の変更はできない
・ロールオーバーできなくなる

1つずつみていきましょう。

変更前の保有商品を移管できない

変更前のNISA口座で買い付けをした金融商品は、変更後の新しいNISA口座へ移すことができません。

例えば、2017年に金融機関AのNISA口座で株式を買い付けたとしましょう。2020年に金融機関BにNISA口座を変更した場合、2017年に買い付けた株式は、引き続き金融機関AのNISA口座で保有することになります。
そのため、すでに商品の買い付けを行っているNISA口座から別のNISA口座へ変更手続きをすると、変更前のNISA口座と新しいNISA口座の管理が必要になります。商品を1つのNISA口座で管理したいと考えている方にとっては、不便といえるでしょう。

1月1日以降に取引をすると当年の変更はできない

NISA口座を変更したい年の1月1日以降に非課税枠を利用して株式や投資信託などを購入していると、その年分は金融機関の変更はできません。できるだけ早く変更したいと考えている方も、すでに商品を購入したのであれば、翌年まで待つ必要があります。

例えば、2024年1月以降にNISA口座で1度も商品を購入していないのであれば、9月30日までに手続きを済ませることで、2024年分のNISA口座の変更が可能です。
しかし、2024年の1月1日以降にNISA口座で購入をした場合、2025年分以降からの変更となります。また、変更手続きができるのは、2024年10月1日以降です。

ロールオーバーできなくなる

ロールオーバーとは、一般NISAの非課税期間である5年間が終了したあと、運用している資産を翌年の新たな非課税投資枠に移管できる仕組みのことです。ロールオーバーを利用すると、再度5年間にわたって非課税で運用できるため、非課税期間は最長10年となります。

商品を買い付けたあとに、NISA口座を開設する金融機関を変更すると、ロールオーバーはできません。

例えば、2016年に金融機関AのNISA口座で株式を買い付けたとしましょう。非課税期間が終わるのは、5年後の2021年です。2020年にNISA口座を金融機関Bに変更した場合、2016年に金融機関Aで新規投資した銘柄は、非課税期間が過ぎてもロールオーバーできません。

ロールオーバーが終了する前に売却しなかった場合、変更前の金融機関の課税口座(特定口座または一般口座)に移行されます。10年間にわたって非課税で運用しようと考えていた方は、金融機関を変更すべきか慎重に検討する必要があるでしょう。

ただし、新NISAの開始により2024年以降に5年間の非課税期間が終了する場合、ロールオーバーはできず、自動的に課税口座(特定口座または一般口座)に払い出されます。また非課税保有期間が終了したあと、新NISAにロールオーバーすることはできません。

なお、新NISAは非課税保有期間が無期限化されるため、ロールオーバーの仕組み自体がなくなります。そのため、新NISAの開始後は「金融機関を変更するとロールオーバーができなくなる」というデメリットは気にしなくて良いでしょう。

NISA口座を変更するメリット

NISA口座を変更するメリット

一方で、NISA口座の変更には、以下3つのメリットがあります。

・買える銘柄の種類を増やせることがある
・手数料を下げることも可能
・付帯サービスが広がる可能性がある

1つずつみていきましょう。

買える銘柄の種類が増やせることがある

金融機関によって、一般NISAの対象となる国内株式や外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)などのラインナップが異なります。

また、つみたてNISAの場合、2022年12月現在での対象商品数は216本ですが、金融機関はすべてを取り扱っているわけではありません。

【参考】金融庁:「つみたて NISA 対象の分類(2022年10月31日時点)」 詳しくはこちら

一般NISAやつみたてNISAの対象商品を、豊富に取り扱う金融機関に口座を変更することで、投資先の選択肢を増やせます。変更前の金融機関では、選べなかった商品に投資をすることも可能でしょう。

手数料を下げることも可能

NISA口座で株式や投資信託などを買い付けたり売却したりするときは、取引手数料がかかることがあります。

取引手数料の金額は金融機関ごとに異なっており、特定の商品の取引手数料を無料にしているところもあります。取引手数料を比較して変更先の金融機関を選ぶことで、取引時のコストを下げることも可能です。

つみたてNISAの場合、対象商品は販売手数料が0円であるノーロード型の投資信託ですが、商品の保有中は「信託報酬」がかかります。信託報酬が低い銘柄を取り扱う金融機関に口座を変更することで、運用中のコストを抑えることも可能でしょう。

付帯サービスが広がる可能性がある

金融機関によって、NISA口座を取引できるWebサイトやスマホアプリの使い勝手は異なります。NISAで商品を取引するのであれば、Webサイトやスマホアプリの使い勝手の良い金融機関に変更することで、取引時のストレスを軽減できるかもしれません。

また、商品を買い付けるときにクレジットカードで決済をするとポイントが貯まる金融機関があります。

貯まったポイントは、クレジットカードの利用金額の支払いに充てたり、商品やギフト券などと交換したりできるのが一般的です。金融機関によっては、商品の買い付けにポイントを利用することも可能です。

NISA口座を変更することで、より効率的にポイントを獲得したり、獲得したポイントを有効活用したりしやすくなるでしょう。

2024年1月の新NISA開始にあわせて口座変更を考えている方へ

現在とは別の金融機関で新NISAの口座を開設したい場合は、2023年のうちに変更手続きをするのも1つの方法です。

2023年の非課税枠を利用していないのであれば、9月30日までに手続きをすることで、年内にNISA口座を開設する金融機関を変更できます。

2023年の非課税枠をすでに利用した人は、10月1日まで口座の変更手続きができません。10月1日以降に口座変更手続きをすることで、2024年には変更先の金融機関で新NISAの口座が開設されるでしょう。

変更前の金融機関のNISA口座で取引した商品については、引き続き同じ金融機関で非課税機関が終了するまで運用できます。他の金融機関のNISA口座に移したり、新NISA口座にロールオーバーしたりすることはできません。

なお、新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は、併用が可能です。そのため、現行NISAとは異なり利用する非課税枠を変更するための手続きは不要となります。

NISAの口座を選ぶポイント

NISAの口座を選ぶポイント

変更先のNISA口座は、以下を基準に選ぶと良いでしょう。

・取り扱い商品
・手数料
・利便性

1つずつ解説します。

取り扱い商品

NISA口座の変更先は、自分自身が希望する商品に投資ができる金融機関を選ぶことが大切です。

一般NISAの口座を変更する場合、取り扱っている商品の種類や本数、外国株式の対象国数などを比較すると良いでしょう。

つみたてNISAの場合は、制度の対象である商品の取扱本数や商品ラインナップをもとに、変更先を選ぶのが有効です。

手数料

金融機関や取扱商品の手数料を比較するのも、NISA口座の変更先を選ぶうえでの重要なポイントです。

一般NISAの場合は、取引手数料の金額や無料になる条件を確認すると良いでしょう。例えば、一般NISAで国内株式に投資をしたいのであれば、国内株式の取引手数料が無料となる金融機関が選択肢となります。

投資信託で運用するのであれば、 取引手数料だけでなく保有している間に支払う信託報酬が低い商品を取り扱っているかどうかも確認しましょう。

長期間にわたって運用をする場合、信託報酬の金額は運用成果に大きく影響します。特に、つみたてNISAを利用するのであれば、金融機関が取り扱う商品の信託報酬は比較したうえで変更先を選ぶのが望ましいです。

利便性・サービス

ご自身にとってメリットがあるサービスを受けられるかどうかも、変更先のNISA口座を選ぶ大切なポイントです。

例えば、一般NISA口座の変更を検討しているのであれば、商品の取引がしやすいWebサイトやスマホアプリを提供しているかどうかで、変更先の金融機関を選ぶと良いでしょう。

つみたてNISAの場合、一般NISAほどは商品の取引をしないかもしれません。そこで、日頃から利用したり獲得したりするポイントとの相性が良い金融機関に変更するのも方法の1つです。

利用する機会の多いポイントが毎月の積立で付与される金融機関や、獲得することが多いポイントを積立に利用できる金融機関を探してみてはいかがでしょうか。

NISAの口座を変更する流れ

NISAの口座を変更する流れ

NISA 口座を変更する手順は、以下のとおりです。

1.現在口座を開設している金融機関に申請をする
2.口座開設者が金融機関から「非課税管理勘定廃止通知書」を受け取る
3.新しく口座を開設する金融機関に「非課税口座開設届出書」を提出する

NISA口座の変更が完了するまでの日数は金融機関によって異なりますが、一般的には1〜3週間ほどかかるため、余裕をもって準備をすることが大切です。

1.現在口座を開設している金融機関に申請をする

まずは、現在NISA口座を開設している金融機関に口座の変更を申し込みます。

変更を申し込むと金融機関から「金融商品取引業者等変更届書」が送られてくるため、記入して返送しましょう。

2.金融機関から「非課税管理勘定廃止通知書」を受け取る

金融商品取引業者変更届が金融機関に受理されると「勘定廃止通知書(非課税管理勘定廃止通知書)」または「非課税口座廃止通知書」が返送されます。

現在保有しているNISA口座に商品を保有しているのであれば、新しく口座を開設する金融機関に勘定廃止通知書を提出します。

非課税口座廃止通知書を変更先の金融機関に提出するのは、現在のNISA口座をまったく利用しなかった場合や口座に残高がない場合に、口座を廃止するときです。

3.新しく口座を開設する金融機関に「非課税口座開設届出書」を提出する

続いて、新しく NISA 口座を開設する金融機関に申し込みをし、非課税口座開設届出書を請求しましょう。

非課税口座開設届出書を記入し、変更前の金融機関から送付されてきた勘定廃止通知書または非課税口座廃止通知書を添付して提出します。

また「マイナンバーを確認できる個人番号記載書類」や「運転免許証をはじめとした本人確認書類」の写しも必要です。ただし、金融機関によって必要書類は異なるため、提出をする前によく確認しましょう。

書類を送付したあと、変更手続きが完了するまでは1〜2週間程度かかります。これは、税務署にNISA口座が二重に開設されていないかが審査されるためです。

まとめ

NISA口座は変更することが可能ですが、申請期限やデメリットを踏まえて検討する必要があります。NISA口座を変更した場合、変更前のNISA口座で買付をした商品は、引き続き同じ金融機関の口座で保有することになります。また、非課税期間が終了してもロールオーバーできません。1月1日以降に商品を取引していると、NISA口座の変更は翌年分以降となります。NISAの口座を変更する際は、これらのデメリットがあることをよく理解したうえで手続きを行いましょう。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ