NISA初心者必見!NISAのロールオーバー(非課税期間延長)とは?

NISAロールオーバーは、株式や投資信託から得られる利益が非課税になる5年間の期間を延長できる制度です。2024年から始まる新NISA制度ではロールオーバーができなくなりますが、現行のNISAのロールオーバーをするメリットやデメリットを理解して、賢く資産運用を行いましょう。

NISA初心者必見!NISAのロールオーバー(非課税期間延長)とは?

NISAのロールオーバーとは?

NISAのロールオーバーとは?

NISAは、NISA口座を利用して購入した金融商品の配当金や売却益等の利益が非課税になる制度です。資産運用で生じる利益には約20%の税金がかかるため、制度を有効に活用すると大幅な節税が可能です。
ただし、NISAの運用時の利益に税金がかからない非課税保有期間には制限が定められています。一定期間以上資産を持ち続けると、課税口座に移管され、移管されたあとの運用利益に対して税金が発生します。

NISAの「ロールオーバー」とは、手続きにより運用時の利益に税金がかからない非課税期間を延長させることです。各NISAの非課税期間が終了する前に手続きを取って更新ロールオーバーしなかった、もしくは売却しなかった場合には、自動的に課税口座へ移管されて移管されたあとに生じた利益に税金がかかることになります。

NISAには成年用の「一般NISA」「つみたてNISA」、未成年用の「ジュニアNISA」の3種類があります。
一般NISAは、非課税投資枠が毎年120万円、非課税保有期間が5年間です。つみたてNISAは40万円の枠に非課税期間が20年間、ジュニアNISAの場合は枠が80万円で非課税期間が5年間と定められています。また、一般NISAとジュニアNISAは非課税保有期間の5年間をロールオーバーによって延長することができますが、つみたてNISAはロールオーバーの制度が利用できません。

ロールオーバーの有無に関わらず、一般NISA口座の毎年の非課税枠は上限が120万円です。ロールオーバーした金額と翌年に新規購入する合計額が枠内に収まっていなければなりません。また、現行のNISA制度は2023年末で終了し、2024年から新しいNISA制度が始まります。ロールオーバーは、現行NISA終了までは開設した年分に対して1回だけできる更新方法です。2024年からはNISAの制度が変わるため、現行NISA制度で非課税枠での新規購入ができなくなり、ロールオーバーも不可能になります。

新NISAではロールオーバーがなくなる

新NISAではロールオーバーがなくなる

NISAは、2024年に新制度へと変わります。新NISAでは非課税期間が無期限になり、購入した銘柄で生じた利益にはいつまでも税金がかからず運用を続けられます。非課税保有期間の無期限化にともない、ロールオーバーという考え方自体がなくなります。そのため、1年ごとの新規非課税枠や期間、期間満了による口座の移行といった制限があるNISAよりも、制度や取り扱い方法が分かりやすくなりました。

2023年末までに購入したNISAは、新NISAとは非課税の枠・期間以外の面でも大きく異なることから、完全に違う資産として取り扱われます。現行のNISAで使用できる非課税枠は新NISAの枠とは別のものとして管理します。
現行NISAは新NISAと併用できる点も大きな特徴の1つです。2024年を過ぎてからでも、非課税の期間が残っている銘柄はこれまでと同じNISA口座で運用を続けられます。ただし、現行NISAを新制度の枠にロールオーバーすることはできないため、注意が必要です。

現行のNISAをロールオーバーするメリット

現行のNISAをロールオーバーするメリット

ロールオーバーにはメリットがあり、メリットを理解することでNISA制度の理解を深めていきましょう。一方、2023年までに非課税の期間が終了する現行NISAを持っている場合には、「課税口座に移行する」「売却する」「新NISAで新たに買い付けをする」のどれかを選択しなければなりません。

非課税のまま新規の投資枠で運用し続けることができる

現行NISAをロールオーバーする場合、翌年の非課税枠を使って税金のかからない状態を継続することが可能です。値上がりのため資産の評価額が120万円の非課税枠を越えていたとしても、越えている評価分を含めて全額をロールオーバーすることができます。
もしロールオーバーしなかった場合は、資産が課税口座に移管されるため、移管後に得た利益に税金がかかってしまいます。現行NISAで使用中の非課税枠が、新NISAの枠には影響しない点も、メリットの1つです。2023年までロールオーバーした場合、次の5年間が終わるまで新NISAにプラスして現行NISAの非課税枠も利用可能です。これまでの非課税枠を延長し活用することで、より多くの銘柄を運用し、税金を抑えながら効率よく資産形成ができるでしょう。

落ち着いて売却の判断ができる

資産をロールオーバーした場合には、税金がかからないまま運用できる期間を延ばせます。NISAの非課税期間終了間際になっても評価額が購入時の価格と変わらない、あるいは下回っていたりするケースでは、ロールオーバーをすることで売却のタイミングを検討する猶予が生まれます。

反対に、株価が値上がりを続けていて今後も値上がりが見込まれるケースでも、売却の判断に迷う場合があります。そうした場合も、ロールオーバーで非課税期間を延長することで、売却のタイミングを見極めることができます。延長された5年の非課税期間を有効に使い、適切なタイミングで資産を売却すれば、利益にかかる税金を抑えて、より高額の運用益を得られるでしょう。
また、購入時より価格が常に上回っている優良銘柄で、高配当の銘柄を延長して運用すれば、売却利益以外にもその後5年間は非課税で配当金を受け取れるメリットもあります。

現行NISAをロールオーバーするデメリット

現行NISAをロールオーバーするデメリット

NISAロールオーバーは、メリットの多い方法ですが、実際に行うと新規の非課税枠に影響する等のデメリットが生じる場合もあります。

翌年の新規の投資枠に影響がある

ロールオーバーをする際には、新規で銘柄を購入する場合と同様に非課税枠を利用します。一般NISAの非課税枠は1年間で最大120万円のため、120万円の枠内までしか投資ができません。
例えば50万円の所有銘柄をロールオーバーするケースでは、ロールオーバーで120万円の枠のうち50万円を使います。すると、新しく投資できる金額は70万円に減少します。ロールオーバーする予定の銘柄が値上がりして120万円以上の評価額のケースでは、全額をロールオーバーきるものの、非課税枠はすべて利用されます。ロールオーバーで非課税枠が0円になった場合、その年はNISA口座で新しく投資を始めることができません。

値下がりした場合に税金面のメリットがない

保有資産が購入時よりも値下がりした際には、資産の売却時に損失が生じるため利益は発生しません。税金は売却益に対してかかるため、値下がりした銘柄を売却しても税金がもともとかかりませんので、NISA口座で運用しなくても良かったということにもなります。
ただし、課税口座に移行した銘柄は、移行時の評価額が購入金額に設定されるため、移行時から売るまでに銘柄の評価額が上がると、生じた利益に対して税金が生じることになります。損失が出ている状態ですぐに売却せずにしばらく運用する場合には、ロールオーバーして5年間で値上がりを狙うという選択肢もあります。
NISA口座の場合、売却時に損失が出たとしても、ほかの課税口座で生じた利益と損益通算をすることができません。

ロールオーバーするための条件

ロールオーバーするための条件

なお、ロールオーバーできるのは、対象の銘柄購入時の金融機関で翌年の特定NISA口座を開設済みの場合です。運用途中で金融機関を変更したケースではロールオーバーできなくなるため、注意が必要です。
例えば、当初A証券会社でNISA口座を開設して途中でB証券会社に変更したケースでは、A証券会社で購入していた分をB証券会社にでロールオーバーすることができません。さらに、非課税期間が終わる前にロールオーバーの手続きを行うことが、必要とされる条件です。

ロールオーバーに利用できる非課税枠は、新規購入のケースと同じ年間120万円です。たとえ所有している銘柄が値上がりして(※)評価額が120万円を超えていても、全額のロールオーバーが可能です。保有資産全額ではなく一部だけのロールオーバーも選べます。
ただし、ロールオーバーできるのは一般NISAのみで、つみたてNISAではロールオーバーができません。つみたてNISAには20年の非課税期間があり、それを過ぎた場合は、利益に対して課税されるようになります。さらに、両方のNISAを同じ年度で併用ができないため、一般NISAを翌年にロールオーバーした際には、非課税枠が残っていてもつみたてNISAができなくなる点に注意が必要です。

※その年の最終営業日の時価で翌年の非課税枠に移行されます。

ロールオーバーの手続き方法

ロールオーバーの手続き方法

NISAの非課税保有期間の満了が近くなると、多くの場合金融機関から期間満了のお知らせが届きます。申し込み期日を過ぎると手続きの受付が終了してしまうため、ロールオーバーを希望する場合は、早めに手続きを終わらせなければなりません。
手続きは金融機関ごとに異なるため、詳しい申し込み方法は取引している金融機関に確認する必要があります。基本的には、口座が開設してあるかを確認して、移管依頼書を提出する方法で手続きが可能です。なかには、すべてインターネット上で申し込みを完了できるところもあります。
金融機関により提出期限が異なるため、期限は必ず確認して、遅れずに手続きを済ませることが大切です。

手続き手順

1.書類を請求する。
NISA口座を開設している金融機関にインターネットや電話等で、「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を依頼して書類を手に入れます。(9月頃)

2.翌年のNISA口座開設を確認する。
金融機関の公式サイトで、予定しているNISA口座が開設されているかどうか確認します。(11月頃まで)

3.書類に必要事項を記入して郵送等で提出する。
「非課税口座内上場株式等移管依頼書」に記入をして、必要書類を添付し金融機関に提出します。

現行NISAから新NISAへはロールオーバーできない!

現行NISAから新NISAへはロールオーバーできない!

2023年5月時点の金融庁の発表によると、現行NISAから新NISAへのロールオーバーはできないとされています。現行NISAと新NISAは区別されているため、非課税枠はすっかり分離され、基本的には異なる制度として利用可能です。
新NISAへの移行ができないため、現行NISAは2023年末以降に非課税保有期間が満了すると、課税口座へ自動的に移行されてしまいます。
2018年にNISA口座で購入したものに対しては、2022年に非課税期間が終了するため、2023年にロールオーバーすることができますが、2019年に購入したものは2023年に非課税期間が終了するため、2024年には現行のNISA口座を開設することができなくなるためにロールオーバーすることができなくなります。

【参考】金融庁「新しいNISA」詳しくはこちら

まとめ

NISAの「ロールオーバー」とは、一般NISAやジュニアNISAで設けられている非課税期間を延長させることです。2024年から新NISA制度が始まり、非課税期間も無期限となったことで、現行NISAとは別の制度なりました。現行NISAは非課税期間5年終了後にロールオーバーすることで、さらに5年間の非課税期間を使うことができましたが、2023年に非課税期間が終了するものや購入したものについては、5年間の非課税期間で終了することになり、ロールオーバーが出来なくなります。

現行のNISAをロールオーバーして、新NISAとは別枠で非課税枠を利用できるというメリットがあります。ロールオーバーのデメリットや手続き方法なども確認した上で資産運用を進めていきましょう。

ご留意事項
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