非嫡出子(婚外子)がいる場合の相続はどうなる?

非嫡出子(婚外子)がいる場合、もしもの時の相続はどのようになるのでしょうか。非嫡出子は「認知」が大きく関わっており、法定相続分は基本的には嫡出子と同じです。本記事では相続に必要な条件や相続分について、またトラブルを避けるためにできることについて解説していきます。

非嫡出子(婚外子)がいる場合の相続はどうなる?

嫡出子・非嫡出子とは?

嫡出子・非嫡出子とは?

「嫡出子」は、父と母が法律上の婚姻関係にある状態で生まれた子のことを指します。また、嫡出推定に関しては、民法772条に明記されており、婚姻から200日経過後に生まれた、または婚姻解消後300日以内に生まれた場合も嫡出子として推定されます。これに対して、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子を「非嫡出子」と呼びます。

以前は、戸籍や住民票の続柄の記載について嫡出子と非嫡出子では「長男」と「男」のように異なっていましたが、現在は子供は平等という考え方などから法律の改正などもあり、差別化することはなくなりました。ちなみに、出生時に婚姻関係がなくても、認知や婚姻等の事情により非嫡出子から嫡出子へと変わることができます。これを「準正」と言います。

【参考】e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」詳しくはこちら

非嫡出子が相続するために必要なこと

非嫡出子が相続するために必要なこと

例えば子から見て父が亡くなったケースで考えてみると、まず必ず法定相続人となるのが母(父から見ると妻)です。その次に血族の相続人第1順位となるのが子です。嫡出子であればそのまま相続人となりますが、非嫡出子の場合は父と子の間に法的な親子関係が生じていませんので、亡くなった父が子供を自分の子だと認める「認知」をしていなければ、非嫡出子は父の相続の相続人になることができません。

一方、母が亡くなった場合は話が変わってきます。出産したのは母本人であり、母と子の間には法的な親子関係が生じているため、非嫡出子であっても無条件に母の相続に関して権利を有します。

このように、非嫡出子が相続するためには、母の場合であれば条件はありませんが、父の場合は認知されていたのかどうかということが大きなポイントとなるのです。

非嫡出子の場合の相続分は?

非嫡出子の場合の相続分は?

かつて、民法では嫡出子と非嫡出子の相続割合が異なっており、非嫡出子は「嫡出子の2分の1」と定められていました。しかし、子供にとっては選択することのできない父母との関係において、区別され、不利益を生じさせてはならないという判断から、2013年9月4日に最高裁判所が不平等であり違憲であると判断。同年12月に民法改正が行われ、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じとなりました。

相続で非嫡出子とのトラブルを避ける方法

相続で非嫡出子とのトラブルを避ける方法

親が亡くなった後に、「実は非嫡出子がいた」と発覚するケースも少なくありません。存在していた事実を知らない場合はもちろんのこと、非嫡出子がいたことを知っていても接点がないからと放置していては後に大きな相続問題に発展してしまうおそれがあります。

ここでは非嫡出子に相続を望む際、トラブルを未然に防ぎ、滞りなく相続を進めるために必要なポイントについてご紹介します。

生前に認知する

父と母に婚姻関係がないまま生まれた子供には、父親との法律上の親子関係が存在しません。少し先述もしましたが、男性側が「自分の子だ」と認知すれば、相続関係や扶養義務を発生させることができます。結婚していない女性との子や、配偶者以外との間にできた子供に対して認知するケースがあります。

認知には2つあり、1つは「任意認知」です。胎児の時は母親の同意があれば男性側からの申し出でて認知(「胎児認知」といいます。)できます。出産した後は、父親の意思のみで認知することが可能です。「認知届」を役所に提出する場合と、遺言書に認知する意思を記載するパターンがあります。

他方は「強制認知」です。非嫡出子などから裁判等で訴え、強制的に法律上の父子関係を作るもので、相続の権利がない、養育費を工面してくれないなど不利益を被っている場合に訴えを起こすことができるものです。この強制認知に関わる申し立ては、父親が生きている時か、亡くなって3年以内に起こさなければなりません。

言い換えると、父親に配偶者以外の子供がいて、認知しないままこの世を去ったとしても、非嫡出子側から訴えがあれば認知され、それぞれの子供が相続する金額が変わる可能性もあるのです。

生前に遺言書を作成する

生前に遺言書を作成する

相続人間の争いや嫡出子と非嫡出子間のトラブルを避けるには、被相続人が生きている間に遺言書を作成しておくことも有効な手段です。話し合いを重ね、それぞれの相続分がどの程度であるかを、遺言書ではっきりさせておけば、亡くなった後に揉める可能性が低くなります。

なお、遺言書は書式が決まっており、必要事項がきちんと記載されていないと無効とされることがあります。そのため、遺言書はきちんと法的効力が生じる形式で作成しなければなりません。必要に応じて弁護士や司法書士などの相続手続きの専門家に相談し、遺言書に書くべき内容や、相続する土地や預貯金などに漏れがないかを調べておくことも重要です。

相続人を確定しておく

被相続人と配偶者以外との間に子供がいる場合などには、被相続人の配偶者などの家族も非嫡出子の存在を把握していないことがあります。相続の問題が発生した際に初めて家族が現実を知ることとなれば衝撃が大きく、いっそう争いの種となる可能性があります。

そのため、非嫡出子も含めた相続人を調査し、相続における相続人を確定しておいた方が良いでしょう。弁護士等を通じて遺産分割協議の内容をあらかじめ合意しておくなど、少しでも円滑に相続が進むように準備や整理をしておくことが大切です。相続人を明らかにした上で前述のように遺言書を作成しておくのも良いでしょう。

まとめ

まとめ

非嫡出子は、父と母が婚姻関係にない状態で生まれた子供を指す言葉です。法律が改正されたことで、戸籍や住民票での記載が同様になる、相続分が嫡出子と同じ割合になるなど嫡出子と同等に扱われるようになりました。非嫡出子が父親の遺産を相続できるかには認知が関わります。生前に認知されている場合だけでなく、父の死後3年以内であれば強制認知のための法的手続を行うことができます。

非嫡出子によって相続トラブルが起きないためには、生前に認知しておくことや、どれだけ相続させるかをはっきり遺言書に明記しておくことが重要です。また、嫡出子が疎遠だから相続の場に呼ばなかった、相続させる分を渡さなかったなど、後に非嫡出子との間で争わずに済むように、遅くとも遺産分割協議時までには相続人を明確化しておくことも忘れないようにしましょう。

嫡出子も認知した非嫡出子も、子供から見れば同じ親であり、相続もまた同等の権利があります。相続に関して紛争に発展しないためにも、双方が正しく相続する筋道を立ててあげるようにしましょう。

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