天災は不可避、でも備えることはできる!

新型コロナウイルスと共に日本列島に猛威を振るったのが、台風や豪雨などの自然災害です。軽度の床下浸水程度なら短期間でリカバリーできるかもしれませんが、家が水浸しになったり、土石流で流されたりすると、元の暮らしに戻るのは容易ではありません。この記事では災害に備える保険についてご紹介していきます。

天災は不可避、でも備えることはできる!

突然の災害に備えるための保険

2021年の夏、新型コロナウイルスと共に日本列島に猛威を振るったのが、台風や豪雨などの自然災害です。読者の中にも、ご自身や親族・友人・知人などが被災した方がいらっしゃるかもしれません。そうした方々には、衷心より一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

すっかり有名になった「ゲリラ豪雨」は、突発的かつ局地的に発生することから予測が難しいとされてきましたが、最近は人工知能(AI)技術などを用いた予報解析モデルが実用化され、事前の注意喚起が可能になっているようです。とはいえ、注意喚起はあくまで注意喚起であり、被害そのものを防げるわけではありません。

軽度の床下浸水程度なら短期間でリカバリーできるかもしれませんが、家が水浸しになったり、土石流で流されたりすると、元の暮らしに戻るのは容易ではありません。大型災害時には国や自治体から避難所や仮設住宅といった一時避難の場や、生活物資、生活の立て直しを支援する「被災者生活再建支援金」(最大300万円)などが提供されますが、自前でもいくばくかの備えがあれば、いざという時にも将来に対する不安が少しは和らぐのではないでしょうか。
ということで、今回は災害に備える保険についてご紹介したいと思います。

火災保険の補償範囲とは?

以前、知人と災害補償の話をした時に「“台風保険”にはどうやって加入すればいいの?」と尋ねられたことがあります。そこで、既にご存じの方が多いとは思いますが念のために申し上げると、台風被害や水害を補償するのは通常、「火災保険」や「住宅総合保険」と呼ばれる保険です。他にも「火災共済」などがあります。

火災保険の補償範囲は、失火や延焼など火事の損害の他にも、落雷での損害、ガス漏れによる破裂や爆発の損害、台風や大雪、雹やあられによる損害など多岐に渡ります。冒頭で言及した台風やゲリラ豪雨による洪水や土砂崩れなどの被害は「水災」という分野で補償されますが、火災保険によっては水災補償が“標準装備”になっておらず、必要な場合は「水災補償特約」といったオプションの形で付加することになります。かつて主流だった住宅総合保険の場合は、水災補償は損害額と保険金額のいずれか低い方の70%が支払い限度額となっています。最近は火災保険の補償内容や契約条項の多様化が進んでいて、また、損害保険会社によって保険金額が異なることもあるようです。

生命保険はわざわざ保険ショップまで出向いて相談するのに、火災保険については「賃貸や住宅購入の契約時に勧められたものに加入してそのまま放置していたら、どうやら自動更新されているらしい」といった無関心層が少なくないようです。

しかし、前述したように火災保険は保険によって補償内容が異なるため、加入の際は資料を複数取り寄せて支払い要件をしっかり確認する必要があります。その上で、例えばハザードマップ(災害予測地図)で水害リスクが低い地域でマンションの2階以上に住んでいるなら水災補償は外すなど、付けるべき補償を吟味することが大切です。人によっては、建物だけでなく家財も補償の対象にした方がいいかもしれません。

待ち受ける保険料改正。その前にできること

気を付けたいのが、火災保険は2019年10月、2021年1月と保険料の“値上げ”が続いたにもかかわらず、2022年にもさらなる値上げが待ち受けていること。2021年6月、損害保険料率算出機構が火災保険の参考純率を全国平均で10.9%引き上げることを発表しているからです。ほとんどの損害保険会社はこの参考純率をベースに、諸経費などを上乗せして保険料を決めており、“一斉値上げ”となる可能性が濃厚です。
度重なる値上げの背景には、近年自然災害頻発で保険金の支払いが増加し、保険財政を圧迫していることがあります。特に2018年は関西圏、2019年は首都圏を大型台風が直撃し、保険金の支払い負担が急増したことが重石となっているようです。
ちなみに、次は値上げだけでなく、加入が可能な最長期間も現行10年から半分の5年に縮小される見通しです。

保険料を安く抑えるという観点からは、改正前に次のような対策をしておくといいかもしれません。まず、未加入の人がこれから新たに加入するのであれば、2021年中、遅くても2022年の春頃までには手続きを済ませること。さらに、間もなく火災保険の切り替え時期を迎える世帯で、しばらく転居の予定がないのであれば、最長の期間10年で契約してしまうことです。
ちなみに、損害保険料率算出機構では火災保険の水災補償で地域別の料率の設定を検討している模様です。金融庁の有識者会議で、地域の分け方や新たなリスクの評価法などの基準づくりを行っています。これは例えば、ハザードマップで「浸水想定区域」となる大型河川周辺に自宅があると水害のリスクが高いと見なされ保険料が高くなるといった仕組みのことです。

現在はネット損保の1社が地域の水害リスクに応じて保険料が変わる火災保険を扱っていますが、先の流れから大手損害保険会社も追随する可能性が高いと思われます。水害リスクの低いエリアに居住する人なら、将来的には、こうした保険への加入を検討すべきかもしれません。

ご留意事項
  • 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
  • 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
  • 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
  • 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

RANKING

この記事もおすすめ