雑所得にも控除が適用!雑所得の種類や所得税の計算方法を理解しよう

所得にはいくつかの種類があり、そのうちの1つである「雑所得」は3種類に分類されます。この記事では、雑所得の概要をはじめ、所得税を計算する際の必要経費や控除、確定申告における注意点などについて解説します。雑所得の仕組みを理解して、所得税の負担を減らしたり、正しく確定申告をしたりしましょう。

雑所得にも控除が適用!雑所得の種類や所得税の計算方法を理解しよう

雑所得とは?

雑所得とは?

収入金額から必要経費を差し引いたものを「所得」といいますが、所得税法では、その収入がどのように発生したかなどによって、所得を10種類に分類しています。
雑所得は、この10種類の所得のうちの1つで、ほかの9種類のいずれにも該当しない所得をいいます。

所得の10種類一覧
1.給与所得
2.利子所得
3.配当所得
4.不動産所得
5.事業所得
6.退職所得
7.山林所得
8.譲渡所得
9.一時所得
10.雑所得

雑所得の種類と条件

雑所得の種類と条件

雑所得は、3つの種類があります。「公的年金などの雑所得」「業務で得た雑所得」「その他の雑所得」の3つで、それぞれの条件を解説します。

公的年金などの雑所得

「公的年金などの雑所得」に該当するのは、国の年金制度に基づいて支給される年金です。国民年金や厚生年金といった公的年金のほか、確定給付企業年金、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの私的年金も公的年金などの雑所得に含まれます。

なお、生命保険(個人年金保険など)から受け取る年金(満期保険金)は、公的年金などの雑所得には含まれません。満期保険金を一括で受け取る場合は「一時所得」に含まれ、年金形式で受け取る場合は後述する「その他の雑所得」に該当します。

後ほど詳しく説明しますが「公的年金などの雑所得」の金額は、ほかの2つの雑所得(「業務で得た雑所得」「その他の雑所得」)に比べ、税金が軽くなるような計算方法で算出されます。

副業などの業務で得た雑所得

近年は副業を認める会社も増えてきて、会社員としての収入のほかに、ライティングやフードデリバリーなどで副収入を得ている人もいます。こうした本業ではなく副業による収入は「業務で得た雑所得」に該当することが多いです。

具体的な業務で得た雑所得には、次のようなものがあります。

・原稿料や講演料、印税
・アフィリエイト収入
・フリマアプリやネットショップでの売上げ
・シェアリングエコノミー(民泊、カーシェア)による収入

ただし、事業として成立するほどの規模で副業を手掛けている場合、その副業による収入は雑所得ではなく「事業所得」として認められることもあります。事業所得として認められたほうが税制上有利なのですが、副業による収入が事業所得として認められるにはかなりハードルが高く、会社員が隙間時間に手掛けているような場合は、雑所得となるのが一般的です。

また、副業としてどこかの会社でアルバイトをしている場合、その収入(給与)は、副業による収入であっても雑所得ではなく「給与所得」になります。

その他の雑所得となる場合

「その他の雑所得」とは、上記の「公的年金などの雑所得」と「業務で得た雑所得」以外の雑所得です。生命保険(個人年金保険など)の満期保険金(年金として受取る場合)や、FX、暗号資産(仮想通貨)、先物取引で得た利益などが該当します。

所得税がかかる雑所得額の計算方法

所得税がかかる雑所得額の計算方法

給与所得や事業所得などほかの9種類の所得と同様に、雑所得にも所得税がかかります。所得税は収入全体にかかるのではなく「収入金額-必要経費」で計算された「所得」に対してかかることにご注意ください。
雑所得の場合も、収入金額から必要経費を差し引くことができます。

雑所得の金額の計算方法は、①「公的年金などの雑所得」と②「業務で得た雑所得」「その他の雑所得」で異なります。

①公的年金などの雑所得の金額=公的年金などの収入金額 ー 公的年金等控除額
②業務で得た雑所得・その他の雑所得の金額=公的年金など以外の総収入金額 ー 必要経費

なお、公的年金等控除額とは、年金受給者にとって必要経費に相当するもので、年金受給者の年齢や年金の収入金額などに応じて定められています。具体的には、国税庁の「公的年金等に係る雑所得の速算表」に基づいて計算されます。

【参考】国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」詳しくはこちら

雑所得の所得税を減らせる必要経費の計上

雑所得の所得税を減らせる必要経費の計上

当然ながら、雑所得の金額が大きければ大きいほど、所得税の課税額は大きくなるため、納税の負担が増します。
所得税は収入全体にかかるのではなく「収入金額-必要経費」で計算された「所得」に対してかかるため「必要経費」をしっかりと計上すれば、課税される所得金額を減らすことができます。

なるべく納税額を減らすためには、経費を漏れなくきちんと計上することが重要となります。
国税庁によると、雑所得の金額を計算する上で必要経費に算入できる金額は、次の2つです。

1. 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
2. その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

【参考】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」詳しくはこちら

簡単にいえば、必要経費とは、雑所得を得るために直接的または間接的にかかった費用のことです。
例えば、副業として自宅でアクセサリーを作ってフリマアプリに出品し、雑所得にかかる収入を得た場合、以下のような費用が必要経費として認められます。

・仕入金額(売上原価)
アクセサリーを作るために材料を仕入れた場合、今期の売上げのために使用した分は「売上原価」として計上できます。

・消耗品費
アクセサリーを作るために必要な道具や機材などで10万円未満のものは「消耗品費」として計上できます。また、フリマアプリに出品するために購入したパソコンや商品の撮影用に購入したカメラも、10万円未満でしたら「消耗品費」として計上できます。
なお、10万円以上の機材やパソコンは「固定資産」となり、複数年に分けて「減価償却費」として計上することになります。

・通信費
アクセサリー販売のためにフリマアプリを利用した際のインターネットの接続料金や、仕入れ先、顧客とのやり取りで発生した電話代は「通信費」として計上できます。

・荷造運賃
商品を発送するのにかかる送料や梱包資材は「荷造運賃」として計上できます。

・接待交際費
仕入れ先との打ち合わせや接待で使った飲食代や茶菓子代は「接待交際費」として計上できます。

・旅費交通費
仕入れ先や打ち合わせ先に向かう時の交通費は「旅費交通費」として計上できます。

・地代家賃
自宅でアクセサリーを作って販売していることから、自宅の家賃の一部を「地代家賃」として計上できます。ただし、こうしたプライベートと共用している費用は「家事関連費」と呼ばれ、按分計算して副業で使った分のみが必要経費として認められます。

・水道光熱費
自宅の電気代、水道代の一部も、上記の「地代家賃」と同じく、副業で使った分のみ「水道光熱費」として計上できます。

なお、雑所得においても、前々年分の業務に係る収入金額が300万円を超える場合は、経費として支払った支出の領収書などの保存義務(5年間)がありますのでご注意ください。

【参考】国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」詳しくはこちら

雑所得にかかる所得税率と控除額

雑所得にかかる所得税率と控除額

所得の課税方法には2種類あり、ほかの所得と合算されて課税される「総合課税」と、個別に課税される「分離課税」です。
雑所得は「総合課税」の対象※であるため、雑所得のみを対象とした税率は設けられていません。雑所得は、ほかの所得と合算した課税所得金額に税率を乗じ、一定の控除額を差し引いて所得税額が算出されることになります。

※雑所得の中でも一定の先物取引による所得については、ほかの所得と区分して、所得税15%の税率による分離課税となります。

雑所得を含めた所得税の税率と控除額は下表のとおりです。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 194万9,000円まで 5% 0円
195万円 から 329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円 から 694万9000円まで 20% 42万7,500円
695万円 から 899万9000円まで 23% 63万6,000円
900万円 から 1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円 から 3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円 以上 45% 479万6,000円

【参考】国税庁「No.2260 所得税の税率」詳しくはこちら

雑所得の所得税を減らせる控除

雑所得の所得税を減らせる控除

前述のとおり、雑所得はほかの所得と合算されて所得税額が計算されます。具体的には、給与所得などのほかの所得の金額と合計して総所得金額を求め、以下の手順で納付する所得税額を計算します。

①総所得金額-所得控除=課税所得金額
②課税所得金額×所得税率=所得税額
③所得税額-税額控除=実際に納付する所得税額

上記の計算式から分かるとおり、雑所得を含めた所得税額は「所得控除」と「税額控除」を差し引いて算出されます。したがって、この2つの控除の額が大きいほど、納めるべき所得税の額は小さくなります。

所得控除は、課税対象となる所得金額を減らすことができるもので、配偶者控除や生命保険料控除、医療費控除などがあります。
一方の税額控除は、税率を乗じて計算された所得税額から直接差し引くことができるので、所得税そのものを減らすことが可能です。税額控除には、住宅ローン控除、配当控除などがあります。

雑所得が20万円超なら確定申告が必要!

雑所得が20万円超なら確定申告が必要!

原則として、雑所得がある場合は確定申告が必要になります。ただし、会社員などの給与所得者の場合は、勤務先で年末調整を受けることが一般的なので、雑所得があっても年間20万円以下であれば確定申告は不要です。
逆にいうと、会社員で年末調整を受けていても、雑所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。

「年間20万円」とは、収入金額から必要経費を差し引いた「所得」金額であることにご注意ください。
例えば、自分で作ったアクセサリーをフリマアプリで販売し、25万円の売上げがあったとしても、材料費などで10万円の経費がかかった場合は、25万円(収入)から10万円(経費)を差し引いた15万円が所得となり、確定申告は不要です。

給与所得がある人の雑所得の確定申告

給与所得があり雑所得が20万円以下でも確定申告が必要なケースもあります。
例えば、次のような人は確定申告が必要になります。

・給与収入が2,000万円を超える人
給与収入が2,000万円を超えると年末調整の対象外になりますので、確定申告が必要になります。

・雑所得以外に一時所得などの所得があり、その合計額が20万円を超える人
給与所得者で確定申告の必要がないのは、正確にいうと「給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下の場合」です。
そのため、例えば雑所得が15万円であっても、生命保険の一時金を受け取り(一時所得)、その課税対象の金額が10万円という場合は、給与以外の所得の合計額が25万円となり、確定申告が必要になります。

・医療費控除や住宅ローン控除(初年度)を受ける予定の人
医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などの年末調整の対象とならない控除を受ける場合は、確定申告が必要になります。

・確定申告で税金の還付を受けたい人
雑所得にかかる収入が源泉徴収の対象となっている時は、確定申告をすることで税金が還付される場合があります。例えば、原稿料・講演料などは、原則として源泉徴収されています。

なお、上記のケースに当てはまるなどして確定申告をする場合は、雑所得が20万円以下であっても、雑所得の申告もしなくてはなりません。
確定申告には、青色申告と白色申告がありますが、青色申告にすると最大65万円の特別控除を受けることができます。簿記の基礎知識に自信がなくても、勘定科目の入力するだけで自動で仕訳を行ってくれる会計ソフトもあります。

【参考】国税庁「確定申告が必要な方」詳しくはこちら

年金受給者は確定申告不要制度がある

公的年金も雑所得の1つですので、原則として確定申告が必要です。
ただし、年金受給者の負担を減らすため、一定の要件を満たす場合には確定申告が不要になる「確定申告不要制度」があります。

確定申告不要制度の対象者は、公的年金の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金以外の所得が20万円以下の人です。なお、この条件を満たすため確定申告が不要である人でも、生命保険料控除や医療費控除などの各種控除を利用する場合は、確定申告をする必要があります。

【参考】国税庁「公的年金等を受給されている方へ」詳しくはこちら

雑所得が20万円以下でも住民税の申告は必要

給与所得者で雑所得が20万円以下の場合に申告免除が認められているのは所得税だけで、住民税については認められていません。つまり、雑所得が20万円以下であっても、住民税の申告は必要です。

住民税は、年末調整や所得税の確定申告の情報をもとに税額が算出され、翌年に徴収される仕組みになっています。そのため、雑所得が20万円以下で確定申告をしないと、住民税を正確に計算することができなくなってしまいます。
したがって、雑所得が20万円以下で確定申告をしない場合であっても、住民税の申告は必要です。

まとめ

雑所得は、公的年金や副業による収入、生命保険から年金方式で受け取る満期保険金など、意外と身近な収入です。
最近はインターネット上で業務を受注するクラウドソーシングも盛んで、ライティングやWebデザインなどをクラウドソーシングして副収入を得ている人もいますが、こうした仕事による収入は多くの場合、雑所得になります。

雑所得が増えれば所得税の負担が増えますが、控除制度や経費の計上によって税金の負担を減らすことができます。
雑所得の金額が20万円を超えると会社員でも確定申告が必要になりますので、雑所得の計算方法や確定申告における注意点をしっかりと理解しておきましょう。

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