【最新版】在職老齢年金制度とは?働きながら年金をもらう時の注意点

在職老齢年金制度は、会社員として働きながら年金を受け取ることができる制度ですが、利用することで年金額が減ったり、支給停止になる可能性があります。この記事では、在職老齢年金制度の具体的な年金額を計算する方法や改正法の内容、年金が減額されないためのポイントをご紹介します。

【最新版】在職老齢年金制度とは?働きながら年金をもらう時の注意点

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、60歳以上で会社員として厚生年金に加入しながら勤務している方が受け取る老齢厚生年金のことです。
年金額と給与額の合計が48万円を基準に年金が減額、場合によっては全額支給停止となります。
この年金額の見直しには、退職時改定制度と在職定時改定制度があります。(詳細は後述)

2022年3月31日(2021年度)までは、60歳代前半と65歳以降とでは計算の仕組みが異なりましたが、2022年4月1日からはどちらも同じ仕組みになりました。

在職老齢年金が支給停止となる条件と期間

在職老齢年金が支給停止となる条件と期間

在職老齢年金が支給停止されるのは「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が48万円を超える場合です。48万円を超えている期間は、年金が減額(または支給停止)されます。

基本月額
基本月額とは「1ヶ月あたり老齢厚生年金をいくらもらっているか」を指す額です。
老齢厚生年金(年額)を12で割った額が基本月額となります。あくまで老齢厚生年金がこの制度の対象となることから、老齢基礎年金や加給年金は含まれません。

総報酬月額相当額
総報酬月額相当額とは「1ヶ月あたり会社の給与をいくらもらっているか」を指す額です。給与(標準報酬月額)と直近1年間の賞与を12で割った額(標準賞与額)の合計額をいいます。

【参考】日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」詳しくはこちら

在職定時改定制度

在職定時改定制度とは、厚生年金保険に加入している65歳以上の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に見直す制度で、2022年4月から導入されました。
従来、老齢年金の受給者が厚生年金の被保険者となった場合は、退職時もしくは70歳到達時のみに年金額の見直しを行っていました。

この制度によって、65歳以降に支払った保険料が早期に年金額に反映されることになり、受け取る年金額が毎年増えることになりました。

退職時改定制度

退職時改定制度とは、厚生年金保険に加入している70歳未満の老齢厚生年金受給者が、退職して1ヶ月を経過した時、退職した翌月分から支給される年金額が見直しされる制度です。
また、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給している70歳未満の方が、70歳に到達した時は、70歳に到達した翌月分の年金額から見直されます。

在職老齢年金の支給額の早見表

在職老齢年金の支給額の早見表は以下のとおりです。

在職老齢年金の支給額の早見表

【参考】公益財団法人 生命保険文化センター「在職老齢年金について知りたい」詳しくはこちら

在職老齢年金の支給額の計算方法

在職老齢年金の支給額の計算方法

在職老齢年金による調整後の年金支給額の計算式は、以下のとおりです。

条件 在職老齢年金による調整後の年金支給額
基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円以下 全額支給
基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円超 基本月額ー(基本月額+総報酬月額相当額ー48万円)×1/2

それぞれの場合の計算方法と具体的な例をみてみましょう。

基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円以下の場合

基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円以下の場合は、在職老齢年金による調整はなく、老齢年金は全額支給されます。

例えば、老齢厚生年金が月額10万円、給与が月額25万円、賞与が年間30万円の場合

基本月額:10万円
総報酬月額相当額:給与25万円+(賞与30万円÷12)=27.5万円

基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円以下のため、年金は全額支給されます。

基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超える場合

基本月額と総報酬月額相当額の合計額が48万円を超えた場合に、48万円を超えた額の2分の1が支給停止になります。

例えば、老齢厚生年金が月額14万円、給与が月額40万円、賞与が年間120万円の場合

基本月額:14万円
総報酬月額相当額:給与40万円+(賞与120万円÷12)=50万円

基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を16万円超えるため、その2分の1の8万円が支給停止されます。

調整後の年金支給額:14万円ー(14万円+50万円ー48万円)×1/2=6万円

【参考】日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ」詳しくはこちら

在職老齢年金のポイント

在職老齢年金のポイント

年金をもらいながら働くことができる在職老齢年金ですが、利用する場合には注意が必要です。在職老齢年金のポイントを理解して、損をしない年金制度の活用をしましょう。

在職老齢年金として受け取れる年金額が減額する人の条件

上述したように、年金の月額と給与(賞与を含む)の合計額が48万円を超える場合は、超えた金額の2分の1が支給停止となり、支給停止額を差し引いた年金額を受給することになります。

また、在職老齢年金が全額支給停止になった場合は、加給年金も支給停止になってしまいます。
加給年金とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人に、65歳到達時点で生計を維持している配偶者や子がいる場合に加算される家族手当のような年金です。加給年金を受給している方は、在職老齢年金の全額支給停止に注意が必要です。

【参考】日本年金機構「加給年金額と振替加算」詳しくはこちら

60代前半の特別支給の老齢厚生年金とは異なる制度

在職老齢年金と特別支給の老齢厚生年金は、異なる制度です。

特別支給の老齢厚生年金とは、一定の要件を満たしている場合に、60歳から65歳になるまでの間受け取ることができる老齢厚生年金です。
1961年4月1日以前に生まれた男性、または1966年4月1日以前に生まれた女性が対象となります。

特別支給の老齢厚生年金をもらいながら働いている人も、基本月額と総報酬月額相当額が48万円を超える場合は、在職老齢年金の支給調整が行われます。

【参考】日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」詳しくはこちら

年金の繰下げ・繰上げ受給に注意する

在職老齢年金では、繰下げ受給や繰上げ受給を申し込む際にも注意が必要です。

年金を65歳で受け取らずに、もらう時期を遅らせることを繰下げ受給といいます。
年金の受け取り時期を遅らせることで、年金額が1ヶ月あたり0.7%ずつ増額される仕組みですが、在職老齢年金によって減額された老齢厚生年金は繰下げの対象となりません。繰下げ受給で増額の対象となるのは、支給停止部分を除いた実際に受け取っている年金額になります。

一方、年金を65歳よりも前に受け取ることを繰上げ受給といいます。
年金の受け取り時期を早めることで、年金額は1ヶ月あたり0.4%ずつ減額されます。この場合、本来の受け取り年金額が繰上げ受給で減額され、さらにその減額された年金額に対して在職による支給調整が行われます。

まとめ

在職老齢年金制度は、60歳以上で会社員として厚生年金に加入しながら勤務している方が受け取る老齢厚生年金のことです。

60歳以上の老齢厚生年金受給者が会社員として働く場合、会社の給与(賞与を含む)と老齢厚生年金(基本月額)の合計額が48万円を超えると、在職老齢年金制度により、年金が減額または全額支給停止されます。
会社員として継続して働く場合は、給与と老齢厚生年金(基本月額)の合計額を48万円以内に抑えながら働くことも選択肢の1つになります。

在職老齢年金の制度を利用して継続して会社員として働くことで、厚生年金の加入期間が延長され、もらえる年金の額も増えます。これは、年金だけでは老後の生活が不安な方や、より豊かな生活を送りたい方にとって大きなメリットになります。在職老齢年金の仕組みを理解して、適切に年金が受給できるようにしておきましょう。

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