専業主婦だと大幅ダウン?!共働きとは月●万円も変わる専業主婦の年金制度

結婚後、仕事を辞めて専業主婦(夫)になった場合と働き続けた場合とでは、将来、受け取ることができる年金の額はどのくらい違うのでしょうか?専業主婦が年金の受給額を増やすためのヒントもあわせて紹介します。

専業主婦だと大幅ダウン?!共働きとは月●万円も変わる専業主婦の年金制度

共働きと専業主婦(夫)でもらえる額はいくら違う?

共働きと専業主婦(夫)でもらえる額はいくら違う?

現在、日本には2つの公的年金制度、すなわち国民年金と厚生年金(共済年金)があります。原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人は国民年金に加入し、その上で働き方に応じて厚生年金または共済年金に加入することになっています。国民年金に加入している人は老齢基礎年金、厚生年金に加入している人は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ることになります。

共働きの場合は月に約7万円、年で85万円も増える!

では、結婚後も働き続け、配偶者も本人も第2号被保険者として厚生年金を納めてきた場合(共働きの場合)と、専業主婦(夫)になって第3号被保険者となった場合とでは、将来受け取る保険料にはどのくらいの違いがあるのでしょうか?
厚生労働省の資料をもとに専業主婦(夫)の場合と共働きの場合の厚生年金の1ヶ月あたりの受給額を比較してみると、次のようになります。あくまでも試算上の数字ではありますが、厚生年金の受給額は共働きの夫婦の方が月に約7万1,000円、年にすると約85万円も多いことになります。

厚生年金の受給額(2人分)
専業主婦(夫)の場合 22万724円(※1)
共働きの場合 29万1,730円(※2)

※1 厚生年金は夫が平均的な収入(平均標準報酬(賞与を含む月額換算)が43.9万円)で40年間就業し、妻が40年間専業主婦であった世帯が受け取り始める時点の年金の給付水準
※2 平成30年度の厚生年金平均受給月額14万5,865円を夫婦がともに受給した場合を想定


※日本年金機構「令和2年4月からの年金額等について」 詳しくはこちら
※厚生労働省「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」 詳しくはこちら

第3号被保険者の場合は保険料の個別負担はなし

国民年金制度では、厚生年金の被保険者を第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者のことを第3号被保険者、それ以外の保険者を第1号被保険者と呼んでいます。厚生年金の被保険者である配偶者と結婚して専業主婦となった場合は第3号被保険者となり、保険料は配偶者が加入する厚生年金が一括して負担するので、個別に納める必要はありません。

専業主婦(夫)が年金を増やす方法はこれ!

専業主婦(夫)が年金を増やす方法はこれ!

ここまで見てきたとおり、一般的に専業主婦(夫)の夫婦が受け取れる年金の受給額は、共働きの夫婦よりも少なくなります。しかし、専業主婦(夫)にも年金を増やすことは不可能ではありません。ここからは、その具体的な方法について見ていきましょう。

共働きに切り替える

家庭の事情が許せば、専業主婦(夫)を辞め、就職して自身も厚生年金に加入することで、年金受給額を増やすことができます。

厚生労働省のモデルケースでは、月収88,000 円の人の場合 、毎月8,000 円(年額96,000 円)の保険料で、20年間加入した場合、毎月9,700 円 (年額11万5800 円)の年金がもらえ、1年間だけ加入した場合でも毎月500 円(年額6,000 円)の年金が終身でもらえることになります。最近では正社員でなくても、1ヶ月の固定給が8万8,000円以上であれば厚生年金に加入できるようになりました。子育てや介護が一段落したタイミングで再就職を検討してみても良いかもしれません。

国民年金の任意加入で加入期間を伸ばす

原則として国民年金の加入期間は20歳~60歳までで、この40年間欠かさず保険料を納めた場合のみ、65歳から老齢基礎年金を満額受け取ることができます。未払い期間があって受給額が満額に満たない場合で、受給額を増やしたい場合は、60歳~65歳未満の間、任意で国民年金に加入し、加入期間を伸ばすことができます。

例えば、満額の40年間(480ヶ月)加入して満額を受け取る場合と、5年間の未納期間がある35年間(420ヶ月)加入した場合を比べてみると、受給が始まって約10年間で支払った保険料と同額の差額がもらえることになるので、それ以降はお得ということになります。

■加入期間40年と35年の場合の差額計算

【老齢基礎年金の額(年額)】
・40年(480ヶ月)加入の場合:781,700円
・35年(420ヶ月)加入の場合:684,000円

781,700円-684,000円=97,700円

【支払う保険料】
16,540円×12ヶ月×5年間=992,400円

【支払った保険料と差額が埋まるまでの期間】
992,400円÷97,700円≒10(年間)

出典 

※計算は2020年現在の老齢基礎年金の額・保険料で計算しています。
※老齢基礎年金の額は概算です。

加入には条件あり

ただし、任意加入ができるのは以下の要件を満たす人のみです。

・日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満であること
・老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと
・20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満であること
・厚生年金保険、共済組合等に加入していないこと

任意加入の申込は住所のある市区町村の国民年金窓口または年金事務所で行うことができ、手続きには年金手帳と本人名義の預金通帳、印鑑が必要です。

付加年金に加入する

付加年金に加入する

専業主婦でも配偶者が国民年金の第1号被保険者の場合は本人も第1号被保険者となります。第1号被保険者と任意加入被保険者は定額の保険料(令和2年は1万6,540円)に400円の付加保険料を上乗せして納めることによって、「200円✕付加保険料納付月数」分だけ、受給額を増やすことができます。

例えば、55歳から60歳までの5年間(60ヶ月)、付加保険料(400✕60=2万4,000円)を支払った場合、毎年1万2,000円(200円✕60ヶ月)も受給額を増やすことができます。2年間で元がとれるので、とてもお得な制度だと言えるでしょう。
付加年金の申込は住所のある市区町村の国民年金窓口または年金事務所で行うことができ、手続きには年金手帳と本人名義の預金通帳、印鑑が必要です。

繰り下げ受給の請求をする

国民年金の老齢基礎年金、厚生年金の老齢厚生年金はともに65歳から受け取ることができますが、請求すれば66歳以降に繰り下げて受け取ることもできます。繰下げ請求をすると、繰り下げた期間に応じた割合の額が増額されることになります。増額率は1ヶ月繰り下げるごとに0.7%UPするので、70歳まで繰り下げると42%も受給額を増やすことができます。
繰り下げ受給の請求をする際には、「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」を年金事務所に提出しなくてはなりません。「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」は日本年金機構のHPからダウンロードすることができます。

iDeCoを利用する

iDeCoを利用する

私的年金制度「iDeCo」に加入して老後に備えることもできます。「iDeCo」は、確定拠出年金法に基づいて運営されている私的年金制度で、一定の加入条件を満たした20歳以上~60歳未満の人が任意で加入することができ、自分で決めた額を毎月積み立てつつ、その掛金を運用することによって、老後のための資産形成を目指すものです。iDeCoの月々の掛金は5,000円からで、5,000円以上を超える分は1,000円単位で増やすことができ、年に1回、掛金の金額の見直しも可能です。運用する金融商品(投資信託など)は候補の商品の中から自分で選び、60~70歳の間に、一時金方式または年金方式のどちらかの方式で老齢給付金を受け取る仕組みとなっています。iDeCoの運用は自己責任なので相応のリスクはありますが、

・掛け金が全額所得控除の対象になる
・運用益が非課税になる
・受け取り時に税控除が受けられる
などのメリットもあるので、余裕資金のある人は年金+アルファの備えとして検討してみてください。

※iDeCo公式サイト 詳しくはこちら

個人年金に加入する

国民年金や厚生年金といった公的年金に加え、民間の保険会社などが取り扱っている個人年金に加入して、老後に備えることもできます。個人年金は、毎月所定の保険料を積立てると、契約時に定めた年齢(60歳、65歳など)から一定期間(5年、10年など)もしくは一生涯にわたって毎年、一定額の年金が受け取れる貯蓄型の保険商品です。

個人年金は終身・確定・有期の主に3種類

個人年金には大きく分けて「終身年金」「確定年金」「有期年金」の3つの種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。個人年金は貯蓄性が高く返戻率も高いので、公的年金の不足を補う「自分年金」として人気を集めていますが、商品によっては物価上昇(インフレ)に対応できない、受取時に課税される可能性があるといったデメリットもあることを理解した上で選ぶようにしてください。

個人年金の種類 年金受け取り期間 被保険者が死亡したとき
終身年金 被保険者が生存している限り一生涯にわたって受け取ることができる 年金の支払いは終了する
確定年金 被保険者の生死に関係なく、契約時に定めた一定期間のみ受け取ることができる 契約時に定めた一定期間中は遺族に年金が支払われる
有期年金 被保険者が生存している場合、契約時に決めた一定期間、受け取ることができる 年金の支払いは終了する

まとめ

まとめ

一般的に専業主婦(夫)の夫婦の年金は、共働きの夫婦の年金よりも低くなる傾向にあります。しかし、付加年金を納める、年金の受け取り開始時期を繰り下げる、個人年金に加入するなどすれば、将来受け取る年金を増やすことは可能です。時間や体力に余裕があれば専業主婦(夫)をやめて就職し、厚生年金に加入するのも一案です。安心して老後の暮らしを楽しむために、1日も早く準備を始めましょう。

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