年金の未納はダメ!年金の未払いで起こる差し押さえとは?

20歳以上の国民に加入が義務付けられている国民年金。ですが、「保険料を払えない」「払いたくない」という人も少なくありません。しかし、年金保険料を未納のままにしておくと、財産が差し押さえられてしまうのをご存知ですか? 今回は差し押さえの実態や差し押さえを回避する方法などについて解説します。

年金の未納はダメ!年金の未払いで起こる差し押さえとは?

国民年金保険料の未納率は●%!?

国民年金保険料の未納率は●%!?

日本の公的年金は大きく分けて国民年金と厚生年金のふたつ。このうち国民年金は原則として20歳~60歳までのすべての国民に加入が義務付けられており、毎月、国民年金保険料として1万6,540円(2020年度)を国に納めなくてはなりません。

しかし、生活に余裕がなくて保険料の納付が滞ってしまう人や「将来年金をもらえないに違いない」との思い込みから敢えて納付をしない人も少なくなく、2019年度の国民年金の納付率は69.3%に留まっています。つまり、全体の約30%の人が年金保険料を納めていないということになります。

会社員や公務員などで厚生年金に加入している人の場合は、毎月の給与から国民年金保険料が天引きされ、勤務先から国に支払われる仕組みになっているので、原則として厚生年金加入中は国民年金保険料が未払いになることはありません。しかし、厚生年金に加入していない個人事業主やフリーランス、学生や無職の人などは毎月、自分自身で国民年金保険料を支払う必要があります。

※厚生労働省「令和元年度の国民年金の加入・保険料納付状況」P3 詳しくはこちら

将来年金を受取るためには、通算10年以上の支払いが必要

しかし、当然ながら保険料を支払わないと、将来、年金を受け取ることはできません。「生活に余裕ができてから支払えばいいや」と思っている人も多いかもしれませんが、年金の支給額は支払った保険料の額に応じて決められるので、保険料を納めた月が少なければ少ないほど、将来受け取れる年金も少なくなります。

しかも、国民年金には、保険料納付済期間(国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含む)と国民年金の保険料免除期間などを合算した「受給資格期間」が設けられており、受給資格期間が10年に満たない場合は、年金が支給されません。例えば資格期間が9年しかない場合、せっかく9年間保険料を支払っても、受給資格期間に満たないため年金が受給できない事態に陥るおそれがあります。

未納の場合どうなる?

未納の場合どうなる?

中には、「年金がもらえなくてもいい」、「年金の額が少なくなってもいい」という考えから、年金保険料を敢えて支払わない人もいます。しかし、保険料を未納のまま放置しておくと、将来年金がもらえなくなる・減額されるだけでなく、所有している財産が差し押さえられてしまうおそれがあるのはご存知でしょうか。

日本年金機構では、保険料の負担能力がありながら保険料を納付しない未納者に対する強制徴収を強化しており、2018年度には控除後の年収が300万円以上で未納期間が7か月以上の未納者を対象に督促を実施、督促に応じない未納者に対する財産の差し押さえは、1万7,977件(前年度比約2,000件増※)にも上りました。

※日本年金機構「平成30年度業務実績報告書」P9 詳しくはこちら

複数回の督促の後差し押さえに

とはいえ、年金保険料の納付が滞るとすぐに差し押さえが行われるわけではありません。差し押さえに至るのは以下のような流れで度重なる督促がなされてもなお、自主的に保険料の納付を行おうとしない未納者で、しかも差し押さえるべき財産を有している者に限られます。

【差し押さえまでの流れ(※)】
納付期限(翌月末)に催告状を送付

納付督励(電話・戸別訪問・文書の送付など)

最終催告状の送付

督促状の送付

督促指定期限後、滞納処分開始

納付督励(電話・個別訪問・文書の送付など)

金融機関等への財産調査の実施

差し押さえ予告

差し押さえの実施


※厚生労働省「国民年金未納者に対する対応」P4 詳しくはこちら

支払いが困難な場合は免除・猶予制度も検討を

支払いが困難な場合は免除・猶予制度も検討を

保険料免除制度

先程も述べたとおり、差し押さえに至るまでには何度も督促が行われ、自主的に保険料を納付する機会が提供されています。しかし、本当に経済的な余裕がなく、年金保険料を納めたくても納められない場合は、どうすればよいのでしょうか?
国民年金では、収入の減少や失業等により国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合の手続きとして、保険料免除制度と保険料納付猶予制度を整備しています。

保険料納付猶予制度

20歳から50歳未満の人で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合、本人から市町村役場の国民年金担当窓口または年金事務所に申請書を提出して承認されると、保険料の納付が猶予されます。

なお、以上ふたつの制度は学生には利用できません。学生には別途「学生納付特例制度」が整備されており、本人が申請して承認を受ければ、在学中の保険料の納付が猶予されます。

免除・納付猶予制度の注意点

免除・納付猶予制度の注意点

納付猶予制度には年齢制限があるため、50歳以上の人は免除制度しか利用できません。では、50歳未満の場合、保険料と免除制度と納付猶予制度のどちらを選べば良いのでしょうか?
保険料の「免除」と「納付猶予」の違いは以下の表のとおり、その期間が年金額に反映されるか否かです。納付猶予の場合、その期間は年金受給資格期間に参入されますが、年金額には反映されません。

     年金受給資格
期間への算入
年金額
への反映
全額免除 あり あり
一部免除 あり あり
納付猶予 あり なし

一方、全額免除・一部免除の場合は、その期間が年金受給資格期間に参入される上、それぞれ以下のとおり、年金額にも反映されます。

① 全額免除された期間 
保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1が支給されます。

② 4分の3免除(納めた保険料額4,140円、令和2年度の場合)
保険料を全額納付した場合の年金額の8分の5が支給されます。

③ 半額免除(納めた保険料額 8,270円、令和2年度の場合)
保険料を全額納付した場合の年金額の8分の6が支給されます。

④ 4分の1免除(納めた保険料額 12,410円、令和2年度の場合)
保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7が支給されます。

保険料の納付を免除されていた年金の支給額に反映されるという点で、免除制度のほうが納付猶予制度よりも有利ですが、免除制度は年収などについての審査が厳しく、申請すれば必ずしも利用できるわけではないことに注意してください。また、当然ながら、免除されている期間がながければ長いほど、将来の年金支給額が少なくなってしまうことにも留意が必要です。
ただし、免除・猶予された保険料は10 年以内であれば、追納(後から納めること)ができます。免除・猶予された期間があると保険料を全額納付したときに比べて将来受け取る年金額が少なくなりますが、追納すると保険料を全額納付した場合と同額になります。

まとめ

まとめ

原則として20歳から60歳までのすべての日本国民には、国民年金保険の保険料の納付が義務付けられています。保険料を納付せず一定期間以上未納のまま放置しておくと、最悪の場合、財産を差し押さえられてしまうおそれがあります。

経済的な理由で保険料の納付ができない場合は、保険料免除または保険料納付猶予の申請手続きを取りましょう。ただし、免除を受けていた期間は一部しか年金額に反映されませんし、納付猶予を受けていた期間については年金額に全く反映されないため、将来受け取る年金額が減ってしまいます。免除・納付猶予されていた保険料については、10年以内であれば追納が可能です。安心して老後を過ごすために、経済的な余裕ができ次第、なるべく早めに追納するよう心がけましょう。

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