50代からでもiDeCoは間に合う!メリットの大きい優遇制度や注意点など

iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めようと思ったものの、掛金を拠出できるのは60歳までなので、50代で始めてもメリットがないのでは……、そう考える人もいるかもしれません。果たして本当にそうなのでしょうか?50代で始めるiDeCoについて見ていきます。

50代からでもiDeCoは間に合う!メリットの大きい優遇制度や注意点など

50代でもiDeCoに入るべき理由

50代でもiDeCoに入るべき理由

iDeCoを50代から始めたとしても、メリットはあります。その理由は、「節税効果がある」「加入年齢が65歳まで延長される」の2点です。

①節税効果がある

拠出時

iDeCoの掛金は全額、所得控除の対象になります。1年間の所得から、その年に拠出した掛金が控除(差し引かれる)され、税額計算のもとになる所得が少なくなり税額が減り、節税になります。

iDeCoのメリットとして、「拠出時・運用時・受取時」の3つのステップで、税の優遇を受けられることが挙げられます。

運用時

金融商品の運用益には、通常は20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税です。

受取時

iDeCoの資産の受取方法は、「一時金」「年金」「一時金+年金」の3通りが選択できます。いずれも受け取ると税金がかかりますが、一時金・年金受取ともにそれぞれ「退職所得控除」「公的年金等控除」が適用されて課税所得が減り、節税になります。

②加入年齢が65歳まで延長される

②加入年齢が65歳まで延長される

現在、iDeCoの加入可能年齢の上限は60歳未満ですが、2022年5月から上限が65歳未満になります。50歳から始めても、15年間の積立運用が可能になります。

例えば、毎月2万円を5年間多く積み立てることができれば、元本120万円が増えるとともに、それに対する運用益も期待できます。なおかつ、所得控除の対象となり節税効果も続きます。

ただし、65歳まで掛金を拠出するためには、国民年金の被保険者であることが要件です。60歳以降も会社員などで厚生年金に加入していれば、国民年金の被保険者でもあるため、65歳まで拠出できます。

また、任意加入被保険者として国民年金に加入している人も65歳まで拠出できます。任意加入とは、国民年金保険料の納付期間が40年に達していない人(40年納付で国民年金は満額がもらえる)が、60歳以降も国民年金に加入できる制度です。このような人でも、国民年金保険料の納付期間が40年に達するまでは掛金の拠出が可能です。

50代からiDeCoに加入する際の注意点

50代からiDeCoに加入する際の注意点

iDeCoを50代から始める際の注意点を押さえておきましょう。

①受取時期

iDeCoの資産は、加入期間によって受取時期が変わります。10年以上加入すると60歳から受取りが可能になりますが、10年未満の場合は受取開始年齢が繰り下げられます。例えば、55歳から60歳まで加入した人は加入期間が5年になりますので、下表より受取開始年齢は63歳からです。

加入期間に応じた受取開始年齢

iDeCo加入期間 受取開始年齢
10年以上 60歳
8年以上
10年未満
61歳
6年以上
8年未満
62歳
4年以上
6年未満
63歳
2年以上
4年未満
64歳
1年以上
2年未満
65歳

②元本割れの可能性

投資信託でiDeCoを運用する場合、当然ですが元本割れの可能性があります。運用期間が短いと途中で価格が下がったとき、受取年齢までに資産を元の水準に戻すのが難しいことも考えられます。

実際にお得になる金額をシミュレーション!

実際にお得になる金額をシミュレーション!

iDeCoの節税効果をシミュレーションしてみましょう。一例として、次のような前提でのケースを見ていきます(加入期間は制度改正を前提に15年間で試算)。

年齢50歳/会社員/年収800万円/企業年金なし/掛金23,000円(月額)
勤務期間40年(65歳まで)/iDeCo加入期間15年/投資信託の運用利回り 年率1.5%

出典 

拠出・運用時の控除は?

拠出・運用時の控除は?

iDeCoの拠出・運用時の節税効果を解説します。

所得控除による節税効果

掛金拠出での所得控除による節税効果は、「年間の掛金合計額×税率(所得税・住民税)」で計算できます。

・年収:800万円(配偶者、扶養親族1人)
・課税所得:3,730,000円
(給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除を考慮)
・税率:所得税20.42%(復興特別所得税含む)、住民税10%
・1年間の節税額:276,000円(年間掛金)×30.42%(所得税・住民税)≒83,900円(100円未満切り捨て)
・15年間の節税額:83,900円×15年=1,258,500円

出典 

年収800万円の人の各種控除後の課税所得(税額計算のもとになる額)は373万円。この場合の年間の節税額は約8.4万円で、15年間の節税額は約126万円となりました。

運用益非課税による節税効果

次に運用益の非課税による節税効果を見てみましょう。金融商品の運用益には、通常約20%の税金がかかります。

・15年間の積立元金:23,000円×12か月×15年=4,140,000円
・15年間の運用益:501,582円(運用利回り 年率1.5%)
・税金:譲渡益20.315%(所得税、復興特別所得税、住民税)
・15年間の節税額:501,582円×20.315%=101,896円(運用益非課税分)

出典 

15年間の積立元金の合計額は414万円です。仮に運用利回りを年1.5%とすると、15年間の運用益は約50.2万円になります。本来であれば、この運用益に対して約10.2万円の税金がかかるところ、iDeCoなら非課税です。

受取時の控除は?

受取時の控除は?

iDeCoの受取時の節税効果を解説します。

一時金で受け取るときの控除額

iDeCoの資産を一時金で受け取ると、勤務先から受け取る退職一時金などと同様に、税制上は「退職所得」になっており、退職所得控除後の額の2分の1に対して課税される仕組みになっています。計算式は次のとおりです。

退職所得=(収入金額[源泉徴収前の金額]- 退職所得控除額)×1/2

出典 

退職所得控除額は、勤続年数(iDeCoの場合は掛金の拠出年数)によって変わります。計算方法は以下のとおりです。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数−20年)

これを今回の例に当てはめてみると、会社の退職一時金を受け取っていない場合だと、iDeCo資産の課税所得はゼロとなり、税金はかかりません。

・一時金受取額:4,641,582円(15年間の積立元金4,140,000円と運用益501,582円の合計)
・退職所得控除額(20年以下の場合):40万円×15年=600万円
・課税所得:(4,641,582円−600万円)×1/2  マイナスとなるため課税所得は0円

出典 

なお、iDeCoの資産と退職一時金を同じ年に受け取った場合は、退職所得の対象となる収入はiDeCoと退職一時金を合算して計算します。このときの勤続年数は、「iDeCoの加入年数」「会社の勤務年数」いずれか長い方で計算します。

iDeCoを年金(10年間)で受け取る場合の控除額

iDeCoの資産は、年金でも受け取れます(受取期間や回数は金融機関によって異なります)。年金で受け取ったiDeCoの資産は公的年金と同様「雑所得」となり、「公的年金等控除」が適用されます。そして、控除適用後の所得(雑所得)に対して課税されるため節税になります。

公的年金等控除額は、「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」や年金を受け取る人の年齢によって変わります(下表参照)。

雑所得=公的年金等の収入金額の合計額(a)×割合(b)−公的年金等控除額(c)

出典 

■公的年金等に係る雑所得の速算表

公的年金等に係る雑所得の速算表(令和2年分以後)

【画像出典】国税庁ホームページ 詳しくはこちら

定年退職後の合計所得金額200万円の人が、iDeCoの資産を65歳から年金(約46万円/年)として受け取ると仮定します。この人が年額240万円の公的年金を受け取るとき、雑所得は約176万円になることが上表からわかります。

・iDeCo年金受取額:464,158円(10年間の毎年の受取額)
・公的年金の年額:240万円
・公的年金等の収入金額の合計額:464,158円+2,400,000円=2,864,158円
・雑所得:2,864,158円×100% − 1,100,000円=1,764,158円

出典 

まとめ

まとめ

税制面で優遇のあるiDeCoなら、50歳から始めたとしても加入年齢の延長などもあり、メリットは少なくありません。50代は老後資金づくりのラストチャンス。節税メリットを最大限活かした資産づくりに、iDeCoを活用してみてはいかがでしょうか。

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