都市部よりも生活費が格安?沖縄に移住を検討している方へ

「老後は、夫婦で沖縄に移住したい」と真剣に考えている方もいらっしゃるでしょう。沖縄は海や自然などが多い「環境のよさ」などに加えて魚介類や南国果物なども豊富で、土地代も東京と比較すると安価なイメージがあります。そのため「生活費が安そう」「暮らしやすそう」と考えがちですが本当にそうなのでしょうか?

都市部よりも生活費が格安?沖縄に移住を検討している方へ

沖縄に住む場合の基本的な生活費

沖縄に住む場合の基本的な生活費

実際に沖縄では生活するのにどの程度お金がかかるものなのか、一般に生活費が高いといわれる「東京」と比較しながら、確認してみましょう。

家賃

移住するとなれば、まずは住む所を確保しなければなりません。まずは、賃貸相場から見てみましょう。
沖縄で部屋を借りる場合の平均的な家賃の額は下表のようになっています。

住宅の広さ家賃(那覇市)家賃(東京都区部)
40㎡(1LDK程度)5万3,430円10万6,642円
55㎡(2LDK程度)7万3,467円14万6,633円
70㎡(3LDK程度)9万3,503円18万6,624円

※2019年12月現在
※住宅の広さ毎の家賃は民営家賃1カ月・3.3㎡(1坪)の金額より算出

【参考】総務省統計局「主要品目の都市別小売価格-都道府県庁所在市及び人口15万以上の市」詳しくはこちら

上記のように、あくまで目安ではありますが、那覇市の賃貸なら1LDKで月額およそ5万円、夫婦二人なら2LDK以上で7万~9万円は見ておいた方がよいということになります。これは東京のほぼ半額ですが、全国平均と比べると少し高い額になっています。

次に沖縄で人気のある7市町と東京都の家賃の相場を見てみましょう。

沖縄の家賃相場

市区名1LDK/2K/2DK2LDK/3K/3DK
うるま市5.0万円5.8万円
浦添市5.2万円6.5万円
沖縄市5.2万円5.5万円
宜野湾市5.6万円7.3万円
豊見城市6.0万円8.0万円
那覇市6.2万円10.2万円
北谷町6.8万円9.9万円

※2020年1月31日現在

【参考】Yahoo!不動産「沖縄県の家賃相場」詳しくはこちら

東京の家賃相場

市区名1LDK/2K/2DK2LDK/3K/3DK
あきる野市5.6万円6.8万円
青梅市5.9万円6.6万円
福生市6.6万円7.8万円
葛飾区7.7万円10.4万円
練馬区9.6万円-
世田谷区12.8万円17.6万円
新宿区18.2万円29.4万円
港区25.5万円41.3万円

※2020年1月31日現在

【参考】Yahoo!不動産「東京都の家賃相場」詳しくはこちら

東京に例えると、ちょうど安価な「郊外」の家賃に相当する金額です。これが都心になると、23区で最も安い「葛飾区」でも、沖縄では最も高い「那覇市」や「北谷町」とようやく同じ程度と、やはり倍以上の違いが見られます。

住み替えの場合の家賃

次は、賃貸ではなく購入による住み替えの場合を見ていきます。

沖縄の価格相場(一戸建て)

市区名3LDK~4DK4LDK~5DK
うるま市2,868万円2,917万円
浦添市4,034万円5,037万円
沖縄市3,624万円3,464万円
宜野湾市3,443万円3,548万円
豊見城市3,716万円3,975万円
那覇市5,142万円4,824万円
北谷町-3,499万円

※2020年1月31日現在

【参考】HOME4U「沖縄県,中古一戸建ての価格相場比較 -中古住宅」詳しくはこちら

東京の価格相場(一戸建て)

市区名3LDK~4DK4LDK~5DK
あきる野市2,422万円2,647万円
青梅市2,878万円2,871万円
福生市3,293万円3,682万円
葛飾区4,075万円4,187万円
練馬区5,280万円5,713万円
世田谷区7,699万円8,303万円
新宿区8,158万円1億984万円
港区1億5,071万円3億5,467万円

※2020年1月31日現在

【参考】HOME4U「東京都,中古一戸建ての価格相場比較 -中古住宅」詳しくはこちら

純粋に価格だけでいえば、沖縄の人気都市では3LDK~4DKで2,000万円台後半から。交通の便がよく人口も多い那覇市は5,000万円台です。東京都心の一等地は8,000万~1億円以上してしまいますが、東京都の郊外で2,000万円台から購入できることを考えると、必ずしも沖縄の方が「全面的に安い」とまでは言いきれないでしょう。

水道・光熱費

水道・光熱費

家賃とともに、毎月必ず支払うのが「水道・光熱費」です。沖縄の平均的な金額は、下表のようになっています。

那覇市と東京の水道・光熱費

光熱費那覇市東京都区部
電気代91,702円98,895円
ガス代46,299円55,171円
上下水道料44,201円48,168円
182,202円202,234円

沖縄(県全体)と東京の水道・光熱費

光熱費那覇市東京都区部
電気代103,720円98,895円
ガス代46,215円55,171円
上下水道料45,744円48,168円
195,679円202,234円

※2018年の年間金額

【参考】総務省統計局「都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり年間の品目別支出金額(総世帯)」詳しくはこちら

ご覧のように、那覇市単独の場合、年間2万円ほど沖縄の方が安くなっていますが、県全体で見れば、月500円程度の差しか見られません。

東京都区部と差の大きい那覇市の具体的な料金体系もそれぞれ見てみましょう。

電気

項目那覇市東京都区部
基本料金402.4円858.0円
従量料金23.0円19.9円

都市ガス

項目那覇市東京都区部
基本料金834.9円759.0円
従量料金241.5円142.2円

水道

項目那覇市東京都区部
上水道料3,041円2,475円
下水道料1,489円2,068円
4,530円4,543円

※2019年12月現在
※電気:契約アンペアが「30A」の場合
【参考】沖縄電力「グッドバリュープラン」詳しくはこちら
【参考】東京電力「関東エリア スタンダード 料金のご案内」詳しくはこちら

※都市ガス:1カ月 20㎥使用した場合
【参考】沖縄ガス「料金のお知らせ」詳しくはこちら
【参考】東京ガス「ガス料金表」詳しくはこちら

※水道:口径13㎜で、1カ月 20㎥使用した場合
【参考】総務省統計局「主要品目の都市別小売価格-都道府県庁所在市及び人口15万以上の市」詳しくはこちら

こうして比べてみると、沖縄の電気代の基本料金は東京の半額ほどになっています。また、基本料金は契約しているアンペアの大きさによって変わるのが通例ですが、沖縄で大手の電力会社ではそうした制度は取っていません。

湿度の高い沖縄では除湿器を使ったり、洗濯物を乾かすのに乾燥機を使ったりと、意外と光熱費がかかることも考えられます。東京でもおおよそこの程度の水道光熱費が目安と考えられるので、沖縄の方が特段安いわけではないようです。

都市ガスの場合は、反対に基本料金・従量料金とも沖縄の方が1~1.5割程度高くなっています。
水道は、上水は那覇市、下水は東京の方が高くなっていますが、合計するとほぼ同じです。

ガスや水道は住む部屋や地域によって料金が変わるため、この結果が全てというわけではありませんが、ここでも沖縄の方が安いといえるほどの違いはなさそうです。

食費

食費

生活費の中心となるのは、何といっても「食費」です。そこで、代表的な食品について、沖縄と東京の価格の違いを調べてみました。

沖縄と東京の食費

品名那覇市東京都区部
2,327円2,267円
食パン534円444円
豚肉225円237円
キャベツ191円154円
にんじん400円356円
カレーライス(外食)679円714円
ハンバーグ(外食)868円1,138円
とんかつ定食(外食)726円1,204円
弁当(からあげ)390円524円

※2019年12月現在

【参考】総務省統計局「主要品目の都市別小売価格-都道府県庁所在市及び人口15万以上の市」詳しくはこちら

食材に関しては、意外にもおおむね沖縄の方が1~2割程度高くなっています。これが外食になると、ほぼ全てのメニューで、沖縄の方が安くなっています。中でもハンバーグやとんかつといった定食系では、かなりの差が見られます。
このように、やはり食費に関しても、一人暮らしで「食事はもっぱら外食」という方でもなければ、一概に沖縄の方が安いとは言えないようです。

日用品購入費

日用品購入費

食費に加えて、日用品についても、日頃よく利用される商品やサービスを例に、沖縄と東京の価格の違いを見てみましょう。

沖縄と東京の日用品購入費

品名那覇市東京都区部
ティッシュペーパー369円358円
洗濯用洗剤307円306円
歯ブラシ182円106円
化粧石けん308円228円
シャンプー325円317円
理髪料2,335円3,947円
カット代2,133円3,991円

※2019年12月現在

【参考】総務省統計局「主要品目の都市別小売価格-都道府県庁所在市及び人口15万以上の市」詳しくはこちら
その2 詳しくはこちら
その3詳しくはこちら

こちらも食費と同じく都市部とあまり変わらないと言えます。
沖縄は地元で生産されたものでなければ、どうしても輸送コストが加算されてしまうため、そうした点が影響しているのかもしれません。一方サービスについては、沖縄の方が安い傾向にあるようです。外食やサービスの場合、こうした点が、少なくとも価格の面では優位な状況につながっている可能性があるようです。

注意したい沖縄ならではの出費

注意したい沖縄ならではの出費

このほかにも、「沖縄だと必要になる出費」というものがあります。そちらも見ておきましょう。

ガソリン代

沖縄には電車がありません。実際、那覇市と浦添市を結ぶモノレール(ゆいレール)以外、県内の公共の移動手段はバスのみとなっているため、沖縄では「車は必需品」と言っても過言ではありません。そのため沖縄に住むとなれば、車を持っていくか現地で購入する必要が出てきます。そうなると日常的に利用することになるのが「ガソリン」です。沖縄の平均的なガソリンの価格は下表のようになっています。

沖縄と東京のガソリン価格

項目1月20日1月27日
沖縄158.8円159.0円
東京152.0円152.1円
全国151.6円151.5円

※2020年1月29日発表分
※レギュラー1ℓ 現金価格(消費税込)

【参考】資源エネルギー庁「石油製品小売市況調査」詳しくはこちら

沖縄の方が、若干ではありますが全国平均よりも高くなっています。沖縄では、振興策の一つとして酒税やガソリン税に軽減措置が取られているため、本来は安くなるはずなのですが、やはり前述のように輸送コストの問題から、結局は高くなってしまう傾向が見受けられます。

沖縄ならではの慣習制度「模合」

「沖縄ならでは」ということであれば、「模合(もあい)」を外すわけにはいきません。一般には聞き慣れない言葉ですが、要は「共済制度」のことです。これは「日頃から仲間同士でお金をためておき、誰かに何かあった際はそこから援助を行う」というものです。

かつては「無尽講(むじんこう)」とか「頼母子講(たのもしこう)」と呼ばれる同様の制度が全国でも行われていましたが、現在ではほとんど見られなくなりました。それが、沖縄では今でも広く一般に行われています。「沖縄で暮らすようになると、こうした活動に参加しなければならない場合がある」ということも覚えておく必要があります

まとめ

「沖縄は物価が安い」というのはあくまでもイメージであり、実際はむしろ高くなる場合も多く見られます。「お金がかからないから」という理由で沖縄に移住することを考えているなら、「こんなはずではなかった」となってしまう可能性もあります。このことは、ぜひ留意しておかれた方が良いでしょう。

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