ボーナスカットは違法?万が一カットされたときの対処法は?

ボーナスが減額されたり、全く支給されなくなる「ボーナスカット」は、違法ではないのでしょうか?労働基準法とボーナスの関係を確認するとともに、もしもボーナスが突然カットされてしまったら、どのように対処すればよいのかを解説します。

ボーナスカットは違法?万が一カットされたときの対処法は?

ボーナスカットは労働基準法上、問題なし

ボーナスカットは労働基準法上、問題なし

期待していたボーナスが減額されたり全く支給されなくなったりすると従業員は大いに困ってしまいます。しかし、ボーナスカットは原則として違法ではありません。というのも、ボーナスは労働の対価として支払われる賃金とは違い、労働基準法で企業に支払いが義務付けられているわけではないからです。ボーナスの支給はあくまでも企業の任意であり、ボーナスを支給するか否かはもちろん、支給する場合の金額についても、企業側の判断で決めることができます。実際、厚生労働省が2017年に行った調査によると、「ボーナス制度がない」企業は全体の9.9%に上っています。

したがって、原則的にはボーナスがカットされても、従業員が勤務先の企業の違法性を問うことはできないということになります。

【参考】厚生労働省「就労条件総合調査 平成29年」 詳しくはこちら

ボーナスカットが違法になる場合も!労働契約や就業規則をチェック

ボーナスカットが違法になる場合も!労働契約や就業規則をチェック

しかし、中には例外的にボーナスカットが違法になる場合もあります。それは就業規則や労働契約、求人広告などでボーナスの支給が謳われているにもかかわらず、ボーナスが支給されなかった場合です。この場合は、従業員が契約違反として企業側にボーナスの支払いを請求することができます。ただし、以下の就業規則の例のように「業績によっては支払わない」と明記してある場合は、ボーナス(賞与)の請求はできません。
ボーナスについてどのような取り決めになっているのか、念の為、勤務先の就業規則や労働契約の内容を見直しておくとよいでしょう。

就業規則の例
(賞与)
第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

出典 

【参考】厚生労働省「モデル就業規則」 詳しくはこちら

なお、従業員の正当な権利である出産・育児休暇の取得、有給休暇の取得などを理由にボーナスが支給されなかった場合は、労働基準法および男女雇用機会均等法違反として企業にボーナスの支給を求めることができます。上記のような理由で一方的にボーナスをカットされた場合は、都道府県の労働基準監督署や法律の専門家に相談してみるとよいでしょう。

男女雇用機会均等法第9条第3項
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(省略)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

出典 

ボーナスカットを事前通告されたら、まず何をすべき?

ボーナスカットを事前通告されたら、まず何をすべき?

では、ボーナスカットは実際にはどのように行われるのでしょうか?
ボーナス支給日に突然ボーナスカットを知らされる……というケースは少なく、事前にボーナスカットについての通知と説明が行われるケースがほとんどです。というのも、一方的にボーナスをカットしてしまうと、社員のモチベーション低下や離職の可能性があるので、企業にとってもボーナスカットは非常にリスクが高いことだからです。

ボーナスカットを通知された場合は、まず就業規則や労働契約に違反していないかどうかを確認してください。前述のとおり、就業規則や労働契約でボーナスの支給を謳っている場合は、従業員側にボーナスの支給を受ける権利があるので、会社側と交渉することができます。交渉の結果、会社側の対応に納得できない場合は、労働基準監督署や法律の専門家に相談してください。

ボーナス前提の支払いを調整

一方、就業規則や労働契約上、やむをえない理由でボーナスがカットされる場合は、従業員側は原則としてこれを受け入れなくてはなりません。ボーナスカットを知ったら、まずは支出を控え、ボーナス払いでの買い物をしないようにします。すでにボーナス払いで買い物をしている場合やボーナス時加算のローンを組んでいる場合は、ボーナス月の引き落としに備えて支出を見直しましょう。
明らかに残高不足でクレジットカードやローンの引き落としができないことが予見される場合はそのままにせず、事前にカード会社やローンを組んでいる金融機関に連絡してボーナスカットの事情を説明し、支払い回数や支払額を変更できないか相談しましょう。こういった支払条件の変更については期限が設けられているケースが多いので、支払えないことがわかったら躊躇せず、できるだけ早く相談することが大切です。

ボーナスカットの理由によっては、転職も視野に

また、ボーナスがカットされた場合は、その理由についてしっかりと企業から説明を受けましょう。
多くの場合、ボーナスカットは企業の業績不振が理由に行われます。しかし、一口に「業績不振」といっても、事情は様々です。業績不振が一時的なものであればボーナスカットも一回限りで済むかもしれませんが、業績不振が長引くおそれがある場合は、ボーナスカットも長引く可能性があります。

もちろん、業績回復のために社員一人ひとりが努力することも大切ですが、勤務先の業績の現状と見通しを客観的に観察した結果、業績回復に時間がかかりそうな時や業績回復が見込めそうもない場合は、転職を視野にいれて行動を起こすのも選択肢のひとつです。

まとめ

労働基準法では、企業にボーナスの支払いを義務付けていません。したがって、ボーナスを支給しないこと自体は違法ではありませんが、就業規則などでボーナスの支給を謳っている場合は、企業にボーナス支払いの義務が生じます。ただし、業績不振によりボーナスを支給しないことが就業規則等に明記されている場合は、従業員はこれを受け入れざるを得ません。ボーナスカットされたら支出を見直し、クレジットカードやローンの支払いが滞らないように務めましょう。また、ボーナスがカットされた理由を正確に把握し、ボーナスカットが続くようであれば、転職を検討してもよいでしょう。

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