保育士の年収・預貯金額はどれくらい? 預貯金を増やすためにすべきこと

待機児童問題が長引くなか、その受け皿となる保育所は増加傾向にありますが、保育士不足が大きな問題となっています。保育士の待遇改善に国や地方自治体が取り組みはじめていますが、実際の収入や預貯金額はどうなっているのでしょうか。

保育士の年収・預貯金額はどれくらい? 預貯金を増やすためにすべきこと

保育士の6割は預貯金額がゼロ?!

保育士の6割は預貯金額がゼロ?!

保育士・幼稚園教諭の転職サポートを行う「ほいくジョブ」によると、保育士の中で、月々の預貯金を全くしていないという人がおよそ6割を占めているそうです。

厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査の概況」によると、各年代の平均貯蓄額は下記の通りとなっています。

年代別の平均貯蓄額

年代 平均貯蓄額
29歳以下 154.8万円
30歳~39歳 403.6万円
40歳~49歳 652.0万円
50歳~59歳 1,049.6万円
60歳~69歳 1,337.6万円
70歳以上 1,260.1万円

【参考】厚生労働省「平成 28 年 国民生活基礎調査の概況」 詳しくはこちら

また、厚生労働省の「保育士等に関する関係資料」によると保育士の平均年齢は34.8歳。
30代の平均貯蓄額が403.6万円なので、6割の保育士が預貯金ゼロというのは、かなり深刻な数字に思えます。

【参考】ほいくジョブ「気になる保育士の貯金事情!貯金術も教えます!」 詳しくはこちら
【参考】平成27年 保育士等に関する関係資料「保育士の平均賃金等について」 詳しくはこちら

保育士の年収は約348万円

保育士の年収は約348万円

それでは、保育士の年収はどうなっているのでしょうか?
厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、女性の保育士全体の平均年収は348万5,900円となっています。すべての勤労者の平均年収は460万6,000円ですので、保育士とは約112万円の差があり、月額でみると10万円近い差になります。

また、保育士の平均年齢は34.8歳なので近い年代で比較してみると、女性の保育士(35歳から39歳)の平均年収は360万7,600円、勤労者(35歳から39歳)の平均年収456万2,300円と、約95万円低い年収となっています。

女性保育士と勤労者全体の年代別年収・月収

年齢区分 女性保育士 月換算 勤労者全体
との比較
勤労者全体 月換算
20歳~
24歳
287万
8,100円
23万
9,842円
98.9% 290万
9,700円
24万
2,475円
25歳~
29歳
334万
5,600円
27万
8,800円
94.0% 356万
29万
6,667円
30歳~
34歳
348万
3,900円
29万
325円
84.8% 410万
7,600円
34万
2,300円
35歳~
39歳
360万
7,600円
30万
633円
79.1% 456万
2,300円
38万
192円
40歳~
44歳
377万
8,400円
31万
4,866円
75.7% 498万
9,100円
41万
5,758円
45歳~
49歳
381万
8,500円
31万
8,208円
70.4% 542万
2,500円
45万
1,875円

【参考】厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より算出 詳しくはこちら

もちろんここから、税金や社会保険料が引かれるので、手取りを額面の8割程度だとすると、特に家賃の負担が大きくなる一人暮らしの女性保育士が預貯金をすることは簡単ではありません。

保育士資格の取得と就職先

保育士資格の取得と就職先

保育士は国家資格で、「保育士資格」を取得し、都道府県知事に登録申請、保育士証の交付を受けることで保育士として働くことができます。
資格の取得のためには、都道府県知事の指定する保育士を養成する学校やその他の施設で所定の課程・科目を履修し卒業するか、年2回実施される保育士試験を直接受験し合格することが必要です。
保育士資格を取得した人の就職先は、認可保育所だけでなく、学童保育所や放課後デイサービス、児童館などがあります。先にあげた年収は女性保育士全体の平均ですが、就職先によっても年収に差があることも。

保育士の待遇改善へ〜行政の施策と今後の見通し〜

政府は保育士の賃金改善や、キャリアアップの取り組みを行った保育園に対して、補助金を支給するなどの待遇改善策を進めています。また地方自治体が独自で、保育士の処遇改善に力を入れるところもあり、今後、保育士の収入は増加傾向にあると見られています。

預貯金額を増やすための工夫

預貯金額を増やすための工夫

保育士として働いていく上で、将来の生活設計を考えるためにも、預貯金をしていくことは大切です。

もちろん決して多いとはいえない収入の中で、預貯金をしていくことは簡単なことではありません。ただし、必ずしも収入が多い人の預貯金が多いわけではなく、生活の中でお金を貯める習慣の工夫をすることが大切です。

先取り貯金

預貯金を増やすために有効なのは、月々に決まったお金を半ば強制的に積み立てていくことです。
方法としては、勤務先の保育所等に財形貯蓄制度がある場合は、給料やボーナスから天引きして積み立てる財形貯蓄が利用できます。
金融機関の自動積立定期預(貯)金もあります。例えば毎月1万円などと指定して、自分の口座の預金が自動振替で積み立てられて行くものです。
こうした天引きや自動での積立は、お金が増えていくという効果と、無駄遣いを抑える効果があるので活用を検討すべきです。

固定費の見直し

また、自身の収入を預貯金に振り向けるために、必要なことは、毎月支払うことが決まっている固定費を見直すことです。
例えば、家賃は固定費の中で最も大きな比率を占めるものです。家賃を1万円下げると仮定して、通勤時間や駅からの距離、住まいの広さなどの条件がどう変わるのかを検討してみてはいかがでしょうか。
さらに、主にスマートフォンなどの通信費が突出しているという方も多いのではないでしょうか。格安スマホなど、選択の幅は広がっていますので比較してみましょう。

クレジットカードの使い過ぎに気をつける

クレジットカードの買い物の支払いの返済も、注意しておく必要があります。その場で現金が減らないことから、支出の意識や管理が難しくなって、ついつい使い過ぎてしまう傾向にあるクレジットカード。預貯金を増やすことを考えるなら、安易なカードの利用は気をつけましょう。

面倒な変動費はアプリなどで管理を

面倒な変動費はアプリなどで管理を

月々変動する支出にも注意が必要です。
定期的なイベントではない友人の結婚式などのお祝いや、自身の裁量に依るところが大きい趣味のお金などは、時期も金額も変動するため管理が難しいと思います。ですが、できるだけストレスがないようにお金を増やすためには、そのような変動費のお金の流れも「見える化」しておくことが大切です。

そこでおすすめなのは、手軽に利用できる家計簿アプリです。レシートを自動で読み取ってくれたり、収支の状況をグラフやカレンダーにしてひと目でわかるような工夫があったりと、上手に使えば節約意識が高められ、楽しみながらお金を管理するのに役立ちます。

預貯金を増やすためには、預貯金に回すお金も含めた月々にかかるお金を、月収以下に抑えることが基本です。家計簿アプリを使うことで、衝動買いなどを抑制することもでき、計画的な支出コントロールが可能になります。
早い時期から預貯金の習慣をつけて増やした預貯金は、将来のみなさんにさまざまな選択肢を与えてくれるものとなるでしょう。

まとめ

少子化対策は日本の将来にとって重要な施策の一つで、政府が掲げる「1億総活躍社会」の中核となる施策です。その中で保育士にかかる期待は大きいものの、実際の待遇は決して恵まれているとはいえませんでした。
今後、待遇改善に向けた取り組みが進む中で、保育士の待遇の向上が期待されますが、保育士自身も将来に備えるために預貯金をしていく必要があるでしょう。

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