喪主?相続人?葬儀費用の負担をする人は誰?

葬儀費用には、会場費用や棺の料金、通夜や告別式での飲食接待費などの追悼儀式に掛かる費用、埋葬に関わる費用などが含まれます。葬儀の規模や内容によって、費用の総額は数十万円から数百万円までとさまざまです。この記事では、そんな葬儀費用はいったい誰が負担すべきなのかをまとめています。

喪主?相続人?葬儀費用の負担をする人は誰?

葬儀費用は誰が負担すべきなのか

葬儀費用は誰が負担すべきなのか

大切な人が亡くなって、悲しみに暮れている最中にも、葬儀の準備は行わなければいけません。そんな時にぶつかる疑問の一つは、葬儀費用は誰が負担するのかということです。葬儀費用は、最低でも数十万円と高額になるため、支払うとなると大きな支出になります。しかし、この大きな支出である葬儀費用は、法的には誰が負担すべきか決まっていません。決まりがないと葬儀費用を誰が負担するかによってトラブルに発展する可能性もないとは言い切れません。未然にトラブルを防ぐには、生前から話しにくい内容ではあるものの、葬儀費用の支払いについて話し合いの場を設けておくことをおすすめします。

一般的には喪主の負担とされやすい

喪主は、長男が務めるのが一般的ですが、最近では故人の配偶者が喪主を務めるケースも多くなっています。長男も配偶者もいない場合、長女または両親が務めることも。葬儀費用を負担する人は決まっていませんが、葬儀の詳細の決定権は喪主にあります。そのため、決定権を有する喪主が葬儀費用を負担する傾向が多いと言えるでしょう。

相続人の負担や相続財産から捻出するという慣習もある

喪主が葬儀費用を負担するという慣習がある一方で、相続人の負担や相続財産から捻出するという慣習もあります。葬儀費用を誰が支払うか明確になっていないことが原因で、誰が支払うか法廷で争うまでに発展するケースもあるので注意が必要です。

葬儀費用の不足分は香典で賄われる場合もある

葬儀費用の不足分は香典で賄われる場合もある


死者の霊前に供えられる香典には、遺族に送られるものという意味もあるため、葬儀費用に当てることができます。葬儀費用は少なく見積もっても数十万円なので、残された遺族にとっては大きな支出です。香典の習慣があることで、遺族の金銭的な負担が軽減されます。葬儀費用の支払いは、一般的に葬儀が終了してから数日以内のケースが多いため、手元にある予算が少ない場合でも、香典で集まったお金をそのまま支払いに回すことができます。ただし、香典がいくら集まるかは葬儀が終わるまでわからないので、香典で集まるお金をあてにし過ぎないように注意が必要です。

故人の契約や関係者間の合意があればそれに従う

近年では、亡くなる前に自分が亡くなった後に備える「終活」をする人が増えています。その終活において自分が亡くなる前に葬儀の契約を締結した方は、葬儀費用の支払い方法についても自分の財産から支払う契約をしているケースが多いです。その場合は、いったん喪主または相続人が葬儀費用を負担し、その後遺産分割協議の際に葬儀費用分を差し引いた残額を相続人で分割することになります。また、故人の関係者間で合意があれば、葬儀費用を長男のみが負担する、複数人で負担するといった対応をすることも可能です。

葬儀費用負担の問題に備える「遺言代用信託」

葬儀費用負担の問題に備える「遺言代用信託」

通常、亡くなった人の銀行口座からご家族の方がお金を引き出す場合には、相続に関する手続きを済ませる必要があります。例え配偶者や子供などの相続人であっても、すぐに引き出すことはできません。これは、遺産分割協議で財産分与の配分が決まる前に、誰かが勝手に口座のお金をおろしてしまわないようにするための措置です。葬儀費用を亡くなった方の財産で支払いたいと思っても、遺産分割協議が終了するまでは口座からお金を引き出すことはできません。そんなトラブルに備えられるのが「遺言代用信託」です。

遺言代用信託とは

遺言代用信託は、亡くなる前に信託銀行に金銭を信託して、亡くなった後にその金銭を事前に指定した相手(配偶者や子供など)に引き継ぐことができるものです。

遺言代用信託のメリットと注意点

遺言代用信託なら、預金口座のように遺産分割協議の手続きは不要なため、相続人は簡単な手続きでお金をスムーズに引き出すことができます。また、生存中は預けたお金を契約者本人が使うこともできるので、急な出費にも対応ができます。ただし、いくつか注意事項があります。まず、信託銀行によって元本保証がされる場合とされない場合があるということです。また、受取人に指定できる人の範囲、手数料や管理報酬の有無、信託可能な期間、お金の受け取り方法なども信託銀行によって異なります。遺言代用信託を利用する際には、事前に十分条件を確認しましょう。

葬儀費用負担の問題に備える「遺言信託」

葬儀費用負担の問題に備える「遺言信託」

遺言代用信託と名前が似ている「遺言信託」というものがあります。名前は似ていますが、内容は大きく異なりますので、その違いについて説明します。

遺言信託とは

遺言信託は、信託銀行等が遺言書作成の相談から、遺言書の保管、そして本人が亡くなった後に、遺言書の内容に沿って相続の手続きをサポートするサービスです。

遺言信託のメリットと注意点

遺言信託のメリットと注意点

遺言信託で財産に関する遺言をしっかりと残しておくと、葬儀費用を負担する可能性が高い人に、財産が渡るようにすることが可能です。ただし、遺言信託の場合には遺言代用信託の場合と異なり、遺言書に基づいた相続手続きが完了することで、ようやく相続人の財産としてスムーズに引き出すことが可能になります。
上記の理由から、スムーズに葬儀費用を指定した人に引き継ぐためには、遺言代用信託を利用することをおすすめします。

まとめ

葬儀費用の負担をする人に決まりはありません。だからこそ、喪主が負担するという説や相続人が負担するという説があるのです。そのため、葬儀費用支払いをめぐって、トラブルに発展してしまうことも少なくはありません。葬儀は人生を締めくくる大事な行事です。その葬儀費用が原因でトラブルが起こってしまうのは、とても悲しいことです。そんな葬儀費用に関するトラブルを回避するために、信託を検討することもおすすめです。葬儀費用を負担することが見込まれる方に、よりスムーズに引継ぎたいのであれば、遺言代用信託を利用することを検討してはいかがでしょうか。

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