寸志の意味とは?渡す場面・渡し方・相場・お返しについても解説

寸志とは「少しの気持ち」「わずかの厚意」という意味で、贈り物をするときには、「心ばかりの贈り物」「ちょっとした気持ちを込めた贈り物」という意味でも使います。基本的には贈り物や金銭を贈る側が謙譲して使う言葉です。この記事では寸志の意味、渡すときのマナーや相場、お返しの仕方などを解説します。

寸志の意味とは?渡す場面・渡し方・相場・お返しについても解説

寸志とは?

寸志とは?

寸志の「寸」はもともと長さの単位ですが、転じて「ほんの少し」という意味があります。また、「志」には「相手のことを思う気持ち」や「相手を慕う気持ち」という意味があり、合わせて「相手に対するちょっとした心遣い」を示す言葉が「寸志」となります。そのため寸志として実際に贈る物や金額自体は、それほど高いものにはならないことが一般的です。
また、寸志は誰かに対して贈り物をするとき、贈るほうが謙譲して使う言葉です。目下の人が目上の人に向けて使うことは、使い方としてマナー違反とされています。上司が部下に「寸志」を贈るのは良いのですが、逆の場合は「御礼」などを使います。

ボーナスや賞与との違い

社員に対して支払われるボーナスや賞与を「寸志」と称する会社もあります。これらの違いは明確には定められていません。名称に関係なく、毎月の給料以外に臨時で支払われるお金は経理上では同じ扱いとなりますし、課税対象にも入ってきます。
しかしながら一般的には、ボーナスや賞与は支払いの時期や金額の算出基準がある程度決まっているものです。額としてもそれなりにまとまったものになります。
それに比べて「寸志」と付ける場合は、部課の目標金額の達成や営業成績が優秀で表彰されるなどのお祝いとして出されるケースや、ボーナスが支払われる基準に達していない人に、会社から働いてもらった感謝の気持ちを伝えるケースなどがあります。

寸志と「ご厚志」「ご芳志」は別のもの?

寸志と「ご厚志」「ご芳志」は別のもの?

寸志に似た言葉として、他にも「ご厚志」や「ご芳志」などがあります。いずれも「志」が付きますが、ここではその使い方の違いなども含めて見ていきましょう。


まず、「ご厚志」はその名の通り「厚い志」という意味です。「厚」には「ゆたかな」「てあつい」などの意味があり、「志」と合わせて「ゆたかな思いやり」「てあつい親切心」といった語意となります。実際に使用されるのは主に宴会や行事の場面です。主賓など目上に当たる人が幹事にお金を渡します。そもそも主賓であれば会費を払う必要はないのですが、感謝を示すためにお金を包んでいくことがあります。また上司であれば、会費以上の金額を渡すこともあるでしょう。

一方の「ご芳志」も「ご厚志」と同様の状況で使われます。「芳」には「相手に対して敬意を表す」意味があり、「志」と合わせて「相手をうやまう心遣い」という意味があります。「芳志」はそれ自体が尊敬語で、「厚志」よりもかしこまった表現です。

そのほかに義援金、協賛金、寄付、品物も「ご芳志」「ご厚志」に当たります。「どちらの場合も目上の人が幹事にお金を渡すときには、「寸志」として差し出すことが多いでしょう。しかし幹事の方では「寸志を頂きました」などと言ってはいけません。「ご厚志を頂きました」「ご芳志を頂きました」など、挨拶のタイミングで出席者に伝えるのがマナーです。もし本人が会に参加しなかった場合は、メールでお礼をしておきましょう

寸志の言い換え表現:「お心遣い」「松の葉」

「寸志」は多くの場合、お金を封筒に包み、表書きする言葉ですが、意味としてはちょっとしたお礼や厚意という意味で使われ、相手に対する心遣いを表し、誰かに対して送る些細な心配りのようなものです。この「寸志」を示す言葉として心遣いがありますが、「お心遣い」「お気遣い」「お気持ち」「お志」は日常的に使える言葉として覚えておくと良いでしょう。

また、表書きの用途としては他に、「松の葉」という言葉があります。一般的には目上または同格・同輩の人に、軽少なお礼などをする場合に使うもので、松の葉で包んだ程度の、ほんの少し(粗末)ではありますがという意味で、へりくだった表現になります。

用途によって贈る相手がどのような立場であるか、自身がどれくらいの気持ちで渡すのかという点を考えて、使い分けるのが良いでしょう。

「心ばかり」は目上の人にも使える

お礼の品やお金を渡す時の表書きには「心ばかり」という言葉も使うことができます。贈り物を渡す際に、「ささやか」「大したものではない」といった謙遜の気持ちを表す言葉です。

「寸志」が目上の人から目下の人に対して贈る時に使う言葉であるのに対して、「心ばかり」は自分がへりくだって使う言葉ですので、目上の人に贈る時にも使えます。

寸志を渡す場面は?

寸志を渡す場面は?

では、実際にどんな場面でどのように寸志を渡せばいいのでしょうか。使い方をケース別に見ていきましょう。

飲み会や歓送迎会で目上の人が幹事に渡す

ビジネスに絡んだ様々な行事は、寸志を渡す機会の多い場です。歓送迎会を筆頭に、新年会や忘年会、プロジェクトのキックオフや打ち上げ、もちろん普段の日常的な飲み会まで、会社ではさまざまな集まりがあるものです。それらの幹事役が自分の部下だったり、会に参加している中で自分が一番目上だった場合は、幹事を労い会費の負担を減らすために「寸志」を渡すようにしましょう。

慶弔事で主催側がお手伝いの人に渡す

寸志を渡すのはビジネスに関する場だけではありません。プライベートでも結婚式や葬儀などの慶弔事があったときには、寸志を渡すことがあります。例えば結婚式や披露宴で新郎新婦が、お手伝いをしてくれた人たちに寸志を渡すと喜ばれるでしょう。同じく葬儀で自分が喪主となった場合も、お世話係の方々や、火葬場の方、運転手の方などに寸志を渡すのはマナーとして定着しています。ただし、場所によっては寸志の受け取りを禁じていることもありますので、事前にスタッフの人に確認しましょう。

寸志の基本的な渡し方・返し方とマナーは?

寸志の基本的な渡し方とマナーは?

実際に寸志を渡す場合の表書きの書き方や封筒などについても、まとめてご紹介いたしましょう。

寸志に「のし」は必要?

寸志に使う袋については市販されているのし袋を使います。特に豪華なものである必要はありませんが、水引(袋に付いている紅白などの帯紐)のないものを選びましょう。そこに黒の筆ペンで「寸志」と表書きします。最初から「寸志」と印刷されたのし袋を使っても問題ありません。その下に自分の名前を書くのが正しい書き方です。

寸志を渡すタイミングはいつ?

寸志を渡すタイミングに明確な決まりはありませんが、宴会等の場合は、会の始まる前に渡しておくと良いでしょう。会社などで顔が合うメンバーなら、前の日に渡しておくと確実です。その際には、ねぎらいの言葉を添えることを忘れずにしましょう。

寸志をもらった場合のお返しはどうする?

寸志をもらった場合は、基本的にお返しは不要なので、お礼の言葉を伝える程度にとどめましょう。どうしてもお返ししたい場合は菓子折りや、お礼状を贈るのが一般的です。

寸志に相場はある?

寸志に相場はある?

寸志は「ちょっとした」金額でいいとは言っても、参考になる目安の情報がないと不安になります。ここでは相場について見ていきましょう。
まず、一般的な飲み会など会費制の宴会に参加する場合、設定された会費額よりも少し多めに包むのが基本です。例えば3,000円ならば5,000円、8,000円ならば1万円といった具合です。また、末広がりの「8」が縁起良いとされることから、会費が5,000円や6,000円の場合は、8,000円にするのも良いとされています。
結婚式や披露宴の場合、最も安くて3,000円、最も高い場合で1万円が目安です。実際にどの程度の手伝いをして頂くかでバランスを考えると良いでしょう。また、引っ越しなどでは1,000円から3,000円程度が一般的です。

まとめ

寸志は「ちょっとした」という意味であり、相手に気を遣わせないよう、金額的には概ね1,000円から1万円の間が妥当になります。それほど大きな金額ではありませんが、お世話になった人に気持ちを伝え、より良い関係を築くためには重要なものと言えるでしょう。
注意しなければならないのは、寸志はあくまで目上の人から目下に対して贈る場合の表現であることです。その意味を間違えるとマナー違反になってしまいます。目上の人には「御礼」などを用いるようにして、「寸志」という言葉は使わないようにしてください。

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