補助人とは?被補助人とは?補助人・被補助人についてわかりやすく解説!

認知症や知的障がいなどにより判断能力が不完全な人が、不利益を受難しないように、代行者が財産や権利を守る「成年後見制度」があることは知っていますか。この記事では「補助人」と、その補助人に財産管理を行ってもらう「被補助人」において、詳細に解釈します。成年後見制度の利用を考慮している人は、参考にしてみてください。

補助人とは?被補助人とは?補助人・被補助人についてわかりやすく解説!

補助人・被補助人とは

補助人・被補助人とは

補助人とは、成年後見制度において、判断能力が不完全な人の財産や権利を守る人です。その補助人に守られる人を「被補助人(以下:本人)」といいます。
成年後見制度では、補助人と同様の役割の人を保佐人、成年後見人と呼ぶ場合があります。いずれも、判断能力が不完全な人の財産や権利を守る役割を担っていますが、なぜ名称を分ける必要があるのでしょうか。

保佐人と補助人の違い

判断能力が不完全な人のレベルにより、それぞれ権限が異なるため、名称が分けられています。保佐人と補助人の違いとしては、本人の判断能力の欠如レベルが中程度か軽度かという点です。

被保佐人より被補助人の方が判断能力があるとされるため、同意権を利用するにあたって申し立てが必要です。
同意権とは、本人が自分の意思で行った法律的な行為に保佐人や補助人が同意する権利です。民法13条に記載されている事項に関しては、保佐人は申し立てなしに同意権を利用できます。

成年後見人と補助人の違い

成年後見人とは、被後見人が重度の認知症などで判断能力が常に欠けている場合に、財産管理や介護サービスの契約などの事務全般にわたってサポートする人です。そのため、被後見人を幅広くサポートするために、保佐人や補助人よりも多くの法定の権限が承認されています。

一番の違いとして、成年後見人には代理権が与えられています。これは、本人が行う特定の法律行為を代わって行うことができる権限のことです。補助人も申し立てを行えば代理権を付与されることがありますが、権限はごく一部に限られています。

補助人が被補助人に対してできること

補助人が被補助人に対してできること

補助人は、本人の判断能力のレベルがやや不完全であるものの、足りない部分を補う程度の支援を行うため、本人の意思を尊重することが重要です。限られた法的権限の範囲内で、「同意権」「取消権」「代理権」を執行しますが、家庭裁判所への申し立てが必要な場合がほとんどです。

重要な財産における行為への同意権

自分の判断能力に自信がない人は、不動産の購入や売却、遺産の分割協議など、財産における重要な意思決定を自分1人だけで行えないケースが考えられるでしょう。その際に、内容が妥当であるかを判断して、後押しする役割が同意権にはあります。

補助人が同意できる行為には、民法13条1項で定められた以下のようなものがあります。
・金銭の貸借、保証人になる行為
・不動産の売買、賃貸借
・訴訟の提起
・財産の贈与
・遺産の分割、相続の承認・放棄
・建物の新築や大規模な改築
・長期の賃貸借
など

基本的に、被補助者から補助者に対して同意権の行使を求め、家庭裁判所に申し立てを行わなくてはいけません。家庭裁判所から権限を付与された重要な法律行為のみ、同意権を行使できます。

補助人の同意なくして行った行為の取消権

補助人の同意権がなく行われた重要な意思決定は、取消権を用いて契約を破棄することができます。
不動産の売買であればその売買契約は取り消され、金銭の貸借であればその貸借契約自体は無効になります。

ただし、取消権も、家庭裁判所により補助人に同意権が付与されている重要な法律行為に限られます。

家庭裁判所の審判により執行できる代理権

代理権は、本人が行う特定の法律行為を補助人が代わって行うことができる権限のことです。同意権と同様に、家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。
例えば、介護施設の入所契約や費用の支払い、不動産の売却、相続の承認や放棄などを行う際に、本人による申し出、家庭裁判所の承認があれば補助人が本人に代わって行うことができます。

被補助人が補助人からの保護を必要とする場合

被補助人が補助人からの保護を必要とする場合

判断力が不完全な高齢者を狙った悪質な犯罪が、後を絶ちません。また、正当な取引においても、十分な判断能力を持ち合わせず、トラブルが発生する事例もあるため、補助人による保護が必要な場合があるでしょう。

ただし、日常生活においては問題がなく、被後見人や被保佐人ほど判断能力が衰えていない人や、一般人と比べてやや不完全な人(法律上は「事理弁識能力が不十分な者」とされています。)を被補助人として定義しています。では、どのような場面で、被保佐人の保護が求められるのでしょうか。

適切にお金を使うことができない

商品の無料配布や格安販売などで注目を集める販売員に出くわしたら、要注意です。冷静な判断ができなくなると、販売員の巧妙なトークや誘惑に惑わされ、高額な商品を購入してしまう可能性を否めません。

金銭の貸借や高額な商品の勧誘に不安感のある人は、補助人の保護があると安心でしょう。

将来的に資産の管理を任せたい

今は問題なくとも、将来的に判断能力が鈍くなったときのために適切な財産管理をしたいと思う方は多いでしょう。被保佐人ほど緊急性はなくても、最近物忘れが増えてきたと感じるなど心配な人は、現状では補助人による保護が適しています。

家族による使い込みのおそれがある

将来の老人施設入所のために、コツコツと蓄えた財産を家族や親族が勝手に使ってしまうかもしれないという懸念がある際にも、補助人に財産管理を任せることがよいでしょう。補助人は、権限が限定的であるため、本人の意思を尊重した上で、適切かつ公正に管理してもらうことができます。

補助人が被補助人の保護を開始する流れ

補助人が被補助人の保護を開始する流れ

どのようなタイミングで補助人が必要になり、どのような要件で補助人に任命され、どのようにして補助人による保護が開始されるのでしょうか。

補助人が必要だと判断するタイミング

重要な契約や高額の取引の際には、冷静な判断力が欠かせません。判断能力に自信がない場合、補助人による適切なサポートが求められます。サポートを要するタイミングとして、

・金銭の貸借、保証人になる行為
・不動産の売買、賃貸借
・訴訟の提起
・財産の贈与
・遺産の分割、相続の承認・放棄
・建物の新築や大規模な改築
・長期の賃貸借

などが挙げられます。特に、民法13条1項で定められた上記のような重要な場面において、補助人が本人の財産を守るためにサポートします。

補助人になるための要件

補助人は、希望する人が自由になれるわけではありません。補助人として本人の保護を開始するためには、家庭裁判所に補助人の選任を申立てる申立人が補助人の候補者を選びます。

通常、親族の中から誠実で信頼できる人に依頼することが多いでしょう。また、親族以外の知人や法律専門家への依頼も認められています。しかし、家庭裁判所の審判により、申立てをした候補者ではなく、第三者の弁護士や司法書士が任命される場合もあります。

補助人は、本人の財産管理を適切に進め、家庭裁判所から請求があった場合には、財産管理の事務記録となる帳簿や資料を提出しなければなりません。つまり、補助人となるためには、本人に不利益が生じないように、本人の意思を尊重した財産管理ができることと、適切な事務処理能力が求められます。

補助人に保護してもらうために必要なもの

補助人による保護を求める際には、まず補助人の候補者を挙げて、家庭裁判所に選任してもらう手続きを進めます。補助開始等申立書に必要事項を記入して、本人の居住地の家庭裁判所に提出しましょう。申立書に添付する書類は、以下の通りです。

・本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・本人と補助人候補者の住民票または戸籍附票
・本人の診断書
・後見制度用の本人情報シートの写し
・本人の健康状態に関する資料
・本人の成年被後見人等の登記がないことの証明書
・本人が保有する財産の資料
・本人の収支における資料
・同意権・代理権を要する行為における資料
・親族関係図、候補者の身上書等家庭裁判所から求められる書類

出典 

他に費用として、申立て手数料と登記手数料となる収入印紙、郵便切手なども用意します。

家庭裁判所が申立書に基づき、実態を調査して補助人が選任されたら、家庭裁判所から通知が届きます。その後、東京法務局に審判内容が登記され、補助人による保護が開始されるのです。

補助人にサポートしてもらう際の注意点

補助人にサポートしてもらう際の注意点

成年後見人は、判断能力が常に欠けている人の財産管理の全てを任されていますが、補助人に任せられる範囲には限りがあることに注意しましょう。また、補助人に対して、本人が保有する不動産や預貯金、有価証券などの財産を、漏れなく開示しなければなりません。

さらに、補助人が財産管理などの事務を務める上で、家庭裁判所が認めれば、事務の内容に応じて本人の財産から報酬を支払います。補助人が家族であれば報酬が不要な場合もありますが、補助人が家庭裁判所に報酬の申立てを行い、報酬承認の審判が下った場合は、所定の額を支払わなければなりません。

判断能力が低下したときは保佐人からの保護を検討しよう

補助人は、成年後見制度において、判断能力がやや不完全な人の財産管理をサポートする人です。本人は判断能力のレベルが軽く、問題なく日常生活ができる人が大半で、成年後見制度の中では最も限定的な範囲の援護を要します。

もし、判断能力がさらに低下したと見受けられる場合は、補助人ではなく、保佐人や成年後見人への類型変更の手続きをお勧めします。診断の結果、保佐や後見が必要なレベルであると審判が下れば、補助人ではサポートできない幅広い法律行為へのサポートが可能です。判断能力の低下のレベルに応じて、安心できる保護を受けましょう。

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