個人事業主もふるさと納税ができる!上限額や控除額、メリットを解説

個人事業主がふるさと納税を利用する場合、上限額や利用方法に給与所得者との違いがあります。本記事では、個人事業主のふるさと納税控除上限額の計算方法や所得に応じた大まかな控除額の目安、確定申告の記入方法、注意点などをまとめました。個人事業主にもメリットが大きい制度なので、ぜひ活用してみてください。

個人事業主もふるさと納税ができる!上限額や控除額、メリットを解説

個人事業主・自営業でもふるさと納税はできる!

個人事業主・自営業でもふるさと納税はできる!

応援したい自治体を自由に選び、お金を寄付することができる「ふるさと納税」。寄付のお礼としてさまざまな返礼品を受け取ることができ、さらに所得税の還付と住民税の控除を受けることができます。

会社員などの給与所得者にメリットが多いイメージがあるかもしれませんが、ふるさと納税は誰でも利用できる制度です。個人事業主でも自営業者でも、控除上限額(自己負担額)などの注意点を守れば、節税効果を受けながら返礼品を楽しむことができます。

個人事業主はここが違う!控除額の上限額

個人事業主はここが違う!控除額の上限額

ふるさと納税では、原則として寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が控除の対象となります。ただし、控除には上限額があり、上限額を超えた分は全額自己負担となるため、注意が必要です。

控除上限額は所得や家族構成によって変わり、個人事業主の場合、ふるさと納税をする年の1月〜12月の事業所得によって上限額が決まります。
そのため、給与所得者と異なり、年間の所得をしっかり予測して上限額を判断する必要があるのです。

具体例として、ふるさと納税を行う本人の事業所得と家族構成別の控除限度額の目安を示します。

・事業所得300万円、独身の場合69,000円
・事業所得700万円、共働き夫婦の場合  194,000円
・事業所得1,000万円、共働き夫婦+大学生(子)一人の場合 279,000円

出典 

【参考】ふるラボ|地域とあなたを元気にするふるさと納税「個人事業主がふるさと納税をする場合「控除限度額」はいくら?ふるさと納税のやり方もご紹介 - コラム|ふるラボ」詳しくはこちら

ふるさと納税の上限額の計算方法

ふるさと納税の上限額の計算方法

個人事業主の方が、前年の所得を参考にしてふるさと納税の上限額を計算する場合の計算方法を紹介します。

控除上限額 = ① 住民税所得割額 × ② 課税所得に応じた変数 +2,000円(自己負担分)

出典 

確認する際は、お手元に「前年の所得税の確定申告の控え」と「今年の住民税課税決定通知書」を用意してください。

まず、①「住民税所得割額」を求めます。
住民税決定通知書に記載されている「都道府県税の税額控除前所得割額」と「市民税の税額控除前所得割額」を参照し、合計します。合計した金額が「住民税所得割額」となります。

次に、②「課税所得」を参照します。
前年の所得税の確定申告の控えに記載されている、課税される所得金額を参照してください。

計算式にある「課税所得に応じた変数」は、課税所得金額に応じて段階的に変わります。
以下の表から、課税所得金額から課税所得に応じた変数を参照し「上限額の計算式」にあてはめると、控除上限額を算出することができます。

ふるさと納税控除上限額 算出表

課税所得額 控除上限額
~194万9,000円 住民税所得割額×23.559%
+2,000円
195万円~329万9,000円 住民税所得割額×25.066%
+2,000円
330万円~694万9,000円 住民税所得割額×28.744%
+2,000円
695万円~899万9,000円 住民税所得割額×30.068%
+2,000円
900万円~1,799万9,000円 住民税所得割額×35.520%
+2,000円
1800万円~3999万9,000円 住民税所得割額×40.683%
+2,000円
4000万円~ 住民税所得割額×45.398%
+2,000円

なお、前年と所得金額が大きく変わる場合や、より正確な金額を知りたいという場合は、市区町村の住民税担当部署・税務署・税理士などに確認するようにしてください。

ふるさと納税の上限額の目安

計算式を使わず、上限額の目安が分かればいい、という場合は住民税決定通知書に記載されている住民税所得割額の2割程度を目安にするとよいでしょう。

ただし、目安金額ギリギリまでふるさと納税をしてしまうと、限度額を超えてしまうこともあります。不安な場合は、目安金額の8割程度にとどめておくといいでしょう。

また、ふるさと納税を扱う各種ポータルサイトにおいて、シミュレーションができる場合もあります。給与所得者向けが多いですが、なかには個人事業主向けのシミュレーションが可能なサイトもありますので、気になる方は探してみてください。

個人事業主のふるさと納税の税控除額は?

個人事業主のふるさと納税の税控除額は?

ふるさと納税をすると、2,000円を除いた金額が「寄附金控除」として所得・税額控除されます。少々、複雑な仕組みになりますが「寄附金控除」において所得税は所得控除になり、残りの額が住民税より所得・税額控除されるような形になります。

所得税はふるさと納税をしたその年に還付されますが、住民税は翌年の控除となります。所得税と住民税とで控除のタイミングが異なることを覚えておきましょう。

ふるさと納税の所得・税額控除は、所得税と住民税で計算方法が異なるため、それぞれ算出するようにしましょう。
また、住民税には基本分と特例分があり、別の式で計算します。

所得税控除の計算方法

ふるさと納税をすると、所得税の「寄附金控除」の対象になります。寄附金控除では、寄附金額から2,000円を差し引いた金額が所得額から差し引かれます。

(寄付額 – 2,000円) × 所得税の税率

出典 

※所得税の税率は、課税所得によって異なるため、以下の表を参考

所得税率早見表

課税所得額 税率
~194万9,000円 5%
195万円~329万9,000円 10%
330万円~694万9,000円 20%
695万円~899万9,000円 23%
900万円~1,799万9,000円 33%
1800万円~3999万9,000円 40%
4000万円~ 45%

住民税控除(基本分・特例分)の計算方法

ふるさと納税をすると住民税からは、通常の寄附金控除と特例分の控除の2種類が差し引かれます。

通常の寄附金控除(基本分)は、ふるさと納税の寄附金額から2,000円を引いた金額の10%が控除されます。
特例分は、ふるさと納税の寄附金額から2,000円を引いた金額と、所得税と住民税の基本分で控除される分の差額になります。

■基本分

(寄付額 – 2,000円) × 10%

出典 

■特例分

(寄付額 – 2,000円) × (100% – 10% – 所得税の税率)

出典 

※上記で算出した金額が住民税所得割額の20%を超える場合は、住民税所得割額×20%が適用

個人事業主がふるさと納税をするメリット

個人事業主がふるさと納税をするメリット

個人事業主がふるさと納税をするメリットは、大きく2つあります。

1.給与所得者よりも控除上限額が大きくなる

個人事業主には、給与所得者のような給与所得控除がありません。給与所得者と同じ収入の場合でも、個人事業主の方が所得金額は大きくなります。
そのため、一般的に個人事業主の方がふるさと納税の控除上限額が大きくなります。給与所得者よりもふるさと納税を効率的に利用することができるでしょう。

2.通常の確定申告のなかで申請できる

個人事業主は、基本的に毎年確定申告を行っています。ふるさと納税による寄附金控除を受けるのに特別な工程を挟むわけではなく、いつも行っている確定申告の記入箇所が1つ増えるだけでふるさと納税のメリットを享受することができます。

確定申告に慣れていない給与所得者よりも、ふるさと納税を始めるハードルは低いといえるでしょう。

ふるさと納税の確定申告の方法

ふるさと納税の確定申告の方法

ふるさと納税の控除を受けるには、確定申告の際に「寄附金控除」の手続きを行う必要があります。
寄附金控除とは、扶養控除や配偶者控除と同様「所得控除」の1つです。確定申告での手続きを忘れると、控除が受けられなくなってしまうので気を付けましょう。

寄附金控除を申請する際の必要書類として「寄附金受領証明書」の添付・提示が必要です。寄附金受領証明書は、ふるさと納税した自治体から納税後しばらくして送られてきます。
確定申告まで紛失しないよう、慎重に保管しておきましょう。

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以下に、寄附金控除を申請する際の記入項目・内容を紹介します。
ほとんどの記入内容は「寄附金受領証明書」に記載されているので、手元に書類を用意しておきましょう。

1. 確定申告書 第一表「所得から差し引かれる金額」の「寄附金控除 ㉘」に「ふるさと納税の金額-2,000円」または「所得金額の合計×40%」の内、少ないほうの金額を記入します。

例えば、ふるさと納税を行った寄付額が5万円、所得金額の合計が300万円とします。その場合「5万円-2,000円=4万8,000円」と「300万円(所得金額の合計)×40%=120万円」となるので「4万8,000円」を記入します。

2. 確定申告書 第二表「寄附金控除に関する事項(㉘)」に、寄付をした自治体名と寄附金額を記入します。複数の自治体に寄付をした場合は「〇〇県○○市ほか」として、寄付した金額の合計額を記入します。寄付した金額の合計額は「寄附金受領証明書」を参照してください。

3. 確定申告書 第二表 「住民税・事業税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄付(特別控除対象)」に、先ほど記入した寄附金の合計額を転記します。
最後に「寄附金受領証明書」を添付して確定申告をすれば完了です。

個人事業主のふるさと納税の注意点

個人事業主のふるさと納税の注意点

個人事業主がふるさと納税を行う場合、給与所得者では受けられる制度が受けられないなど、考慮すべき事項があります。

ワンストップ特例制度が利用できない

ふるさと納税には「ワンストップ特例制度」という制度があります。
これは、寄付した自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出することで、確定申告なしで控除が受けられるというものです。寄付先の自治体が5団体までという条件はありますが、手軽に寄附金控除が受けられる便利な制度なので、多くのふるさと納税利用者が活用しています。

しかし、ワンストップ特例制度には「ふるさと納税の有無に関わらず確定申告が不要であること」という条件があります。
ふるさと納税に関わらず、確定申告が必要な個人事業主はこの条件に当てはまらないため、ワンストップ特例制度を利用することはできません。

控除上限額が一定でない

本記事でも紹介したように、ふるさと納税の控除上限額は所得によって変わります。毎年の所得が一定でないことも多い個人事業主は、前年の控除上限額が参考にならないことも多いでしょう。
控除上限額を超えないよう、自分の収入や経費を管理して、寄附金額の確認が必要です。

寄附金受領証明書を保管しておく

確定申告には「寄附金受領証明書」が必要になります。
ふるさと納税を行うと、寄付を行った証明として、寄付先の自治体から「寄附金受領証明書」が届きますが、届くタイミングは自治体によって異なります。返礼品と一緒に届く場合や、返礼品とは別に送られてくる場合もありますので、注意しましょう。

確定申告を行う時期まで、バラバラに届く「寄附金受領証明書」を大切に保管しておく必要があります。

確定申告を忘れずに行う

ふるさと納税をしたら、確定申告を忘れずに行いましょう。確定申告は毎年2月16日~3月15日の期間に申請ができます。個人事業主として通常行っている確定申告に加えて、寄附金控除を忘れずに記入するようにしましょう。

まとめ

個人事業主でもふるさと納税をすることができます。ふるさと納税は、所得税・住民税の控除や自治体からの魅力的な特産品がもらえるなど、多くの面でメリットのある制度です。

個人事業主のふるさと納税は、給与所得者と上限金額や控除額の計算方法が異なります。
本記事で紹介した控除上限額の計算方法は目安を算出するものであり、実際の控除額と一致するとは限りません。
その他、不明点があれば確定申告前に税理士などへの相談することをおすすめします。

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