個人事業主は要注意!ふるさと納税の限度額や申告方法
個人事業主がふるさと納税を利用する場合、給与所得者とは控除が受けられる金額や利用方法に違いがあります。そこで本記事では、個人事業主のふるさと納税控除上限額の計算方法や所得に応じた大まかな控除額の目安、確定申告の記入方法、注意点などをまとめました。

個人事業主はここが違う!控除額の上限額

自治体から、さまざまなお礼品を受け取れる「ふるさと納税」。ふるさと納税は、自己負担額の2,000円を払えば、お礼品を受けとれるだけでなく、所得税の還付と住民税の控除も受けられるのがメリットです。ただし、注意しておきたいのが、控除の上限額。ふるさと納税の控除には上限が設定されており、それを超えて寄付を行っても、控除を受けることはできません。
さらに押さえておきたいのが、控除の上限額は個人事業主か給与所得者かによって異なるということです。控除の上限額は、年収、家族構成、住所などによって決定します。この年収において、個人事業主と給与所得者では、控除や経費などの考えが異なるため、同じ年収でも控除の上限額が異なるのです。単純に年収とふるさと納税の控除額だけを考えると、個人事業主の方が控除額は大きくなります。その目安は、住民税決定通知書に記載されている住民税所得割額の2割程度です。
家族構成なども考えた場合の具体的な控除額は以下のとおりです。
・所得300万円、独身の場合 69,000円
・所得700万円、夫婦の場合 184,000円
・所得1,000万円、共働き+大学生(子)1人の場合 279,000円
上限額の計算方法

控除の上限額をきちんと知りたいという方は、以下の方法によって上限額を計算できます。ふるさと納税の控除は、所得税と住民税で計算方法が異なるため、それぞれ算出するようにしましょう。また、住民税には基本分と特例分があり、別の式で計算します。
所得税控除の計算方法
(寄付額 – 2,000円) × 所得税の税率
※所得税の税率は、課税所得によって異なるため、以下の表を参考
所得税率早見表
課税所得額 | 税率 |
---|---|
~194万9,000円 | 5% |
195万円~329万9,000円 | 10% |
330万円~694万9,000円 | 20% |
695万円~899万9,000円 | 23% |
900万円~1,799万9,000円 | 33% |
1800万円~3999万9,000円 | 40% |
4000万円~ | 45% |
住民税控除(基本分)の計算方法
(寄付額 – 2,000円) × 10%
住民税控除(特例分)の計算方法
(寄付額 – 2,000円) × (100% – 10% – 所得税の税率)
※上記で算出した金額が住民税所得割額の20%を超える場合は、住民税所得割額×20%が適用
上記の計算方法のほかに、前年度の収入をもとにしても控除上限額を計算できます。こちらの方法で計算する場合は、確定申告書の控えと住民税課税決定通知書を手元に用意しましょう。以下の計算式で、上限額の目安を計算できます。
控除上限額 = 住民税所得割額 × 課税所得に応じた変数 +2,000円
※住民税所得割額は「課税所得額 × 10%」で計算
※課税所得額は確定申告書の控えで確認
ふるさと納税控除上限額の目安
課税所得額 | 控除上限額 |
---|---|
~194万9,000円 | 住民税所得割額×23.559% +2,000円 |
195万円~329万9,000円 | 住民税所得割額×25.066% +2,000円 |
330万円~694万9,000円 | 住民税所得割額×28.744% +2,000円 |
695万円~899万9,000円 | 住民税所得割額×30.068% +2,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 住民税所得割額×35.520% +2,000円 |
1800万円~3999万9,000円 | 住民税所得割額×40.683% +2,000円 |
4000万円~ | 住民税所得割額×45.398% +2,000円 |
ふるさと納税には確定申告が必須!

ふるさと納税による控除を受けるには、確定申告の際に「寄付金控除」の手続きを行う必要があります。寄付金控除とは、扶養控除や配偶者控除と同様、「所得控除」の1つです。申告を忘れると控除が受けられなくなってしまうので、気を付けましょう。
寄付金控除を申請する際は、「寄附金受領証明書」の添付・提示が必要です。寄付金受領証明書は、ふるさと納税した自治体から納税後しばらくして送られてきます。確定申告まで紛失しないよう、慎重に保管しておきましょう。
青色申告の記入方法

確定申告に慣れていても、寄付金控除の経験はない個人事業主の方もいることでしょう。以下に、寄付金控除を申請する際の記入項目・内容をご紹介します。ほとんどの記入内容は「寄付金受領証明書」に記載されているので、手元に書類を用意しておきましょう。
1. 確定申告書B 第一表「寄付金控除」に、「ふるさと納税の金額-2,000円」または、「所得金額の合計×40%」の内、少ないほうの金額を記入します。例えば、ふるさと納税を行った金額が5万円、所得金額の合計が300万円とします。その場合、「5万円-2,000円=4万8,000円」と「300万円(所得金額の合計)×40%=120万円」となり、「4万8,000円」を記入します。
2. 確定申告書B 第二表「寄附金税額控除(都道府県、市区町村分)」に、寄付した金額の合計額を記入します。合計額は「寄附金受領証明書」を参照してください。
3. 確定申告書B 第二表「寄附先の所在地・名称」に、ふるさと納税を行った自治体名を記入します。こちらも「寄附金受領証明書」に記載があります。
4. 確定申告書B 第二表「寄附金」に、先ほど記入した寄付金の合計額を転記します。最後に、「寄附金受領証明書」を添付すれば完了です。
個人事業主の場合の注意点

個人事業主がふるさと納税を行う場合、給与所得者では受けられる制度が受けられなかったり、考慮すべき事項が増えたりします。こうした個人事業主ならではの注意点をまとめたので、確認してください。
ワンストップ特例制度が利用できない
ふるさと納税には、「ワンストップ特例制度」という制度があります。これは、寄付した自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出することで、確定申告なしで控除が受けられるというものです。手軽に控除が受けられる便利な制度なので、多くのふるさと納税利用者が活用しています。
しかし、ワンストップ特例制度には、「ふるさと納税の有無に関わらず確定申告が不要であること」という条件があります。ふるさと納税に関わらず確定申告が必要な個人事業主は、この条件に当てはまりません。そのため、ふるさと納税利用において便利なワンストップ特例制度を、個人事業主は受けられないのです。
※ふるさと納税のワンストップ特例制度について、詳しくは初めてでもわかるふるさと納税の「ワンストップ特例制度」を解説~条件やメリットなど~の記事もチェック
控除上限額が一定でない
本記事でもご紹介したように、ふるさと納税の控除上限額は所得によって前後します。毎年の所得が一定でないことも多い個人事業主は、前年の控除上限額があまり参考になりません。毎年、控除上限額を超えないよう、寄付金額の確認が必要です。
まとめ
本記事では、個人事業主がふるさと納税する際の控除額上限やその計算方法、確定申告の記入方法などをご紹介しました。ふるさと納税は、所得税・住民税の控除や自治体からの返礼品など、多くの面でメリットのある制度です。ぜひこれを機に、ふるさと納税を活用してはいかがでしょうか。
なお、本記事でご紹介した控除上限額の計算方法は目安を算出するものであり、実際の控除額と一致するとは限りません。そのほか不明点を解消するためにも、可能であれば確定申告前に税理士などへの相談をおすすめします。
ご留意事項
- 本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
- 本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
- 本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
- 本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
- 本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。