大人なら押さえておきたい結婚式のお金のマナー

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のあおりを受け、今年の春から夏にかけて予定していた挙式を秋以降や来年に延期したカップルは少なくないようです。結果として、この秋、複数の結婚式に招待されている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は結婚式のお金について取り上げたいと思います。

大人なら押さえておきたい結婚式のお金のマナー

ご祝儀の「3万円」にもエビデンスあり?!

「3万円」にもエビデンスあり?!

既に2度延期されていた筆者の身内の結婚式も今秋ようやく開催される運びとなりました。3通目となる招待状にお決まりの返信の文句を記入しながら、「“三度目の正直”で、今度こそ無事に執り行えますように!」と願ったものです。

ところで、友人や知人の結婚式に出席する際のご祝儀の相場は「3万円」と言われますが、この3万円には、相応の“エビデンス”があるようです。
雑誌編集者時代、「冠婚葬祭特集」を担当した際に結婚式場関係者の方への取材で伺った話ですが、新郎新婦が招待客1人につき負担する金額(食事代、引き出物代など)は多めに見繕って約2万円で、これにお祝い分の1万円を加えた額が3万円になります。
「3」という数字(お札の枚数)がご祝儀にふさわしいとされる根拠もあります。日本の文化や慣習に大きな影響を与えた古代中国の陰陽五行説によると、奇数は「陽」、偶数は「陰」となり、おめでたい結婚のお祝いには奇数がいいという考え方です(偶数は「割り切れる」数なので縁起が良くないという説もあります)。
ただし、奇数の中でも音から「苦」を連想させる「9」は避けなければなりません。一方で「8」は偶数ですが「末広がり」で縁起のいい数字とされるため、「8万円」はアリです。「10万円」も、キリのいい数字でもあり、許容範囲とされているようです。
結婚式に出席できず、ご祝儀だけを送る場合は2万円という選択肢もあるでしょう。この場合はお札の枚数が偶数になってしまいますから、1万円分は5000円札2枚に替え、計3枚のお札を送るのが無難かもしれません。

とはいえ、招待客の誰もが3万円というわけにはいかないでしょう。新郎新婦の親戚だったり、日頃から新郎新婦に大変お世話になっている人だったりすれば、当然、そこにお祝いの気持ち(お金ですが)をオンしていくことになります。
あくまで一般論ですが、前述の冠婚葬祭特集に掲載した新郎新婦との関係によるご祝儀の相場は以下の通りです。

友人●3万~5万円
同僚●3万円
上司●3万~10万円
兄弟姉妹●3万~10万円
叔父・叔母●5万~10万円

金額に幅があるのは招待客の年齢や社会的地位、新郎新婦との親しさによって増減の余地があるためです。
同じ友人や兄弟姉妹でも、独身の20代と、家庭を築き勤務先で役職に就いた30~40代では異なります。また、上司が主賓として招かれた場合などは新郎新婦から特別な謝礼を渡されることも多く、後で「しまった!」とならないためにも、「8万円」か「10万円」は包んでおきたいところです。
さらに、パートナーや子どもも一緒に招かれた場合は、出席する人数に応じて金額の上乗せを考える必要があります。

結婚式の「のし袋」の話

結婚式の「のし袋」の話

これは余談ですが、ご祝儀を包むのし袋ののしは、元来、長寿をもたらす縁起物とされたアワビを薄く伸ばして贈り物に添えていた「熨斗」を簡略化したもの。現在でも伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)の奉納などには、古来の製法で作られた熨斗アワビが使われているそうです。
結婚祝いの場合は、紅白の水引が10本で「結び切り」になったのし袋を使います。「固く結んで離れないように」という意味です。
といっても、紅白の10本結び切りならどれでもいいというわけではありません。のし袋にも「格」というものがあり、10万円を包むのであれば、それにふさわしい豪華なのし袋を選ぶ必要があります。逆に、中身は3万円なのに仰々しいのし袋に入れて渡すのも恥ずかしいものです。

大切な結婚式ですから、ご祝儀用には銀行の窓口などで新札を用意してもらい、お札をきれいに揃えて、中袋(封筒)を表に向け、福沢諭吉の肖像画が上にくるように入れましょう。入れ方を間違うと不祝儀になってしまいかねず、ここは細心の注意が必要です。正しい入れ方はのし袋を入れたビニール袋にも印刷されていますし、ウェブサイトには入れ方を伝授する動画なども多数アップされているので、参考にするといいと思います。
のし袋を持ち歩く際は、袱紗に入れるのが大人の作法です。結婚式用にはゴールドや赤、臙脂、オレンジ、ピンクなどの明るい色の袱紗を使います。これから購入するのなら紫色の袱紗を買っておけば、結婚式にもお葬式にも使うことができます。

金貨を送るスイスの習慣

金貨を送るスイスの習慣

最後に、最近大変印象に残った結婚祝いに関するエピソードを一つ、ご紹介したいと思います。
知人は20数年前に結婚した際、海外に住む叔母様からお祝いに金貨を贈られました。スイスには嫁ぐ娘に「いざという時にはこれを使って」と金貨を渡す慣習があると聞いたことがありますが、あるいは叔母様の頭の中に、そうしたお気持ちもあったのかもしれません。
叔母様が早くに亡くなったこともあり、知人にはその金貨が形見のように思えてなかなか手放す気になれず、「国際金価格が2000ドルになったら売る」と話していました。要は一生、売るつもりがなかったのだと思います。
しかし、今夏、国際金価格がまさかの2000ドル超え。この話を思い出した筆者が取材になるという下心もあって様子を尋ねたところ、「天国の叔母が『売っていいのよ』と言ってくれている気がして、1枚だけ記念に残して全部現金化した」と聞かされました。

「コロナで家族の経営する会社も大変な時期だったので、本当に助かった」という彼女の言葉に心を動かされ、身内の結婚祝いを再考し始めた日和見主義の筆者です。
さすがに今、金貨には手が出ませんが。

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