全国に広がる自転車保険の義務化!いざという事故に備えて自転車保険を検討

近年、自転車利用者に自転車保険への加入を義務づける地方公共団体が増えています。今回はその背景や自転車保険の主な保障内容、保険料の目安や加入の際の注意点などを解説します。

全国に広がる自転車保険の義務化!いざという事故に備えて自転車保険を検討

全国に広がる自転車保険義務化

全国に広がる自転車保険義務化

自転車は、手軽な移動手段として子供から高齢者まで幅広い年齢層に通学や通勤、買い物などさまざまな用途で利用されています。その一方、最近では、自転車事故を起こした加害者が数千万円にも及ぶ高額の損害賠償を命じられる判決事例が出ています。

自転車事故による高額賠償判決の例

判決日(裁判所) 被害概要 加害者・過失 被害者 賠償額
2013年7月4日
(神戸)
歩行者後遺障害 小学生・無灯火 62歳女性 9,521万円
2008年6月5日
(東京)
言語機能喪失 男子高校生・斜め横断 24歳男性 9,266万円
2003年9月30日
(東京)
歩行者死亡 男性・不注意運転 38歳女性 6,779万円

しかし、自転車による事故で加害者に高額な賠償金が生じても、加害者に支払い能力がないために、被害者への適切な賠償ができずトラブルに至るケースや被害者が泣き寝入りせざるをえないケースが珍しくありません。そこで国では、自転車事故による被害者の救済を目的に、自転車利用者の自転車保険への加入を促進しています。
これを受けて、全国の地方公共団体で自転車利用者や自転車を利用する子供の保護者、事業者などに自動車保険への加入を義務付ける動きが広がっており、2020年4月現在、保険加入を条例で義務化している地方公共団体は全国で計23ヶ所、努力義務を課している地方公共団体は13に上っています。ただし、2020年4月現在、自転車保険の加入義務や努力義務違反に罰則を定めている例はありません。

■自転車保険に関する地方公共団体の条例制定状況(2020年4月1日現在)

条例の種類 都道府県 政令指定都市
義務化 山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、兵庫県、愛媛県、福岡県、鹿児島県(計15) 仙台市、さいたま市、相模原市、静岡市、名古屋市、京都市、堺市、福岡市(計7)
努力義務 北海道、茨城県、群馬県、千葉県、富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、高知県、香川県、熊本県(計11) 千葉市、北九州市(計2)

【参考】国土交通省ホームページ 詳細はこちら

自転車保険の補償内容とは?

自転車保険の補償内容とは?

自転車運転中の事故の賠償責任を補償する自転車保険には、大きく分けて以下の2種類があります。

1.個人賠償責任保険

保険加入者本人または同居している家族が、誤って他人にケガをさせたり、他人の所有物を壊してしまったりしたことによって生じた法律上の賠償責任を補償する保険で、「日常生活賠償保険」もそのひとつです。補償内容や補償対象、保険金の額は商品によって異なります。

2.TSマーク付帯保険

TSマークは、自転車安全整備店で自転車の有料点検整備を受けた際に貼られるシールタイプの点検整備済証で、その自転車を運転中に起こし、他者を死亡させたり重度後遺障害を負わせたりした場合、①賠償責任補償、②傷害補償、③被害者見舞金(赤色TSマークのみ)を受けることができます。TSマークは、補償対象が自転車そのものであり、運転者が誰かは問われないので、一般的な個人賠償責任保険よりも補償の範囲が広く、不特定の人が利用する事業所や貸自転車店の自転車での利用にも適していると言われています。

TSマークには青色(第1種)と赤色(第2種)があり、より充実した点検を受けた場合に貼られる赤色のほうが、補償内容が手厚くなっています。なお、青・赤ともにTSマークそのものの価格は自転車の点検整備料に含まれており、原則としては点検料に加えてTSマークの代金を請求されることはありません。

TSマークにより受けられる補償

①賠償責任補償

TSマークを貼付した自転車を運転中の人が第三者を死亡させたことや重度後遺障害(※1)を負わせたことにより、法律上の損害賠償責任を負った場合、最大で以下の金額が補償されます。

・青色TSマーク 1,000万円
・赤色TSマーク 1億円

※1 自動車損害賠償保障法に定める等級の1~7級。

②傷害補償

TSマークを貼付した自転車を運転中の人が交通事故に遭い、事故の日から180日以内に入院(15日以上)、死亡又は重度後遺障害(※2)を負った場合、以下の金額が一律に支払われます。
・青色TSマーク
死亡もしくは重度後遺障害:30万円
入院:1万円

・赤色TSマーク
死亡もしくは重度後遺障害:100万円
入院:10万円

※2 自動車損害賠償保障法に定める等級の1~4級。

③被害者見舞金(赤色TSマークのみ)

赤色TSマークを貼付した自転車を運転中の人が第三者(被害者)に傷害(入院加療15日以上)を負わせ、法律上の損害賠償責任を負担した場合に、次の金額が一律に支払われます。

・赤色TSマーク 入院:10万円

ただし、①~③のいずれも補償を受けることができる期間はTSマークに記載されている日付(=点検を受けた年月日)から1年以内に限られ、1年を過ぎると補償を受けられなくなります。事故を未然に防ぐためにも、万が一の事故に備えるためにも、年に1度は自転車の点検をし、TSマークの貼り替えをしてもらうよう心がけましょう。

なお、点検後に自転車に添付されるのが青色TSマークか赤色TSマークかは店舗によって異なり、1店舗につき青色か赤色のいずれか1種類しか取り扱っていません。点検料は青色(目安1,000円~1,500円)よりも赤色(目安1,500円~2,000円)のほうが少し高くなりますが、より手厚い補償を期待するのであれば、赤色TSマークの貼付を受けることをおすすめします。赤色TSマークの貼付ができる店舗は、公益財団法人日本交通管理技術協会のホームページから探すことができます。

自転車保険、いくらかかる?

自転車保険、いくらかかる?

上で紹介した自転車保険のうち、TSマークに付帯する自転車保険には、自転車の点検料の一部が充てられるので、自転車の所有者が別途保険料を支払う必要はありません。では、民間の保険会社等が展開する個人賠償責任保険として自転車保険に加入した場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?実際に販売されている商品を例に、主な補償内容と掛け金などをみていきましょう。

① A社の場合
保険料(月額):家族プラン 940円
夫婦プラン 650円
個人プラン 460円

相手への賠償責任保険金:最大5億円
自身のケガによる死亡・後遺障害保険金:550万円
入院保険金:1日につき3,000円
その他:事故後の示談交渉サービス、弁護士や税理士への相談サービスなど

②B社の場合
保険料(月額):本人プラン103円(加入者の同居家族分もカバー)

相手への賠償責任保険金:最大1億円
その他:事故後の示談交渉サービス

③ C社の場合
保険料(月額):603円

相手への賠償責任保険金:3億円
入院保険金(日額):6,000円
通院保険金(日額):1,000円
その他:事故後の示談交渉サービス、申込みの翌日から適用可

④D社の場合
保険料(月額):359円

相手への賠償責任保険金:1億円
その他:自転車輸送サービス(年4回まで)

各社ともに月額1,000円以内で加入でき、月額保険料に応じて賠償責任保険金は1億円~5億円まで幅があります。消費やプランによって補償内容や対象年齢に制限がある場合も多いので、事前に必ず確認するようにしましょう。また、示談交渉の代行や事故を起こした自転車の輸送サービスなど。保険金以外のサービスの有無も商品やプランによって異なる点にも注目して比較検討をすることをおすすめします。

自転車保険選びのポイント

自転車保険選びのポイント

自転車保険への加入を義務付けもしくは努力義務を求める地方公共団体が増えるに従って、さまざまな自転車保険の商品が登場しています。中には毎月の保険料が100円~という少額の自転車保険もありますが、保険料の安さだけで加入する保険を選ぶのは賢明ではありません。自転車保険を選ぶ際には、以下のポイントも考慮・確認を怠らないようにしましょう。

①対人賠償が含まれている商品を選ぶ

先に述べたとおり、近年、自転車運転中の事故では、加害者やその保護者に1億円近い高額の賠償金の支払を命じる判決が相次いでいます。加害者になった場合、賠償金が高額なあまり借金をしたり、支払えなくて自己破産してしまうリスクも想定できます。したがって、自転車保険への加入を検討する際には、自分自身のケガや入院の補償だけでなく、1億円以上の対人賠償が含まれているもの選ぶようにすることが大切だといえるでしょう。

②子供が自転車を使う場合は家族プランに入る

また、未成年による事故では保護者に賠償責任が求められることが多いので、子供が自転車を利用している家庭では家族プランのある商品を選ぶと安心です。

③加入済みの保険をチェックする

新たに自転車保険への加入を検討する際には、すでに加入している保険の補償内容を必ずチェックしておきましょう。というのも加入済みの自動車保険や火災保険、傷害保険、あるいはクレジットカードの会員特約として自転車保険の補償が付帯されている可能性があります。二重に同じような補償内容の自転車保険に加入してしまわないよう、確認を怠らないようにしましょう。

まとめ

高額な賠償金の支払を命じられることも珍しくない、自転車の事故。自動車と違い免許なしに運転できる自転車の事故は未成年の子供が加害者になってしまうのもおそろしいところです。

自転車保険には民間の保険会社等による個人責任賠償保険と適正な整備を受けた自転車に貼付されるTSマークに付帯する保険とがありますが、いずれも一般的に保険料はそう高くなく、月額数百円の負担で済むものがほとんどです。住んでいる場所で自転車保険への加入が義務化されている・いないに関わらず、万が一にそなえて、自転車保険への加入を検討してみるとよいでしょう。

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