出版・音楽の印税はいくら?印税の計算方法や仕組みなどを紹介

印税はいくらもらえるのか、気になったことはありませんか?この記事ではそもそも印税とは何なのか、出版業界と音楽業界に分けてそれぞれの印税の仕組みを説明しています。また、実際に著者やアーティストの取り分はいくらになるのか、計算例を挙げながらわかりやすく解説もしているので、印税について興味のある方は、ぜひご一読ください。

出版・音楽の印税はいくら?印税の計算方法や仕組みなどを紹介

印税とはなにか?その計算方法と仕組み

印税とその仕組み

印税とは、著作物を利用する人が、著作権を持つ人に支払う「著作権料」のことを指します。「税」という文字がつくことから、税金の一種だと勘違いする人もいますが、税金とは一切関係なく、国に納めることもありません。具体的な例として本を出版するときのことを考えてみましょう。通常、本の原稿の著作権は著者が持っており、その原稿を利用して出版社が本を出版します。このとき出版社は、著作物を利用する対価として、著者に印税を支払っています。

印税の計算方法は以下のようになります。

■印税の計算方法

印税(円)=単価×印税率×部数

出典 

ちなみに印税で稼げる職業には、小説家などの著者やミュージシャン、作詞家、漫画家などがあります。中でも、この記事では出版業界と音楽業界について、それぞれ印税でいくらもらえるのかをご紹介します。

【出版業界の印税の仕組み】出版社や著者の取り分はいくら?

出版業界の印税の仕組み 出版社や著者の取り分はいくら?

著者には印税でいくら入るのかを理解する前に、まずは1冊の本が書店に並ぶまでの仕組みを紹介します。本が書店に並ぶまでには、「著者」「出版社」「取次」「書店」の4者が大きく関わっています。まず、著者と出版社が本作りについて交渉し、両者間で印税率を決定します。その後、出版社は印刷会社に依頼して著者の本を仕上げ、この本は取次によって全国の書店へ配本されるのです。

ここで登場した4者それぞれの取り分をみてみましょう。
なお、以下の数字はあくまで例であり、出版社側の条件や著者の知名度などによっても取り分は変わります。

本の売上における関係者の取り分(一例)

関係者 取り分
著者 5〜10%
出版社 55〜60%
取次 8%
書店 22%

【参考】日本著者販促センター:「本の売上構成比率、70% +8%+22%とは?」詳しくはこちら
【参考】Book Baum:『本の印税っていくら?スグにわかる「ベストセラーの印税額」』詳しくはこちら

上記からわかる通り、実は1冊の本が売れて一番多く利益を得るのは出版社です。しかし出版社はここから印刷会社への支払いを行い、さらに売れ残ってしまった本の損失も計上します。リスクがあるからこそ、取り分も大きくなっているのです。

では、例として、単価1,000円の本を3万部発行したときの著者の印税を、先の計算式【印税(円)=単価×印税率×部数】に当てはめて導き出してみましょう。

著者の印税率が10%であると仮定すると、本の単価1,000円×印税率10%×部数3万部で、300万円が印税として著者に入ります。ちなみにお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんが書いた芥川賞受賞作品「火花」は、単行本1,200円で300万部を突破しました。印税率は5%だったそうなので、単純計算で1億8,000万円の収入があったことになります。

契約によって支払い方法は変わる

印税は本の単価と対象となる部数によって違いが生まれます。まず、本の単価についてですが、消費税を含めるのか含めないのかによってかなり異なってきます。上記の例なら、消費税10%を含めた1,100円を本の単価として扱う場合、著者の印税は330万円と30万円の差が生じることになります。
次に、部数についてですが、部数の考え方には発行部数と実売部数という2種類があります。発行部数で契約すると、発行された部数すべてに対して印税がかけられます。一方で、実売部数の場合は、いくらたくさん発行されたとしても、実際に売れた分しか印税の対象になりません。著者からすれば、発行部数で支払われた方が多くの印税をもらえることになりますが、これらは出版社や契約によって異なります。

ちなみに、著者の収入方法は印税だけではありません。その1つが原稿買取です。原稿買取とは原稿を出版社に売って、原稿料を受け取ることです。ただし、原稿料を受け取れるのは契約時の1度きりで、それ以降、いくら書籍が増刷されたとしても、その分の原稿料はもらえません。長くヒットする書籍なら印税の方が多くの利益を得られますが、短期間で利益を得たいならその場で原稿を買い取ってもらう方がよいということになります。

自費出版の本でも印税はもらえる?

自費出版の本でも印税はもらえる?

副業や退職後の趣味で、書籍を自費出版する人も一定数います。この場合、印税はどうなるのでしょうか?正確にいうと、自費出版の場合、印税という概念はありません。というのも、自費出版は、著者が自ら出費して出版するものだからです。それでも、印税に似た支払い比率と呼ばれるものはあります。支払い比率は売上の20%以上も珍しくなく、出版社によっては50%程度に設定されていることもあります。支払い率50%で契約した場合、1,000円の本が売れたなら500円は入ってくる計算です。一方、本として仕上げるには、著者が出版費用を出さなければいけないので、著者自身が売れ残った場合のリスクを抱えなければなりません。

【音楽業界の印税の仕組み】アーティストの取り分はいくら?

音楽業界の印税の仕組み

続いて音楽業界の印税の仕組みを見てみましょう。音楽業界ではアーティストがいろいろな会社と契約を交わすほか、アーティストが作詞・作曲を兼務するかどうかによってそれぞれに入る印税が変わるので、少々込み入っています。

まず、アーティストが契約するのは主に「音楽出版社」「レコード会社」「プロダクション」の3つです。まず、音楽出版社はアーティストから著作権を譲渡してもらい、その対価として「著作権印税」と呼ばれる印税を支払います。この契約を「著作権契約」と呼びます。通常音楽出版社は、さらに「JASRAC」という著作権管理業者に信託契約に基づき、著作権を譲渡するので、著作権関係ではアーティスト・音楽出版社・JASRACの3者が関わっていることになります。音楽出版社の主な業務内容は著作権譲渡契約の締結(楽曲の獲得)、著作権等管理事業者への届出、外国地域での管理、楽曲のプロモーションなどです。

続いてレコード会社ですが、アーティストの楽曲を編曲、演奏、録音して複製したCDを販売し利益を得ます。最近は、CD販売だけでなく音楽ストリーミングや音楽ダウンロードなども手掛けおり、時代のニーズに合わせて提供方法を変化させるなどまさに販売戦略のプロです。一方、アーティストはCDが売れた際に「アーティスト印税」という名目で収入を得ます。このような契約を「録音契約」と呼びます。最後にプロダクションと「マネジメント契約」を結びます。プロダクションが彼らの代わりにスケジュールや宣伝、お金の管理をしてくれるのです。ただし、アーティストはマネジメント料として、自分の全収入のうち何割かをプロダクションに譲渡しなければなりません。

つまりアーティストは「著作権印税」と「アーティスト印税」の2つの印税を得られます(そこからプロダクションにマネジメント料を支払います)。

著作権印税

著作権印税とは、テレビやラジオなどでその楽曲を使用するときやCDが売れたときに支払われる、著作権使用料です。CDの著作権印税の場合には、基本的に売上の6%に設定されています。音楽はさまざまなところで販売(提供)されているので、JASRACという団体が一括して管理します。そのため、著作権印税(売上の6%)から手数料を引いて音楽出版社に譲渡、さらに音楽出版社が手数料を引いて、作詞・作曲家に印税を譲渡しています。

著作権印税の取り分は、それぞれ以下のようになります。

著作権印税の関係者それぞれの取り分

関係者 取り分
JASRAC 6%
音楽会社 94%(印税−JASRACの取り分)の50%(つまり47%)
作詞家 94%の25%(つまり23.5%)
作曲家 94%の25%(つまり23.5%)

【参考】ウタレン:「超入門!プロを目指すアマチュアのための音楽業界の仕組み 第4章 契約、そしてお金が動く 4-3 収入のシミュレーション(新人・大物)」詳しくはこちら

CDの著作権印税

では、例として、単価1,000円のCDを3万枚売り上げたときの作詞家・作曲家の著作権印税を計算してみます。ここでも出版の例で紹介した印税の計算式を使用します。

まず、大本となる著作権印税は、CDの単価1,000円×印税率6%×売上枚数3万枚で180万円です。ここからその6%の10.8万円がJASRACに譲渡され、残りの169.2万円のうち25%にあたる42.3万円ずつが作詞家・作曲家にそれぞれ渡ります。

テレビ・ラジオの著作権印税

テレビやラジオの使用料はCDの計算式とは異なり、どの媒体で使用するのかによって価格の設定が異なります。例えば、日本テレビ(テレビ)で1曲1回放送する場合には12,000円、ニッポン放送(ラジオ)で1曲1回放送する場合には5,000円をJASRACに支払うという料金設定です。どの放送局が放送するかによって、テレビは3,000~12,000円、ラジオは1,250~5,000円と異なります。

※JASRAC「使用料の計算方法」詳しくはこちら

最終的に曲ごとの分配額を計算し、年4回分配明細書とともに著作者や音楽出版社に使用料が分配されます。

※JASRAC「放送等使用料が分配されるまで」詳しくはこちら

アーティスト印税

アーティスト印税とは、レコード会社との契約でCDが売れた枚数に応じてアーティストがもらえる印税のことを指します。その取り分はだいたい1~3%といわれており、メンバーがいる場合は、それを人数分に分けます。

では、例として、単価1,000円のCDを3万枚売り上げたときの印税を計算してみましょう。ここでは印税率を2%と仮定します。CDの単価1,000円×印税率2%×売上枚数3万枚で60万円、もしこのアーティストが4人組だった場合、それらを均等に割り振って15万円ずつが収入になります。ただし、実際はプロダクションへの手数料が引かれるので、収入はもう少し少なくなります。

カラオケの印税収入も大きい!

カラオケの印税収入も大きい!

実は、カラオケで流される曲にも、印税が発生しています。
カラオケ印税は著作権印税の1つで、カラオケ業者がJASRACに著作権使用料を渡すことで、音楽出版社、作詞家、作曲家、ひいてはアーティストへと印税が分配される仕組みになっています。カラオケ印税としてアーティストがもらえるのは1曲につき1~3円だといわれており、歌われた回数分この印税がプラスされていきます。

まとめ

この記事では、印税の仕組みと、印税が発生する職業についてご紹介しました。とくに出版業界と音楽業界の印税の仕組みの違いや、具体的な計算方法をご説明したので、より印税収入への興味と理解が深まったのではないでしょうか?印税での収入は、契約内容や売上により異なります。印税生活を夢見るなら、まずはいかにして売上を出すかを考えるとよいかもしれません。

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