退職金2000万円にかかる税金はいくら?受け取り方や勤続年数の違いも解説

退職金として2000万円を受け取っても、勤続年数や退職金の金額によって税金(所得税と住民税)が課される恐れがあります。今回の記事では、退職金にかかる税金の計算方法をはじめ、具体例を用いながら手元に残る金額について解説します。老後のライフプランも考慮したうえで、退職金の受け取り方を慎重に判断することが大切です。

退職金2000万円にかかる税金はいくら?受け取り方や勤続年数の違いも解説

退職金にかかる税金の計算方法

退職金にかかる税金の計算方法

退職金を得た場合「所得税」と「住民税」の2つが課されます。2037年までは復興特別所得税も併せて納税しなければなりません。

また、退職金は一時金で受け取るか、年金で受け取るかによって税金や社会保険料が変わるため、金額が大きく異なります。あらかじめ自分の退職金額がいくらになるのか、受け取り方法ごとに確認しておくとよいでしょう。

次の見出しで具体的な計算方法について解説します。

退職金を一時金で受け取った場合

退職金を一時金として一括で受け取る場合「退職所得」として税金がかかります。給与所得は総合課税(ほかの所得と合算して税額を計算)となる一方、退職所得は分離課税(ほかの所得と分けて税額を計算)となる点に注意しましょう。また、税金は以下の手順で求められます。

1.所得税を計算する 
2.復興所得税を計算する
3.住民税を計算する
4.上記「1.」から「3.」を足して合計を求める

出典 

まず、退職金の所得税は以下の通りです。

所得税=退職所得×所得税率


退職金の税額計算においては退職所得控除等の優遇措置が適用されるため、所得税を計算する前に退職所得を求める必要があります。

退職所得=(退職金-退職所得控除額)×1/2


なお、退職所得控除額は勤続年数に応じて以下のように計算式が異なります。

退職所得控除額の求め方

✔勤続20年以下
 40万円×勤続年数(計算結果が80万円以下の場合は80万円)

✔勤続20年超
 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
 ※勤続年数が1年未満の端数がある場合、1日であっても1年として計算する

また、所得税率については国税庁によって定められた以下の数字を用います。

課税退職所得金額 税率 控除額
195万円未満 5% 0円
195万円超~330万円未満 10% 9万7,500万円
330万円超~695万円未満 20% 42万7,500円
695万円超~900万円未満 23% 63万6,000円
900万円超~1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円超~4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

【参考】国税庁「退職金と税」詳しくはこちら

次に、復興特別所得税と住民税を以下の計算式によってそれぞれ求めます。

【復興特別所得税】
復興特別所得税=所得税 × 2.1%


【住民税】
住民税=退職所得 × 10%


ここまでに求めた所得税・復興特別所得税・住民税を合計したものが、退職金を受け取った時に課税される税金額となります。

退職金を年金形式で受け取った場合

退職金を年金として分割で受け取る場合「雑所得」として税金がかかります。計算手順は先ほどの一時金として受け取った場合と変わりませんが、所得税の求め方が少々異なります。

1.所得税を計算する 
2.復興所得税を計算する
3.住民税を計算する
4.上記「1.」から「3.」を足して合計を求める

出典 

雑所得における所得税は以下の計算式によって求められます。

所得税=雑所得×所得税率


また、退職金を年金形式で受け取る場合には、公的年金等控除の適用対象となります。よって、所得税を計算する前に雑所得を算出しましょう。

雑所得=年金-公的年金等控除額


公的年金等控除額は以下の通りです。(2023年6月時点)

65歳未満の場合

年金収入 公的年金等控除額
60万円超~130万円未満 60万円
130万超~410万円未満 年金収入×75%-27.5万円
410万円超~770万円未満 年金収入×85%-68.5万円
770万円超~1,000万円未満 年金収入×95%-145.5万円
1,000万円以上 195.5万円

65歳以上の場合

年金収入 公的年金等控除額
110万円超~330万円未満 110万円
330万円超~410万円未満 年金収入×75%-27.5万円
410万円超~770万円未満 年金収入×85%-68.5万円
770万円超~1,000万円未満 年金収入×95%-145.5万円
1,000万円以上 195.5万円

【参考】国税庁「公的年金等の課税関係」詳しくはこちら

ここで求めた雑所得に所得税や復興特別所得税、住民税を足すことで課税される税金額が求められます。

なお、退職金を年金で受け取る場合、以下の条件を満たすことで公的年金等の収入から所得税や住民税が源泉徴収されます。確定申告が不要となるため、あわせて覚えておきましょう。

退職金を年金として受け取った場合に確定申告が不要となるケース

以下①・②をいずれも満たした場合、確定申告が不要となる。

①公的年金等の収入金額が400万円以下
②公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以下

ここまでの流れを踏まえ、実際に退職金にかかる税金額について具体的な数値をもとに計算してみましょう。退職金の受け取り方の違いについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

退職金2,000万円にかかる税金は?

退職金2,000万円にかかる税金は?

4つの例を挙げて、2000万円の退職金にかかる税金を求めてみました。

勤続年数25年で退職金2,000万円を一時金で受け取った場合

勤続年数25年の人(以下、Aさん)が退職金2,000万円を一時金で受け取ったとします。

この場合、退職所得控除額と退職所得は以下の計算式によって求められます。

【退職所得控除額】
=800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円

【退職所得】
=(退職金額-退職所得控除額)× 1/2
=(2,000万円-1,150万円)× 1/2=425万円

次に、所得税および復興特別所得税の源泉徴収額を課税対象となる退職所得額に所定の税率をかけて、求めてみましょう。

【所得税および復興特別所得税の源泉徴収額】
=(425万円 × 20%-42万7,500円)× 102.1%
≑431,372円(一円未満端数切り捨て)

最後に住民税の金額を計算します。

【住民税の所得割】
=425万円 × 10%
=42.5万円

(※)実際には上記で求めた金額に住民税の均等割が加算される

ここまでに求めた所得税および復興特別所得税、住民税を合計した納税額は以下の通りです。

【納税額】
=所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額+住民税額
=431,372円+425,000円
=856,372円

つまり、Aさんは2,000万円-85万6,732円=1,914万3,268円を退職金として受け取れることになります。

勤続年数20年で退職金2,000万円を一時金で受け取った場合

勤続年数20年の人(以下、Bさん)が退職金2,000万円を一時金で受け取ったとします。

この場合、退職所得控除額と退職所得は以下の計算式によって求められます。

【退職所得控除額】
=40万円 × 20年=800万円

【退職所得】
=(退職金額-退職所得控除額)× 1/2
=(2,000万円-800万円)× 1/2=600万円

次に、所得税および復興特別所得税の源泉徴収額を課税対象となる退職所得額に所定の税率をかけて、求めてみましょう。

【所得税および復興特別所得税の源泉徴収額】
=(600万円 × 20%-42万7,500円)× 102.1%
≑78万8722円(一円未満端数切り捨て)

最後に住民税の金額を計算します。

【住民税の所得割】
=600万円 × 10%
=60万円

(※)実際には上記で求めた金額に住民税の均等割が加算される

ここまでに求めた所得税および復興特別所得税、住民税を合計した納税額は以下の通りです。

【納税額】
=所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額+住民税額
=78万8,722円+60万円
=138万8,722円

つまり、Bさんは2,000万円-138万8,722円=1,861万1,278円を退職金として受け取れることになります。

60歳で退職金2,000万円を年金形式で受け取った場合

60歳で退職金を2,000万円(200万円×10年で受け取ると仮定)、それ以外の公的年金等にかかる雑所得が0円、その他の所得もなく、公的年金等にかかる雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が1,000万円以下の(以下、Aさん)がいると仮定します。

この場合において、雑所得は以下のように求められます。

【公的年金等にかかる雑所得の金額】
=200万円×0.75%-27万5,000円
=122万5,000円

上記より、所得税および復興特別所得税の源泉徴収額は以下のようになるでしょう。

【公的年金等にかかる雑所得の金額】
=(122万5,000円 × 5%)× 102.1%
≑6万2,536円

最後に住民税の金額を計算します。

【住民税の所得割】
=122万5,000円 × 10%
=12万2,500円

(※)実際には上記で求めた金額に住民税の均等割が加算される

ここまでに求めた所得税および復興特別所得税、住民税を合計した納税額は以下の通りです。

【納税額】
=所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額+住民税額
=6万2,536円+12万2,500円
=18万5,036円

つまり、Bさんは1年間に200万円-18万5,036円=181万4,964円、10年間で総額1,814万9640円を退職金として受け取れることになります。(Bさんの退職金にかかる税金は総額で約185万円となる)

65歳で退職金2,000万円を年金形式で受け取った場合

65歳で退職金を2,000万円(200万円×10年で受け取ると仮定)、それ以外の公的年金等にかかる雑所得が0円、その他の所得もなく、公的年金等にかかる雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が1,000万円以下の(以下、Bさん)がいると仮定します。

この場合において、雑所得は以下のように求められます。

【公的年金等にかかる雑所得の金額】
=200万円-110万円
=90万円

上記より、所得税および復興特別所得税の源泉徴収額は以下のようになるでしょう。

【公的年金等にかかる雑所得の金額】
=(90万円 × 5%)× 102.1%
=4万5945円

最後に住民税の金額を計算します。

【住民税の所得割】
=90万円 × 10%
=9万円

(※)実際には上記で求めた金額に住民税の均等割が加算される

ここまでに求めた所得税および復興特別所得税、住民税を合計した納税額は以下の通りです。

【納税額】
=所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額+住民税額
=4万5,945円+9万円
=13万6,945円

つまり、Bさんは1年間に200万円-13万6,945円=186万3,055円、10年間で総額1,863万550円を退職金として受け取れることになります。(Bさんの退職金にかかる税金は総額で約136万円となる)

退職金の受け取りに必要な手続き

退職金の受け取りに必要な手続き

退職金を受け取るには「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書」に必要事項を記入し、勤務先に提出する必要があります。提出を忘れてしまうと退職金額の20.42%の所得税および復興特別所得税が課税されてしまうので注意が必要です。

また、万が一提出を失念してしまった場合は、退職金を受け取った翌年に確定申告を行うことで提出した場合の税額との差額を還付してもらえます。確定申告の期限は、退職金を受け取った翌年の2月16日から3月15日までとなっているため、併せて覚えておきましょう。(期限に間に合わなかった場合、退職金を受け取った翌年の1月1日から5年以内に確定申告をすることで、納めすぎた税金の還付が受けられる)

まとめ

まとめ

退職金は勤続年数や受け取る金額によって、引かれる税金の額が異なります。また、一時金として一括で受け取るのか、年金形式で受け取るかによっても税金の計算方法が異なる点に注意が必要です。引かれる税金の額が多くなると、退職金の手取りが減ってしまう恐れがあります。

どちらの受け取り方法がよいと一概に言うことはできませんが、ファイナンシャルプランナーをはじめとするプロの意見も参考にしつつ、自身にとってベストな受け取り方を考えてみてはいかがでしょうか。

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