iDeCoは2022年の法改正でどう変わる?わかりやすく解説

確定拠出年金は公的年金の老齢給付を補完する制度であり、企業型と個人型(iDeCo)があります。2022年は確定拠出年金の制度内容について、いくつかの改正が行われる予定です。今回は確定拠出年金のうち、iDeCoの改正点の概要・メリット・注意点について解説します。

iDeCoは2022年の法改正でどう変わる?わかりやすく解説

2022年からiDeCoの内容が改正された背景

2022年からiDeCoの内容が改正された背景

私的年金の一つであるiDeCo(個人型確定拠出年金)は、2022年から内容が改正されます。具体的には、「受給開始時期の選択肢の拡大」「加入可能年齢の拡大」「企業型加入者のiDeCo加入の条件緩和」が行われますが、この背景には公的年金の制度が改正されたことが挙げられるでしょう。

平均寿命が伸び、人生100年時代を迎え、経済基盤を充実させるために働き方や働く期間が多様化する社会に変化してきました。このような状況を踏まえて、公的年金については2022年から「短時間労働者への厚生年金の適用拡大」「在職老齢年金制度の見直し」「受給開始時期の選択肢の拡大」などの制度改正が行われる予定です。

これら公的年金の制度改正の内容と整合性をとるために、iDeCoについてもいくつかの制度改正が行われることとなりました。では、具体的な改正の内容をみていきましょう。

【2022年4月1日施行】受給開始時期の選択肢の拡大

【2022年4月1日施行】受給開始時期の選択肢の拡大

改正の概要

現状では、iDeCoの受給開始時期は60歳から70歳までの間で受給者が自由に選択できます。
2022年の4月1日からは、iDeCoの受給開始時期の上限が70歳から75歳に引き上げられます。
これは、2022年から公的年金の繰下げ受給の開始年齢が75歳に引き上げられることが背景に挙げられるでしょう。

改正によるメリット

今回の改正で、以下のようなプランニングが可能となります。

・運用する期間を延ばすことができる。
・年金原資を増やすことができる。

出典 

また後述のように、60歳以降もiDeCoに加入できる制度改正を併せて活用し、年金原資をさらに増やし70歳を超えて受け取ることも可能になりました。

改正の注意点

iDeCoの受取り方法は、一時金もしくは年金のいずれかを選択することができますが、受給の上限年齢(現行制度では70歳、改正後は75歳)に達すると、年金での受取りができず、一時金での受給を請求する必要があります。
また、iDeCoでは運用期間中に口座管理手数料がかかります。受給の開始を遅らせると、その分口座管理手数料が継続してかかる点にも注意が必要です。

【2022年5月1日施行】加入可能年齢の拡大

【2022年5月1日施行】加入可能年齢の拡大

改正の概要

現状では、iDeCoの加入可能年齢の上限は、国民年金の被保険者のうち60歳未満となっています。
2022年5月1日からは、65歳未満まで加入可能年齢が引き上げられます。
また、従来はiDeCoの加入者は国内に居住する人に限定されていましたが、海外に住んでいる人も国民年金に任意加入すればiDeCoに加入することができるようになります。

改正によるメリット

今回の改正で、以下のようなプランニングが可能となります。

・運用する期間を延ばすことができる。
・年金原資を増やせる。
・掛金の所得控除を受けることができる。

出典 

また、60歳以降も一定の所得がある人であれば、iDeCoに加入することにより拠出した掛金が所得控除され(小規模企業共済等掛金控除)、所得税・住民税が軽減されます。

改正の注意点

60歳以降もiDeCoに加入できる人は、「65歳未満の国民年金の被保険者」に限定されている点に注意が必要です。60歳を過ぎて国民年金の被保険者である、ということは、

・60歳以降も厚生年金の被保険者として就労する
(厚生年金の被保険者=国民年金の第2号被保険者)
・60歳以降は厚生年金の被保険者として就労せずに、国民年金に任意加入する

出典 

のどちらかの状態であることです。つまり、任意加入する場合は、これまで就労していた企業が支払ってくれていた国民年金保険料を自分で支払う必要があります。

【2022年10月1日施行】企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入の条件緩和

【2022年10月1日施行】企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入の条件緩和

改正の概要

現状では、企業型確定拠出年金に加入している人がiDeCoに加入するためには、掛金の拠出限度内で、各企業の労使合意に基づく規約の定めが必要です。今回の改正で、この規約の定めが不要となります。

また、従来は前述の「掛金の拠出限度内」については、事業主掛金の上限を月額5.5万円から3.5万円(確定給付型の企業年金を実施している場合は月額2.75万円から1.55万円)に引き下げることが必要でした。

今回の改正で、全体の拠出限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲内(月額2.0万円上限、確定給付型年金を実施している場合は1.2万円上限)でiDeCoに加入できるように要件が緩和されます。

メリット

今回の改正で、以下のようなプランニングが可能となります。

・規約の定めなしに企業型確定拠出年金とiDeCoを併用できる。
・掛金の所得控除を受けることができる。

出典 

これまでは、企業型確定拠出年金に加入している人は、各企業の労使合意に基づく規約で加入が認められていない場合、iDeCoに加入ができませんでした。2022年10月からは本人の意思だけでiDeCoに加入し、iDeCoの掛金を拠出して、所得控除による所得税・住民税の軽減を受けながら老後資金の原資を増やしていくプランニングが立てやすくなるでしょう。

注意点

事業主掛金の上限の引き下げがなくても規約の変更なしでiDeCoに加入できるようになりましたが、前述のようにiDeCoの掛金の上限が設定されている点には注意が必要です。
また、企業型確定拠出年金において加入者が掛金を拠出できる「マッチング拠出」を選択している人は、iDeCoに加入することはできません。マッチング拠出を導入している企業の方は、マッチング拠出かiDeCoの同時加入かのいずれかを選択することになります。

iDeCoを選択する場合、口座管理手数料などの費用は、加入者が負担する点にも注意が必要でしょう。

まとめ

まとめ

iDeCo(個人型確定拠出年金)は2022年に内容の改正が行われます。「受給開始時期の選択肢の拡大」「加入可能年齢の拡大」「企業型加入者のiDeCo加入の条件緩和」によって、今までのプランニングも変わってくるでしょう。

人生100年時代において、転職・再就職・自営業者など、働き方も変化しています。iDeCoに限らずさまざまな制度の改正が行われているので、制度内容をしっかりと把握し、状況の変化に対応しながら最適な老後資金プランを検討しましょう。

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