新NISAの成長投資枠をどう使う?つみたて投資枠との違いやおすすめの人を解説

新NISAの成長投資枠では、投資信託や国内外の株式、REITなど幅広い商品に投資でき、もう1つの非課税枠であるつみたて投資枠よりも年間投資枠が高く設定されています。この記事では、成長投資枠の特徴や活用方法などを解説します。投資目的やリスク許容度などをもとに、新NISAの成長投資枠を活用していきましょう。

新NISAの成長投資枠をどう使う?つみたて投資枠との違いやおすすめの人を解説

新NISAの成長投資枠とは?旧NISAとの違いを理解しよう!

新NISAの成長投資枠とは?旧NISAとの違いを理解しよう!

新NISAの成長投資枠は、旧制度の一般NISAの役割を引き継ぐ非課税制度です。一般NISAと同様に、投資信託や株式など幅広い金融商品に投資ができます。

新NISAの非課税枠にはほかにも、旧制度のつみたてNISAの役割を引き継ぐ「つみたて投資枠」もあります。
新NISAと旧NISAの違いについては、以下の表でご確認ください。

新NISAの成長投資枠とは?旧NISAとの違いを理解しよう!

※①整理・管理銘柄、②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は対象外
【参考】金融庁「新しいNISA」詳しくはこちら

新NISAは、旧NISAよりも1年間で新規投資できる金額(年間投資枠)が増やされました。また、非課税で運用できる期間(非課税保有期間)は、無期限に延長(恒久化)されました。
さらに新NISAでは、非課税保有限度額の再利用が可能です。NISA口座で保有している商品を売却すると、翌年にはその商品を買い付けた時の金額分だけ、非課税保有限度額が復活します。

新NISAの成長投資枠の特徴|つみたて投資枠との違い

新NISAの成長投資枠の特徴|つみたて投資枠との違い

新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠は、年間投資枠や非課税保有限度額、対象商品などが異なります。
成長投資枠の活用方法を考えるためには、まずはつみたて投資枠との主な違いを押さえておくことが大切です。

年間投資枠(1年間で新規投資が可能な金額):成長投資枠は240万円

新NISAの成長投資枠では、毎年240万円まで金融商品に新規投資できます。つみたて投資枠の年間投資枠は年間120万円であるため、成長投資枠ではその2倍の金額を投資に回せます。
また、成長投資枠では商品の買付方法を、積立と一括(スポット購入)から選択が可能です。コツコツと商品を積み立てられるだけでなく、まとめて240万円分の商品を購入することもできます。

一方のつみたて投資枠は、買付方法が積立のみに限定されています。
なお、成長投資枠とつみたて投資枠は併用できるため、新NISAでは最大で年間360万円まで新規投資が可能です。

非課税保限度額:成長投資枠は1,200万円が上限

成長投資枠では、NISA口座で保有できる商品の金額の上限(非課税保有限度額)が1,200万円に設定されています。
一方、つみたて投資枠であれば新NISA全体の非課税保有限度額1,800万円を単独で使い切ることが可能です。

例えば、毎月10万円ずつ積み立てるとしましょう。つみたて投資枠であれば15年にわたって商品を積み立てられますが、成長投資枠の場合は10年で上限に達してしまいます。
新NISAの成長投資枠を上限まで使った上で、非課税保有限度額1,800万円をすべて使い切るためには、成長投資枠とつみたて投資枠を併用する必要があります。

なお、新NISAの非課税保有限度額は、商品を買い付けた時の金額で管理されるため、保有する商品の値動きによって増減することはありません。

対象商品:成長投資枠は投資信託や株式などに幅広く投資が可能

成長投資枠は、国内株式や外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など幅広い金融商品に投資が可能です。

一方、つみたて投資枠の対象商品は、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されているため、成長投資枠の商品の選択肢が豊富といえます。
ただし、以下の商品は成長投資枠の対象外となっています。

〇成長投資枠の対象外の商品
・上場廃止が決まっている銘柄(整理銘柄)・上場廃止の可能性がある銘柄(監理銘柄)
・信託期間(投資信託が運用される期間)が20年未満の投資信託等
・分配金が毎月支払われる投資信託等
・デリバティブ取引(先物取引やオプション取引など)を用いた一定の投資信託等

例えば、名前に「ブル」や「ベア」が含まれている投資信託は、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等に該当するため、成長投資枠では投資できません。

新NISAの成長投資枠はどんな人におすすめ?

新NISAの成長投資枠はどんな人におすすめ?

成長投資枠は、つみたて投資枠よりも対象商品が幅広く、年間投資枠も高く設定されています。また、積立投資だけでなく一括投資も可能です。
ここでは、これらの違いをもとに、成長投資枠の利用がおすすめである人の特徴を解説します。自分自身の投資スタイルや投資目的などと合っている部分があれば、ぜひ成長投資枠を活用してみてください。

非課税で運用する商品の選択肢を広げたい人

つみたて投資枠の対象外である投資信託や個別株などを非課税で運用したい人は、成長投資枠を活用するとよいでしょう。成長投資枠の対象商品数は、投資信託だけでも2024年3月18日時点で約1,880本あります。
さらには、国内外の個別株やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など幅広い金融商品にも投資が可能です。

一方、つみたて投資枠の対象商品は、金融庁が定める一定の基準をクリアした投資信託に限られており、対象商品数は2024年2月29日時点で合計282本です。
「つみたて投資枠の商品では物足りない」「話題の米国株にも投資してみたい」といった方は、非課税で運用する商品の幅が広い成長投資枠の利用がおすすめです。

【参考】一般社団法人 投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」詳しくはこちら
【参考】金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」詳しくはこちら

年間120万円を超える新規投資をしたい方

1年間で120万円を超える金額を投資に回せる方は、つみたて投資枠だけでなく成長投資枠も活用するとよいでしょう。
つみたて投資枠のみでは、年間で120万円までしか投資ができません。そのため、毎月10万円ずつ積み立てると、つみたて投資枠の年間投資枠は上限に達します。

その点、成長投資枠であれば年間240万円まで金融商品に投資ができます。つみたて投資枠の年間投資枠120万円と合わせれば、最大で360万円の投資が可能です。

まとまった資金を一括で投資したい人

成長投資枠であれば、年間で最大240万円まで商品に一括投資ができます。値上がりが期待できる商品を見つけた時や、ボーナスなどのまとまった収入があった時などに一括投資をしたい人は、成長投資枠を活用するのも方法です。

ただし、商品の価格が高い時に一括投資をしてしまい、その後価格が下がり続ける「高値づかみ」により、大きな損失を被るかもしれません。
成長投資枠で一括投資を行う場合は、投資の基本的な知識を身につけたうえで、市場の動向や金融環境などをもとに、投資先を慎重に選ぶことが大切です。

新NISAの成長投資枠の活用方法

新NISAの成長投資枠の活用方法

新NISAの成長投資枠は、幅広い金融商品を非課税で運用できる魅力的な制度です。しかし、いざ投資をするとなると、成長投資枠をどのように活用したらよいのか迷ってしまうかもしれません。

そこで、ここでは投資の初心者の方でも取り組みやすい、成長投資枠の活用方法を解説します。ご自身に合った投資方法を選び、将来にむけて資産を増やしていきましょう。

つみたて投資枠と同じ商品を成長投資枠でも購入する

つみたて投資枠の対象商品は、基本的に成長投資枠でも投資が可能です。毎月20万円や30万円を積立投資に充てられるのであれば、2つの非課税枠で同じ商品を積み立てるのも1つの方法です。
例えば、つみたて投資枠を10万円、成長投資枠を5万円利用することで、1年間で同じ商品を最大180万円積み立てることができます。

また、毎月の積立金額を増やすことで、新NISAの非課税保有限度額1,800万円をより早く使い切ることが可能です。
非課税保有限度額を早く埋めて、より多くの元本を長期にわたって運用すると「複利効果」が働きやすくなります。複利効果とは、運用益を元本に含めて再投資することで、資産が膨らんでいく効果のことです。

NISAの非課税保有限度額を早く使い切ると、より多くの金額を非課税枠で運用できるようになります。それに加え、新NISAの非課税枠で商品を運用しているあいだは、運用益に対する税金がかかりません。
そのため、通常の証券口座で運用した時よりも多くの運用益を再投資に回すことができ、大きな複利効果が期待できます。
昇進や転職、起業などで収入が増え、毎月10万円以上の積立ができるようになった時は、つみたて投資枠に加えて成長投資枠を利用するのも方法です。

債券型の投資信託で堅実な運用をする

つみたて投資枠の対象商品は、資金の投資先に株式を指定できる株式投資信託と、株式や公社債など複数の資産を投資対象とする資産複合型(バランス型)が大半を占めます。

一方、成長投資枠では株式型や資産複合型に加えて、債券型の投資信託にも投資が可能です。債券型の投資信託は、投資対象に国債や社債などを含められる債券である投資信託です。
例えば、セカンドライフで資産運用をする時や、マイホームの頭金を積み立てる時など、成長投資枠で債券型の投資信託に投資をするのも一案です。

セカンドライフでの資産運用は、積極的に増やすことよりも資産を極力減らさないことを重視するのがよいと​されています。また、マイホームの頭金を取得予定のタイミングで確実に準備したい場合も、安全性を重視した運用を心がけることが重要です。

セカンドライフにおける資産運用や、マイホームの頭金の準備などには、リスクを抑えた堅実な運用ができる債券型の投資信託を成長投資枠で投資するのも選択肢の1つです。

REIT投資信託で間接的に不動産に投資をする

REIT投資信託(REITファンド)とは、複数のREIT(不動産投資信託)に投資する商品のことです。REITは、投資家から集めた資金をオフィスビルや商業施設、マンションなど多数の不動産に投資するため、分散投資によるリスク軽減効果が期待できます。

REIT投資信託は、複数のREITに分散投資されるため、さらなるリスク軽減効果が期待できるだけでなく、より少額から不動産投資を始めることが可能です。
不動産投資に興味がある方や、投資対象に不動産を含めたい方は、成長投資枠でREIT投資信託に投資をしてみるのもよいでしょう。

ETFでリアルタイムでの取り引きをする

新NISAの成長投資枠の活用方法

成長投資枠は、つみたて投資枠よりもETF(上場投資信託)の選択肢が豊富です。ETFは、株式と同様に証券取引所に上場している投資信託のことです。

ETFであれば、投資信託と同じく1つの銘柄で手軽に分散投資ができます。それに加え、個別株のようにリアルタイムでの取り引きも可能です。
通常の投資信託は、その仕組み上、売却や購入の注文をした時点では価格が分かりません。
その点、ETFであればスマートフォンやパソコンなどで価格の推移を見ながら、売買のタイミングを判断できます。

より手軽にリアルタイムでのトレードをしてみたい方は、成長投資枠の対象商品であるETFに投資をするのもよいでしょう。

アクティブファンドへの投資でリターンを狙う

成長投資枠では「アクティブファンド」の選択肢も豊富です。アクティブファンドとは、運用のプロが商品(ファンド)の運用方針にもとづいて投資先を厳選し、特定の指数を上回る利益を目指す投資信託のことです。

一方、つみたて投資枠の対象商品の多くは「インデックスファンド」となっています。インデックスファンドは、日経平均株価(日経225)やNYダウ(ダウ平均株価)、S&P500指数など特定の指数と連動するような運用成果を目指す投資信託です。
インデックスファンドは販売手数料や信託報酬などのコストが低く、特定の指数と同じ値動きを目指すため運用成果が分かりやすいというメリットがあります。
その反面、特定の指数を上回るリターンは期待できません。

アクティブファンドは、インデックスファンドよりもコストは高い傾向にあるものの、目標とする指数を上回るリターンが期待できます。
積極的に高いリターンを狙いたい方は、成長投資枠でアクティブファンドに投資をするのもよいでしょう。

個別株式に投資をして売却益や配当金、株主優待を得る

成長投資枠であれば、NISA口座を開設した金融機関が取り扱う国内外の株式を非課税で運用できます。非課税枠の範囲内で投資した株式を売却した時に得られた利益には、税金がかかりません。

例えば、成長投資枠で50万円分の株式に一括投資をしたとしましょう。5年後にその株式を80万円で売却した場合、売却益30万円にかかるはずの約6万円(30万円×20.315%)の税金が非課税となります。

さらに新NISAであれば売却した翌年には、50万円分の非課税枠を再利用できるようにもなります。
また、株式を発行する企業から支払われた配当金にも税金がかかりません。成長投資枠で安定した配当金が期待できる企業の株式に投資をし、収入源を1つ増やすのも有効な活用方法といえます。

国内企業のなかには、株主に対して「株主優待」を提供しているところもあります。日用品や食品、飲食店の割引き券などを優待する企業の株式に投資をして、家計を楽にするのもよいでしょう。

金融機関によってはIPO株にも投資が可能

IPO(新規公開株)とは、株式市場に新しく上場する企業の株式のことです。IPO株の多くは、上場後に付いた最初の価格(初値)が上場前の購入価格を上回るといわれています。

将来的に大きな成長が期待できる企業のIPO株を上場前に購入し、上場後に売却することで高いリターンを得られる可能性があります。
証券会社によっては、成長投資枠でIPO株に投資をすることも可能です。成長投資枠を利用して、IPO株投資にチャレンジするのもよいでしょう。

ただし、上場前のIPO株に投資をするためには、証券会社の抽選に当たらなければなりません。証券会社によって、IPO株の取扱実績や抽選方法などが異なるため、NISA口座を開設する際によく確認することが大切です。

新NISAの成長投資枠の疑問

新NISAの成長投資枠の疑問

最後に、新NISAの成長投資枠についてのよくある疑問と、それに対する回答をご紹介します。

成長投資枠とつみたて投資枠は併用した方がいいの?

成長投資枠とつみたて投資枠を無理に併用する必要はありません。それぞれの特徴をよく理解し、投資目的や投資経験なども踏まえて利用する非課税枠を選ぶことが大切です。

例えば、投資の目的が老後の資金を準備することであり、商品選びにも慣れていない人は、つみたて投資枠のみの利用でよいでしょう。長期の積立投資に向いた商品が厳選されており、投資初心者でも運用商品を選びやすいためです。

投資経験を積み、国内株式や米国株式などに投資をしたくなった時に、成長投資枠の活用を検討しても遅くはありません。

成長投資枠とつみたて投資枠の配分の目安はある?

成長投資枠とつみたて投資枠の配分は、投資目的やリスク許容度などで異なるため、一律の目安というものはありません。

例えば、将来にむけて着実に資産を形成していきたいのであれば、単独で非課税保有限度額を使い切れるつみたて投資枠の配分を多くするのも方法です。
投資経験があり、投資信託や個別株式に投資をして積極的にリターンを狙いたいのであれば、成長投資枠に投資する配分を増やした方がよいといえます。

投資の経験があまりなく、判断に迷うようであれば、まずはつみたて投資枠を中心に利用し、徐々に成長投資枠で投資する金額を増やすという方法もあります。

成長投資枠は投資上級者向けなの?

成長投資枠は、必ずしも投資の上級者向けというわけではありません。しかし、つみたて投資枠と比べると、投資の知識や経験がある方向けの非課税枠ともいえます。
成長投資枠の対象商品は、上場株式や投資信託などつみたて投資枠よりも幅広く、商品選びの際に投資の知識と経験が求められることも多いためです。

投資の初心者の方は、まずはつみたて投資枠を活用しながら投資について学び、知識と経験が深まってきたら成長投資枠の活用するのも方法です。

成長投資枠でおすすめの銘柄はある?

成長投資枠でのおすすめの銘柄は、一概にはいえません。投資目的やリスク許容度、投資に回せる予算などを踏まえて成長投資枠の利用方法を考えたうえで、商品を選ぶことが大切です。
例えば、つみたて投資枠も併用して投資信託を積み立てる場合、交付目論見書で資金の投資先(株式、債券、不動産など)と運用方針などを確認して商品を選ぶことが大切です。

また、過去の運用実績や購入時手数料、運用管理費用(信託報酬)などを確認することも重要となります。
成長投資枠で日本を代表する企業や、世界を牽引する米国企業などの株式に投資をしたい場合は、財務状況や成長性、業界の将来性などを調べたうえで銘柄を選ぶとよいでしょう。

成長投資枠での購入方法はつみたて投資枠と異なる?

成長投資枠での購入方法は、毎月一定額を定期的に自動で購入する「積立」と、好きなタイミングで金額を決めて投資ができる「一括」を選択できます。
一方、つみたて投資枠で選択できるのは積立のみであり、一括投資は選べません。

まとめ

新NISAの成長投資枠は、年間240万円もの投資枠があります。また、つみたて投資枠よりも投資信託の選択肢が幅広く、国内外の株式やREIT投資信託などにも投資が可能です。

成長投資枠を活用できれば、多様な商品を非課税で運用しながら、将来にむけて資産を築いていくことができるでしょう。

ただし、新NISAは投資による資産形成をする上で税制優遇がある制度に過ぎず、リスクを伴う投資であることには変わりありません。投資目的やリスク許容度、投資に回せる予算をもとに、成長投資枠の利用方法をよく考えて投資をすることが大切です。

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