外貨預金のデメリットとは?メリットや利用時のポイントを解説

外貨預金は、日本円を米ドル外国通貨に換えて預け入れる預金です。高金利による利息や為替差益が期待できる一方、為替差損による元本割れの可能性や預金保険制度の対象外であるなどのデメリットがあります。この記事では、外貨預金のデメリットや、運用時のポイントを解説します。

外貨預金のデメリットとは?メリットや利用時のポイントを解説

外貨預金とは?

外貨預金とは?

外貨預金は、日本円を「外国の通貨(外貨)」に換えて預け入れる預金です。

外貨預金で交換できる外貨は、金融機関によって異なりますが、以下のような種類があります。

・米ドル
・ユーロ
・オーストラリアドル(豪ドル)
・ニュージーランドドル
・英ポンド
・南アフリカランド
・中国人民元
・スイスフラン
・トルコリラ

通貨によって金利や為替レートは異なりますが、基本的な仕組みは同じです。

預金の一種であるため、外貨預金口座に預けていると利息を受け取れます。ただし利息は、外貨で支払われます。

外貨預金のメリット

外貨預金のメリット

外貨預金の主なメリットは、以下のとおりです。

・日本円での預金よりも高金利での運用が可能
・預入時よりも円安なら、為替による利益が得られる
・投資の初心者でも始めやすい

まずは、外貨預金の主なメリットを理解し、資産運用の際に活用されることがある理由を押さえておきましょう。

日本円での預金より高金利での運用が可能

外貨預金は、円建ての預金よりも多くの利息を得られる可能性があります。日本よりも金利が高い国の通貨に両替をして預け入れることができるためです。

1990年代のバブル崩壊以降、日本経済は低成長が続いてきました。そのため、日本の中央銀行である日本銀行(日銀)は、経済を活性化させるために金融緩和政策を実施しています。

その影響により、円建ての預金金利も低水準となっており、預金口座にお金を預けていてもさほど利息は得られません。

一方、経済成長率や物価上昇率が高い国は、日本よりも金利が高い傾向にあります。日本よりも金利水準の高い国の通貨で預金をすることで、より多くの利息収入を得ることが可能です。

預入時よりも円安なら、為替による利益が得られる

外貨預金は、預入時よりも為替が円安に進んでいれば、為替差益も得られます。

例えば、1米ドルが150円の時に、1,000米ドルの外貨預金をしたとします。預け入れの際に支払う金額は、日本円で「150円×1,000米ドル=15万円」です。

1年が経過した時に預け入れた1,000米ドルを引き出す際、1米ドルが170円になっていると、日本円に換算した時の金額は「170円×1,000米ドル=17万円」となります。

そのため、為替相場が変動して円安になったことで2万円の利益が生じます(税金、手数料は考慮していません)。

■外貨預金で利益が出る例

外貨預金のメリット

利息収入に加えて為替差益も期待できる点は、外貨預金の魅力の1つといえます。

投資の初心者でも始めやすい

外貨預金の仕組みは「金融機関で口座を開設し、日本円を外貨に両替して預け入れる」というシンプルなものであるため、投資の経験があまりない方でも理解しやすいでしょう。

また、最低預入金額は1通貨単位としている金融機関が多く、1米ドルや1ユーロなどの少額から預け入れることもできます。

加えて、外貨預金は多くの金融機関で取り扱われています。普段から利用する機会の多い金融機関で外貨預金を始めることも可能でしょう。自宅や勤務先の近くに店舗がある金融機関で外貨預金の口座を開設すると、疑問点や不明点がある時に窓口で相談できます。

以上の点から、外貨預金は、金融商品に投資をした経験がない人でも始めやすいといえます。

外貨預金のデメリット

外貨預金のデメリット

外貨預金は、高金利による利息や為替差益が期待でき、投資の初心者にも始めやすいというメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。

・為替差損による元本割れのリスクがある
・為替手数料がかかる
・預金保険制度の対象にならない

自分自身にとって外貨預金が適しているどうかを判断するためには、デメリットも理解しておくことが大切です。

為替差損による元本割れのリスクがある

外貨預金には、為替リスクがあります。そのため、為替の変動によって円に換算した時の価値が減って元本を割る可能性があります。

例えば、1米ドル150円の時に1,0000米ドルの外貨預金をするとしましょう。預け入れる時に支払う日本円は「150円×1,000ドル=15万円」です。

1年が経過したあとに1米ドルが140円の円高になっていた場合、1,000ドルを日本円に換算すると「140円×1,000ドル=14万円」となり、1万円の損失が発生します。(税金、手数料は考慮していません)。

■外貨預金で損失が出る例

外貨預金のデメリット

利息収入によって元本割れを避けられる場合もありますが、必ずしも為替差損の分をカバーできるとは限りません。

為替相場は常に変動しているため、円ベースでは元本が保証されていないことを理解する必要があります。

為替手数料がかかる

外貨預金では、円を外貨に交換する際は「TTS」、外貨を円に交換する際は「TTB」というレートが適用されます。

TTSは、交換する日の為替レートに金融機関が定める為替手数料が上乗せされたレートです。TTBは、交換する日の為替レートから為替手数料が差し引かれたレートを指します。

つまり、外貨預金は預け入れと引き出す時の2回、為替手数料がかかるということです。

為替手数料の金額は、金融機関や両替する通貨などで異なります。利息収入を得られたとしても、預け入れや引き出しを頻繁に行うと為替手数料が嵩んでいき、手元に残る金額が少なくなってしまうかもしれません。

短期間で外貨預金を解約すると、為替手数料が利息や為替差益を上回り、損失が出るケースもあります。

そのため外貨預金をする時は、為替手数料も加味した実際の利益はどうかをよく考える必要があります。

3.預金保険制度の対象にならない

預金保険制度は、金融機関が破綻した際に、一定の範囲で預金者の資産を保護する制度です。例えば、普通預金や定期預金であれば、金融機関が破綻した時、預金者一人につき元本1,000万円までと破綻日までの利息が保護されます。

外貨預金は、預金保険制度の対象外です。万が一、外貨預金を預けた金融機関が破綻してしまった場合、預金保険制度による保証は受けられません。

そのため、外貨預金を始めるのであれば、経営基盤が安定している金融機関を選ぶことが重要です。また、1つの金融機関に資産を集中させるのではなく、複数の金融機関に分散して預け入れて、リスクの軽減をさせるのも方法です。

初心者はどの外貨を選んで外貨預金をすればよい

外貨預金を始める際、初心者の方は安定性と情報の入手しやすさを重視して通貨を選ぶのがおすすめです。特に、米ドルとユーロは外貨のなかでも比較的信頼性が高く、為替の動向もチェックしやすいため、初心者に適しているといえるでしょう。

米ドル

米ドルは、世界中で利用されている基軸通貨です。流通量がもっとも多い通貨であり、値動きが比較的小さい傾向にあります。

また「有事のドル買い」という言葉もあるほど信頼性が高い点も特徴的です。戦争や武力紛争などの非常事態が発生した時は、米ドルが外国為替市場で買われやすくなります。

米ドルの為替相場は、アメリカの経済指標や政策金利の動向に左右されます。特に、雇用統計や消費者物価指数(CPI)などの重要な経済指標は、日本のメディアでも報道される機会が多いため、米ドルであれば為替相場に関する情報を入手しやすいでしょう。

さらに米ドルであれば、アメリカを始め世界のさまざまな国で利用が可能です。米ドルで外貨預金をすると、旅行や仕事で海外に行った際、口座から米ドルを引き出して支払いに利用することもできます。

ユーロ

ユーロは、EU(欧州連合)に加盟する国で使用されている通貨です。米ドルに次ぐ取引量を誇るため「第2の基軸通貨」とも呼ばれています。

EUの経済規模は大きく、為替の変動も比較的安定しているため、初心者に向いている通貨といえるでしょう。

ユーロの為替相場は、ユーロ圏の経済政策を統括する欧州中央銀行(ECB)の経済政策や、ドイツ・フランスなど主要国の経済指標の影響を受けて変動します。

これらの情報も、日本のメディアで取り上げられることが多いため、ユーロの為替相場に関する情報も比較的入手しやすいといえます。

また、米ドルとユーロに分散投資をするのも一案です。2つの通貨に分けて外貨預金を行えば、どちらかの通貨が下落した際の影響を和らげられる可能性があります。

外貨預金に向いている人の特徴

外貨預金に向いている人の特徴

外貨預金が向いている人の特徴は、以下のとおりです。

・海外旅行や海外出張が多い人
・円安となった時に保有資産が目減りするリスクを抑えたい人

自分自身にとって外貨預金が合っているかどうかを判断するためにも、向いている人の特徴をしっかりと押さえておきましょう。

海外旅行や海外出張が多い人

仕事や旅行などで海外に行く機会の多い人は、外貨預金を活用することでさまざまなメリットを得られる可能性があります。

例えば、年に数回アメリカに出張をする機会がある場合、米ドルの外貨普通預金口座を開設しておくと、米ドルが必要な時は現地のATMですぐに引き出すことができます

空港やホテルなどの両替所に行って円を米ドルに両替する手間や時間を省きやすくなるだけでなく、両替手数料もかかりません。

米ドルやユーロなど特定の通貨を利用する国に行くことが多いのであれば、外貨預金を始めるのも1つの方法です。

円安となった時に保有資産が目減りするリスクを抑えたい人

日本円以外の通貨を持ち、資産を分散させたい方にも外貨預金は向いていると考えられます。

日本は、食料やエネルギーのほとんどを輸入しています。そのため、ほかの通貨に対する日本円の相対的な価値が下がる「円安」が進行すると、食料やエネルギーなど輸入によって得られている物の価格は基本的に上昇します。

物の価格が上がるということは、相対的に円の価値は下がるということです。したがって、資産を日本円のみで保有していると、円安となった際に保有資産の価値が目減りしやすくなります。

一方、外貨預金を利用して米ドルやユーロドルなどの通貨にも分散して資産を保有していれば、円安になった時に保有資産の価値が目減りするリスクを軽減できます。

外国為替は、例えるならシーソーのようなものです。一方の通貨の価値が下がればもう一方の価値は上昇するため、すべての通貨の価値が同時に減少することは基本的にありません。

円安の際に保有資産が目減りするのを防ぎたいのであれば、外貨預金を始めるのも一案です。

外貨預金を賢く運用するポイント

外貨預金を賢く運用するポイント

外貨預金を賢く運用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、外貨預金を有効に活用するための主要な考え方を詳しく解説します。

1つの通貨に絞らず、複数の通貨に分けて保有する

各国の経済状況や政治情勢は刻一刻と変化しているため、好況な国がある一方で、ほかの国は著しい不況になっていることもあります。

特定の通貨のみを保有していると、その通貨を利用する国の景気が芳しくなくなった時に、保有資産の価値が大きく下落してしまうかもしれません。

そこで、米ドル、ユーロ、オーストラリアドルなど異なる通貨を複数持ち、リスクを分散させる方法があります。

複数の通貨に資産を分散させておくと、特定の通貨の価値が下落したとしても、ほかの通貨の価値が維持または上昇していれば、保有資産全体の価値の減少を防ぐ効果が期待できます。

預入のタイミングを分散させる

外貨預金の場合、日本円で同じ金額を毎月など決まったタイミングで積み立てると、為替変動リスクを軽減する効果が期待できます。この方法は「ドルコスト平均法」とも呼ばれています。

ドルコスト平均法を用いると、円高のタイミングでは多くの外貨を、円安のタイミングでは少ない外貨を購入するため、平均購入価格を下げることが可能です。

一方で、日本円を一度にまとめて外貨に両替すると、そのタイミングの為替レートの影響を受けやすくなります。円安の時に両替をしてしまうと、その後円高が進んで日本円に置き換えた時の価値が減少し、損失が生じしまうかもしれません。

外貨預金を用いて資産形成をする場合、まとめて外貨を両替するのではなく、ドルコスト平均法で為替変動リスクを分散させる方がよいといえます。

為替相場など値動きにつながる情報を定期的にチェックする

外貨預金を利用する場合、各国の政治・経済の動向や金融政策など、通貨の値動きに影響を与えそうな情報を定期的にチェックすることが大切です。

為替相場に影響する情報を確認する習慣があると、将来を予測して先に対策を打てる可能性があります。

例えば、保有する通貨の価値が目減りしそうな不安材料が見つかった時は、ほかの通貨に切り替えて対処できるかもしれません。

外貨預金に預け入れをしたあとは、新聞やテレビ、インターネットなどで為替相場に影響しそうな情報を確認することをおすすめします。

引き出す予定のない余裕資金で運用する

使う予定が決まっているお金まで外貨預金に回してしまうと、資金が必要になった時に為替が円高となっており、引き出すに引き出せない状況になるかもしれません。

そのため、外貨預金の口座には、しばらく使う予定のない余裕資金を預け入れることをおすすめします。

仮に預金額が為替差損で目減りしても、すぐに引き出す必要がないのであれば、円安になるまで待つことができます。また、その間に利息を得て損失分を補てんすることも可能です。

利益が出た場合は確定申告をする

外貨預金で生じた為替差益は「雑所得」となるため、原則として確定申告が必要です。

例えば、1ドル150円の時に15万円分の外貨を預けたとしましょう。引き出しの際に1ドルが160円になっており円での価値が16万円となった場合、1万円の為替差益が発生します。

この1万円の為替差益は、雑所得として課税対象になるため、期限までに確定申告をし、必要に応じて納税をしなければなりません。

一方、外貨預金の利息は「利子所得」として源泉分離課税の対象になります。預け先の金融機関が、利息から税金を徴収し、預金者の代わりに納めてくれるため、原則として確定申告は不要です。

また、為替差益が生じても、以下に該当するのであれば確定申告は必要ありません。

・年収2,000万円以下の給与所得者で為替差益を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以下の場合
・年金収入が400万円以下の年金所得者で、為替差益を含めた年金所得以外の所得が年間20万円以下の場合
・すべての所得の合計が48万円以下の場合

確定申告が必要な場合、申告期間は毎年2月16日から3月15日までです(土日により前後することがあります)。

確定申告をしないと、加算税や延滞税が課せられる可能性があります。為替差益が出た際は、確定申告の要否を確認し、必要に応じて期限までに申告を済ませましょう。

まとめ

まとめ

外貨預金は、為替相場が円高になると為替差損が発生する可能性があるほか、預け入れの時と引き出しの時にそれぞれ為替手数料がかかります。また、預金保険制度の対象外であるため、金融機関が破綻したとしても口座内の資産は保護されません。

このように、外貨預金にはさまざまなデメリットがあります。外貨預金を利用する場合は、損失が生じても生活に影響が生じないよう、余裕資金を積み立てていくことが大切です。

また、複数の通貨に分散してリスクの軽減を図ったり、為替動向に関する情報を定期的にチェックしたりすることも外貨預金で資産形成をする際に押さえておきたいポイントです。

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