働き方改革で得するのはどんな人?

筆者はここ数年で「働き方改革」に関する取材が増え、日本の会社員の働き方自体がダイナミックに変わってきているのをひしひしと感じています。旅行業界などから熱い視線が注がれているワーケーションや、企業が取り組む働き方改革の一例をご紹介します。

働き方改革で得するのはどんな人?

「仕事+休暇」で消費拡大。ワーケーション・バブルとは

最近、長野県軽井沢町在住の知人から聞かされたのが、軽井沢の「ワーケーション・バブル」の話です。ワーケーションとは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」をミックスした造語で、観光地など自宅以外の休暇先でリモートワークを行うことを意味し、コロナ禍で苦戦が続く旅行業界などから熱い視線が注がれています。

以前から「コロナの感染拡大が深刻化する東京を脱出した富裕層が軽井沢の別荘に避難している」といった都市伝説のような噂が出回っていましたが、そういうことではないようです。宿泊施設のワーケーション対応や在宅ワーク用の環境を整備した物件の増加で町内のワーケーション人口が増え、それに伴い消費も拡大しているのです。

首都圏からの観光客が激減して閑古鳥が鳴いていた商店街やアウトレットモール、ゴルフ場などが、ワーケーションの利用者やその家族で賑わいを取り戻しているとすれば、悪い話ではないでしょう。都内の狭い自宅に引き籠もって原稿を書いている筆者からすると、自然に恵まれ、レジャー施設も充実した軽井沢でのワーケーションはうらやましい限りです。

「働き方改革」で働き方の選択が出来る時代に

さて、筆者はここ数年で「働き方改革」に関する取材が増え、ワーケーションに限らず、日本の会社員の働き方自体がダイナミックに変わってきているのをひしひしと感じています。

働き方改革のフロントランナーと目されるある企業では、週3日勤務で仕事と学生時代からのバンド活動を両立させプロデビューを目指す社員や、コロナ禍の前から完全リモートワークで無農薬野菜の栽培や釣りなどカントリーライフを満喫する社員がいるという話を聞かされました。出産した女性社員には、子どもが就学年齢に達するまで一時的にパートタイマーな時短勤務を選択する人が多いとのことでした。

人流抑制のために在宅勤務が推奨されるなど今回のコロナ禍が働き方改革を大きく前進させた面もありますが、もはや、「会社員だから毎日満員電車で窮屈な思いをしながら通勤しないといけない」とか、「会社員だから人生の夢を制限されても仕方ない」という時代ではないのです。

社員の副業に前向き?その狙いとは

働き方改革先進企業は、社員の副業についても前向きです。
「副業元年」と言われた2018年に大企業の人事労務に詳しい社会保険労務士の方に取材をしたところ、「副業容認は、自社の社員の働き方の自由度を上げるというよりも、副業の形で他社の優秀な人材を横取りするのが狙いです」という指摘を受けたことがありました。

そこで某社の働き方改革取材の際、この話を人事担当役員にぶつけたところ、次のような答えが返ってきました。「当社は、どの会社からも必要とされるような人に働いてほしいと考えています。ただし、フルタイムがマストではなく、週3日が当社で週2日が他社という勤務体制でも構いません」
なるほど、と腑に落ちました。別の会社の取材の際には、執行役員によるさらに直截的な物言いを耳にしました。「一番扱いに困ってしまうのは、『当社がすべて』『当社しかない』という社員です」。

現実には難しい人材流動化…この状況下で何をすべきか

賛否両論があった大物財界人らによる「45歳定年制」の提言もそうですが、背景にあるのは「日本企業も欧米企業のように人材流動化によって新陳代謝を進め、企業価値を高めていかないといけない」という危機感なのではないかと思います。

もっとも、現実に目を移すと、事はそう簡単ではないかもしれません。終身雇用制の崩壊が叫ばれて久しいのですが、多くの企業には依然、終身雇用や年功序列型賃金の慣習が残っています。加えて今年2021年4月には「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、企業には、働く意欲のある社員の70歳までの就業機会確保が義務付けられました。見方を変えれば、国が「70歳までは会社に面倒を見てもらえ」というお墨付きを与えているようなものです。

とはいえ、働き方改革が今後大きく後退してしまうことはないと思います。こうした状況下で特に若手会社員が何をすべきかと言えば、やはり、社外で通用する仕事のスキルや経験値を上げる、ニーズの高い職種で専門性を磨くなど自分自身の市場価値を上げていくことに尽きるのではないでしょうか。

自分を高めて会社員人生に選択肢を!

働き方改革が進む社会では、「どの会社からも必要とされる人材になる」ことによって、将来の働き方の自由度を格段に高めることが可能になります。

どうやら、社内マウンティングに精を出している暇などないようです。そこでにわかに若手会社員がコロナ禍で何をしているのかが気になり、仕事仲間や取材相手に尋ねてみたところ、資格取得の勉強を始めた、ウェブのセミナーや人材交流会に出席している、コロナ明けの留学準備を進めているといった“意識高い系”の人が多いことに驚かされました。

長引くコロナ禍ですが、この間の過ごし方がこれからの会社員人生を左右する可能性が大です。恐らく数年後には、「コロナ禍の決断が私を変えた」的な啓発本がたくさん出てくるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスを制御するのは不可能ですが、自分の未来は自分で制御できます。自粛ストレスに負けず、後で悔いることのない時間を過ごされますように!

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