iDeCo・確定拠出年金は受け取る前に亡くなるとどうなる?

老後のお金に対して関心が高まり、資産運用を考える人も増えました。老後資金の準備方法としてiDeCo(個人型確定拠出年金)を選ばれる人も多いでしょう。しかし、iDeCoは60歳以降でなければ受け取ることができません。では60歳より前に加入者が亡くなった場合はどうなるのか、手続きや条件、注意点とともに解説していきます。

iDeCo・確定拠出年金は受け取る前に亡くなるとどうなる?

iDeCo・確定拠出年金の受け取り前に死亡した場合

iDeCo・確定拠出年金の受け取り前に死亡した場合

iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金の愛称で、企業に勤める人が加入できる企業型確定拠出年金と基本的には同じ制度となります。

iDeCoは年齢や居住地、国民年金の不払い・企業型確定拠出年金の状況により加入できない場合もありますが、自営業者、会社員や公務員、専業主婦など、ほとんどの人が加入できます。60歳まで掛金を拠出し、60歳以降になるとそれまで積み立てられた資産を一括、もしくは年金として分割で受け取ることができます。しかし、万が一60歳になる前に加入者が亡くなってしまった場合、それまで拠出してきた掛金はどうなるのでしょうか。

遺族がすべて「死亡一時金」として受け取れる

60歳になる前に亡くなった場合は、死亡一時金として遺族が受け取れます。このとき受け取れる金額は、それまでの積み立て資産をすべて現金化し、手数料を差し引いた金額です。

遺族の受取人順位は法定相続人の順位とは少し異なります。
確定拠出年金の受取人の順位は、配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹の順となります。また法定相続人として含まれない事実婚の内縁関係の配偶者も、確定拠出年金では受け取る権利があります。

法令に基づく死亡一時金の受け取り順位

順位 受取人
1 配偶者
2 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、死亡時に加入者の収入によって生計を維持していた人
3 2以外の人で、加入者の収入によって生計を維持していた人
4 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、2に該当しない人

【参照】確定拠出年金法 詳しくはこちら

iDeCoの死亡一時金の手続き方法

iDeCoの死亡一時金の手続き方法

確定拠出年金の加入者が亡くなったとき、自動的に積立金を受け取れるわけではなく、遺族から申請を行う必要があります。

手続き方法や申請書類など

申請の方法は、遺族が加入者の死亡届に死亡診断書か、死亡を明らかにすることができる書類を添付して、加入していた運営管理機関に提出します。また運営管理機関とは別に、年金資産の管理を行っている記録関連運営管理機関に死亡一時金裁定請求書を提出します。

このとき受け取れる死亡一時金は、死亡時点での評価額ではなく、運営管理機関が資産を売却し約定した日の金額となる点に注意しておきましょう。

iDeCoの死亡一時金は、所得税はかかりませんが、相続税の対象となり死亡一時金以外の相続財産と合算することになります。
ただ生命保険の死亡保険金と同様に、相続人の人数に対して1人500万円までは課税されません。

iDeCoの一時金は「みなし相続財産」となる

ここで注意しておきたいのが、死亡一時金も死亡保険金と同様に「みなし相続財産」となり、相続税の計算時には相続財産として含まれますが、財産分与には相続財産として含まれないことです。

例えば、相続財産が5,000万円、iDeCoの年金残高が1,000万円の場合、相続税の計算には相続財産とiDeCoの年金残高が合算され6000万円となります。しかし財産分与では、iDeCoの年金残高は受取人固有の財産となり、相続財産の5,000万円を相続人で財産分与することになるのです。

万が一のために加入者ができることや注意点

万が一のために加入者ができることや注意点

これまでみてきたように、万が一加入者が亡くなっても死亡一時金で受け取れるiDeCoですが、手続きの加入者がやっておいたほうが良いことがあります。

受取人を指定しておく

確定拠出年金の死亡一時金の受取人は、法令で定められた順位で支払われます。しかし、あらかじめ受取人を指定しておくこともできます。指定できる範囲は前述同様に、配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹となります。

給付の手続きは死亡後5年!家族にiDeCoの加入を知らせておくべし

ここで手続きに関しての注意点があります。

受け取りの申請を遺族が行えるのは、加入者が死亡後5年以内となっています。5年を過ぎても申請を行わなかった場合、それまで積み立てられた資産は国庫として帰属されることになり、遺族が受け取ることができなくなります。

iDeCoは個人が任意で加入できる制度のため、配偶者や家族に知らせずに管理しているケースも多々見受けられます。しかし万が一のことを考えて、iDeCoに加入していると家族にわかるようにしておくことも大切といえるでしょう。

その他にも60歳前に受け取れる2つの条件

その他にも60歳前に受け取れる2つの条件

ここまでは60歳になる前に、亡くなった場合の死亡一時金について説明してきました。ここからは、加入者が障害状態になったときに受け取れる障害給付金と、iDeCoを脱退したときに受け取れる脱退一時金について解説していきます。

障害給付金

60歳になる前に受け取ることができる条件の1つは障害給付金です。

障害給付金は加入していた人が傷病などで高度障害の要件に該当した場合に受け取れます。受け取りの形態としては、一時金、年金の2つの選択肢に加え、一部を一時金で残りは年金で受け取るということも可能です。

高度障害の要件は以下の状態となります

⑴障害基礎年金の受給者
⑵身体障害者手帳(1級~3級までの者に限る)の交付を受けた者
⑶療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた者
⑷精神保健福祉手帳(1級及び2級の者に限る)の交付を受けた者

出典 

【参考】厚生労働省:確定拠出年金制度について 詳しくはこちら

脱退一時金

iDeCoは原則60歳まで資産を引き出すことはできませんが、脱退一時金を受け取る条件をすべて満たした場合には、資産を引き出せる可能性があります。ただ条件が厳しいので、実際に引き出すことができる人は少ないでしょう。

以下の5つの要件をすべて満たす場合は、60歳未満でも脱退一時金として資産を受け取ることができます。

⑴国民年金の第1被保険者のうち、国民年金保険料の全額免除又は一部免除、もしくは納付猶予を受けている方
⑵確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
⑶通産拠出期間が5年以下、又は個人別管理資産が25万円以下であること
⑷最後に企業型確定拠出年金又は個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者の資格を喪失した日から2年以内であること
⑸企業型確定拠出年金の資格喪失時に脱退一時金を受給していないこと

出典 

【参考】iDeCo公式サイト:「脱退一時金の請求手続きについて」 詳しくはこちら

まとめ

iDeCoは老後資金の準備に役立つ制度です。一方、60歳以降でなければ基本的に引き出せず、もしそれまでに亡くなってしまった場合、掛金がどうなってしまうのかが不安材料でした。しかし万が一60歳になるまでに亡くなってしまった場合でも、それまで積み立てられた資産は死亡一時金として遺族が受け取れます。その際にあらかじめ受取人を指定しておくことも可能です。
また、5年以内に遺族からの請求がなければ受け取ることができなくなる点にも注意しておきましょう。iDeCoに加入していると家族にあらかじめ伝えておくことも大切です。

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