津村 記久子×三菱UFJ信託銀行「楽しみなこと、ひとつ」第1話 カフェラテの憂うつ(前)

芥川賞作家・津村記久子さんによるショートストーリー「楽しみなこと、ひとつ」(全10話)の第1話「カフェラテの憂うつ(前)」をお届けします。

津村 記久子×三菱UFJ信託銀行「楽しみなこと、ひとつ」第1話 カフェラテの憂うつ(前)

(C)津村記久子 シティリビング(東京版)8/23号

第1話 カフェラテの憂うつ(前)

 みんなコーヒーを買うなら9時以降にしてよ、と自分も8時40分に並んでおきながら朔美は勝手なことを思う。職場の近くのコーヒーショップには、ときどき行列ができていることがあって、今日がその日だった。毎朝冷たいカフェラテを買って、それを半分飲みながら職場に行き、残りの半分を自分のデスクで飲み終わるのが朔美の毎日の習慣だった。帰りも、2日に1回はその店でカフェラテを買って帰り、駅で電車を待ちながら飲む。最初の頃はそのことに救いを感じていたように思うけれども、毎日やっていると行列につかまることもある。

 朔美はとりあえず携帯を出してニュースをチェックする。時間が余っているわけでもないのにどうかと思うけれども、前の人たちと店員さんを恨んでしまいそうになったので気をそらしたかった。電車の中で読んでいた俳優の二股についての記事の続きを読もうとページを開いて、自分はやっぱりこの話興味ないわ、と思いながら記事の最後までスクロールする。

 記事の真下には、新着記事へのリンクが5点ほど示されていて、その一つに「ラテマネー」という言葉があるのが目に入った。「ラテ」ってカフェラテのラテ? と記事を開こうとすると、前に並んでいる30代半ばぐらいの男の人2人が、そういえばここ値上げするんだって、と言い出し、朔美は驚いて耳を澄ます。

「10円程度らしいからよかったけど」

「そうか。でも月の出勤日を22日だと考えて1日1回飲んでるとすると、年間2640円これまでよりよけいに高いな」

 計算の早い2人目の人の話を、最初の人は「細かい」と笑い飛ばす。計算の早い人は「まあ朝の精神の安定に年間それだけ払ってもいいかって思えるかだよな」と言う。

 あるかな? 精神の安定、と朔美は思いながら、携帯をバッグにしまう。こんなに行列にやきもきしてるのになあ。

Check!「ちりも積もれば…」
1回だと数10円でも、月、年にするとそれなりの金額に。投資も考え方は同じ。少額でもコツコツと長く続けることがポイントです。

出典 

>第2話 カフェラテの憂うつ(中)

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