NISAは確定申告が原則不要だが例外も!申告時のポイントも解説

NISAでは、投資信託や株式などから得られる運用益が非課税となるため確定申告は必要ありません。ただし、特定口座・一般口座を併用する場合や、配当金の受取方法などによっては確定申告が必要となることもあります。この記事では、NISAを利用する人が確定申告をするケースや申告手続きの際に押さえておきたいポイントを解説します。

NISAは確定申告が原則不要だが例外も!申告時のポイントも解説

NISAと投資で得られた非課税になる制度

NISAと投資で得られた非課税になる制度

NISA(少額非課税投資制度)とは、投資信託や株式などの金融商品に投資する際、その運用益や配当金が一定額まで非課税となる制度です。

金融商品の運用で売却益や分配金、配当金などには、税金がかかります。税率は20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。

例えば、100万円で購入した投資信託を、5年後に150万円で売却したとしましょう。

通常であれば売却益50万円に対し、その20.315%である約10万円の税金がかかり、手元に残る金額は約40万円となります。

しかし、投資信託をNISA口座で取り引きしていたのであれば運用益は非課税となり、50万円の売却益がそのまま手元に残ります。

2024年1月からは新しいNISAが始まり、旧NISAと比較して1年間で新規投資できる金額(年間投資枠)が拡充されました。また、商品を非課税で保有できる期間(非課税保有期間)は無期限に延長されています。

新NISAと旧NISAの制度内容は、以下をご確認ください。

NISAと投資で得られた非課税になる制度

※①整理・管理銘柄、②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は対象外

新しいNISAの開始にともない、2023年末をもって一般NISAやつみたてNISAでの新規買付はできなくなりました。それぞれの役割は、一般NISAは成長投資枠へ、つみたてNISAはつみたて投資枠へと引き継がれています。

NISAで確定申告は原則不要!

NISAで確定申告は原則不要!

確定申告とは、1月1日〜12月31日の1年間で生じた所得とそれに課せられる所得税を計算し、税務署に申告・納税する手続きのことです。

投資で得られた売却益や配当金、分配金などは、給与所得や雑所得などとは分けて課税される「申告分離課税」の対象です。

会社員や公務員など源泉徴収の対象となる人は、基本的に確定申告をする必要はありませんが、運用する金融商品から利益が生じると申告手続きが必要になることがあります。

しかし、NISAは運用益が非課税であり、そもそも納めるべき税金が発生しないため、確定申告は不要です。

確定申告をする場合、確定申告書などの書類を作成して毎年2月16日〜3月15日のあいだに手続きをしなければなりませんが、NISAであればその手間や時間を削減できます。

NISAで確定申告が必要になる可能性がある3つのケース

NISAで確定申告が必要になる可能性がある3つのケース

NISAは原則として確定申告は不要ですが、以下のようなケースでは申告手続きが必要となる場合があります。

1.一般NISAやつみたてNISAの非課税期間が終了した場合
2.配当金を「株式数比例配分方式」以外の方法で受け取る場合
3.新NISAと課税口座(特定口座・一般口座)を併用する場合

確定申告が必要であるにも関わらず、期限までに申告手続きをしないと無申告加算税や延滞税などのペナルティを課せられてしまいかねません。

NISAを利用しているとしても、金融商品を運用する場合は確定申告が必要なケースを理解し、適切に申告・納税手続きをすることが大切です。

1.一般NISAやつみたてNISAの非課税期間が終了した場合

2023年までに旧NISAで新規投資をした商品については、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年の非課税保有期間が終わるまで、非課税で運用が可能です。

また、2023年までにジュニアNISAで投資した商品は、5年間の非課税期間が終了した後は、継続管理勘定に移管され、口座の名義人が18歳になるまで非課税で保有できます。

一般NISAとつみたてNISAの非課税期間が終了した時や、ジュニアNISAの口座の名義人が18歳になった時は、保有資産が課税口座(特定口座や一般口座)に払い出されます。

課税口座に移管された商品から生じた売却益や配当金、分配金などには、20.315%の税金がかかるため、必要に応じて確定申告をしなければなりません。

売却益は課税口座に移管された時の価格をもとに計算される

旧NISAでは、課税口座に移管された時の価格が取得価格となり、それをもとに売却時の損益が計算される点に注意が必要です。

例えば、一般NISAの口座で投資した当初の株価が50万円、課税口座に移管された時の株価が40万円であるとしましょう。課税口座に移管されたあと、株価が50万円になったタイミングでその株式を売却すると、売却益は「50万円−40万円=10万円」となります。

NISA口座で投資した当初の取得価格をもとに計算すると、売却益は0円となるはずです。しかし、課税口座に移管された際に株価が40万円に下がっていたのであれば、売却益は10万円となり、その約20%である約2万円の税金が課せられます。

一般NISAやつみたてNISAで新規投資した商品を保有している場合は、非課税保有期間がいつ終わるのかをよく確認しておくことが大切です。

また、課税口座に移管される前であれば売却益に税金はかかりません。旧NISAの口座で保有する商品の価格が、投資した当初から上昇して含み益が出ているのであれば、課税口座の移管前に売却して現金化しておくのも1つの方法です。

課税口座に移管した後であれば確定申告で損益通算や繰越控除ができる

旧NISAの新規投資した商品を課税口座に移管したあとで損失が生じた場合、確定申告で「損益通算」をすると税負担を軽減することができます。損益通算とは、課税口座で生じた発生した損失を、同じ年のほかの所得や利益と相殺する制度です。

例えば、特定口座で100万円の損失が生じた一方で、一般口座で50万円の利益が出ていたとしましょう。この場合、損益通算により特定口座の損失と一般口座の利益を相殺することで、通算で50万円の損失となり、税金がかからなくなります。

また、損益通算をしてもなお損失が残る場合は、確定申告で「繰越控除」を申請すると、余った損失を最長3年間にわたって利益と相殺することができます。繰越控除ができる期間は、最長3年間です。

2.配当金を「株式数比例配分方式」以外の方法で受け取る場合

NISAで保有する株式やETF、REITの配当金や分配金(以下、配当金など)の受取方法によっては、確定申告が必要となる場合があります。

具体的には、以下のうち株式数比例配分方式ではない方法で配当金などを受け取り、損益通算や繰越控除、配当控除を適用する場合です。

・株式数比例配分方式:配当金などを証券口座で受け取る方法
・登録配当金受領口座方式:保有するすべての銘柄の配当金などを1つの銀行口座で受け取る方法
・配当金領収証方式:配当金受領証を、ゆうちょ銀行や郵便局などの窓口まで持参し、配当金を受け取る方法
・個別銘柄指定方式(配当金振込指定):銘柄ごとに自分自身で指定した銀行口座に配当金などを入金して受け取る方法

銘柄ごとの権利確定日(配当などの権利が与えられることが確定する日)までに「株式数比例配分方式」を選択していれば、NISA口座で保有する商品から得られた配当金などは非課税となり、確定申告も必要ありません。

一方、個別銘柄指定方式や登録配当金受領口座方式などを選択していると、受け取った配当金などには20.315%の税金がかかります。たとえ、NISA口座で保有する商品から得られた配当金などであっても、課税の対象となります。

ただし、配当金などにかかる税金は源泉徴収されるため、確定申告が必須となるわけではありません。

確定申告をすることになるのは、申告分離課税を選択してほかの課税口座で生じた損失との損益通算や繰越控除を適用する時です。

また、確定申告で総合課税を選択して配当控除を適用すると、配当金などにかかる税金から、一定金額を控除することも可能です。

新NISAと課税口座(特定口座・一般口座)を併用する場合

新NISAの非課税投資枠を超えて金融商品に投資をする場合や、新NISAの対象外である商品に投資をする場合などは、課税口座(特定口座・一般口座)を併用しなければなりません。

併用する課税口座で生じた運用益には税金がかかるため、確定申告が必要となる場合があります。

以降では、新NISAと課税口座を併用するケースの例を解説します。

1年間の新規投資額が360万円を超える場合

新NISAの年間投資枠は、成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円です。また、成長投資枠とつみたて投資枠を併用することで、年間360万円まで新規投資ができます。

そのため、年間で360万円以上の新規投資をする場合は、課税口座(特定口座・一般口座)を利用しなければなりません。

なお、年間投資枠は、商品を買い付けた時の金額(簿価)でカウントされます。NISA口座で保有する商品を売却しても、残りの年間投資枠は変わりません。

また、年間投資枠のうち使い切れなかった部分があっても、余りを翌年に繰り越せない点にも注意が必要です。

新NISAでの投資額が非課税保有限度額に達している時

新NISAの口座で商品を保有できる金額の上限(非課税保有限度額)は、1,800万円です。うち、成長投資枠で利用できるのは1,200万円となっています。つみたて投資枠であれば、1,800万円の非課税保有限度額を使い切ることも可能です。

新NISAの非課税保有限度額を使い切っている状態で金融商品に新規投資する場合は、課税口座を利用します。

一方、新NISAで保有する商品を売却するという選択肢もあります。

新NISAでは、口座で保有する商品を売却すると、その商品を買い付けた時の金額分だけ翌年に非課税投資枠が再利用できるためです。

非課税保有限度額を使い切っている時や非課税投資枠の残りが少ない時は、新NISAの口座で保有する商品を売却するのも1つの方法です。

新NISAの対象外の商品に投資をする場合

新NISAのつみたて投資枠や成長投資枠の対象外である商品に投資をする場合は、課税口座を併用する必要があります。

新NISAのつみたて投資枠は、金融庁が定める一定の基準をクリアした投資信託に投資できます。対象商品数は、2024年5月15日時点で合計289本です。

【参考】金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」詳しくはこちら

新NISAの成長投資枠では、国内株式や外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など、幅広い商品に投資できますが、以下は対象外となっています。

成長投資枠の対象外の商品

●上場廃止が決まっている銘柄(整理銘柄)・上場廃止の可能性がある銘柄(監理銘柄)
●信託期間(投資信託が運用される期間)が20年未満の投資信託等
●分配金が毎月支払われる投資信託等
●デリバティブ取引(先物取引やオプション取引など)を用いた一定の投資信託等

新NISAの対象外商品に投資する場合は、課税口座での取引となるため、発生した利益に対しては税金がかかり、確定申告が必要になる可能性があります。

NISA口座がある金融機関とは別の金融機関で投資をする場合

NISAは、一人につき1口座しか開設できません。口座を開設できる金融機関は、1つのみとなります。

そのため、新NISAの口座を開設している金融機関とは別の金融機関で金融商品に投資をする場合は、課税口座を利用することになります。

課税口座でも特定口座(源泉徴収あり)であれば確定申告が不要

課税口座でも特定口座(源泉徴収あり)であれば確定申告が不要

課税口座には、特定口座(源泉徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)、一般口座の大きく3種類があります。

このうち、特定口座(源泉徴収あり)で商品を取引しているのであれば、原則として確定申告は不要です。口座で生じた利益(所得)を金融機関が計算し、税金を天引きして代わりに納めてくれるためです。

一方、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で運用する株式や投資信託などから運用益が生じた時は、原則として確定申告が必要です。

また、特定口座(源泉徴収あり)とほかの証券口座を損益通算する時や、繰越控除を適用する場合は確定申告が必要となります。

NISAを利用する人が確定申告をする際に押さえておきたいポイント

NISAを利用する人が確定申告をする際に押さえておきたいポイント

NISAは原則として確定申告は不要ですが、もし申告手続きをすることになった時は、以下の3点を押さえておくことが大切です。

●iDeCoと違ってNISAには所得控除がない
●NISA口座の損益は損益通算の対象外
●NISAの運用益は扶養控除や配偶者控除に影響しない

所得や税金を適切に申告するためにも、確定申告をする際は上記のポイントを理解したうえで手続きを進めることが大切です。

iDeCoと違ってNISAには所得控除がない

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自助努力による老後の資産形成を支援する制度です。自分自身で掛金を拠出し、投資信託や保険などで運用をすると、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。

NISAとiDeCoは、どちらも投資による資産形成を支援する制度であり、運用する商品から得られた利益が非課税になる点は共通です。

一方、iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となりますが、NISAにはそのような仕組みはありません。

iDeCoを利用する人は、確定申告や年末調整で所得控除を申請すると、1年間で支払った掛金の分だけ所得税や住民税の課税対象になる所得が減ります。その結果、税負担を軽減することが可能です。

ただしiDeCoは、老齢給付金を一時金で受け取る時は退職所得、年金で受け取る場合は雑所得となるため、税金がかかることがあります。また、iDeCoで積み立てている資産は原則として60歳まで引き出せません。

その点、NISAであれば積み立てた資産をいつでも非課税で現金化できます。iDeCoとNISAはほかにも違いがあるため、制度内容をよく理解し、運用目的などをもとにどちらを選ぶべきかをよく考えることが大切です。

NISA口座の損益は損益通算の対象外

NISA口座で発生した利益や損失は、ほかの課税口座と損益通算できません。NISA口座の損益は、税制上ないものとみなされるためです。

そのため、NISA口座で生じた損失と課税口座の利益、あるいは課税口座の損失とNISA口座の利益を相殺することはできません。

よって、NISAは繰越控除も対象外となります。

NISAの運用益は扶養控除や配偶者控除などに影響しない

扶養控除と配偶者控除は、どちらも所得控除の一種です。一定の要件を満たす扶養親族(子供や親など)や配偶者がいる時は、所得から一定金額が差し引かれ、税負担が軽減されます。

扶養控除と配偶者控除には、所得制限があります。扶養控除は子供や親などの扶養親族、配偶者控除は納税者本人と配偶者の合計所得金額がそれぞれ一定以下でなければ、所得控除は受けられません。

特定口座や一般口座で取り引きする金融商品から、売却益や配当金などを得た時に確定申告をすると、合計所得金額が増えて控除の対象外になることがあります。

一方、NISA口座で生じた運用益は非課税であり、合計所得金額には含まれません。そのため、扶養親族や配偶者、納税者本人がもつNISA口座で運用益が生じるだけでは、扶養控除や配偶者控除の対象から外れる心配はないのです。

まとめ

NISAでは、投資信託や株式などの金融商品に対する運用益が非課税となり、原則として確定申告をする必要はありません。

ただし、新NISAと併用する課税口座で運用益が生じた時や、配当金の受取方法を株式数比例配分方式以外にしている時などは、確定申告が必要になることがあります。

金融商品に投資をする際は、確定申告が必要となるケースを理解し、必要に応じて適切に申告手続きをすることが大切です。

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